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■行政トピックス
1.中医協薬価専門部会 1月25日 薬価の外国調整、参照国から米除外へ
2.中医協総会 1月25日 18年度改定に向け「入院医療」の議論を開始
■記者会見
1.「今後も日本企業とのパートナリングを模索」-バイオジェン:ミシェル・ヴォナッソスCEO-
■セミナー便り
1.下行性疼痛抑制系の機能異常「認識が十分でない」-島根大学医学部整形外科学教室:内尾祐司教授-
2.T790M血漿検査「陰性なら組織検査を」-北里大学医学部:佐々木治一郎教授-
3.くすり屋から「健康屋」へ-薬樹:小森雄太社長-

■行政トピックス

1.中医協薬価専門部会 1月25日
薬価の外国調整、参照国から米除外へ

中医協薬価専門部会は1月25日、昨年末に政府が打ち出した薬価制度抜本改革基本方針の具体化に向け、前回の「効能追加等に伴う市場拡大への対応」に続き、「外国平均価格調整の見直し」をテーマに議論。支払、診療両側から、現行の米・英・独・仏の参照国の中から、米国を除外することが妥当との意見が出た。ただ、幸野庄司委員(健保連理事)が「トランプ政権となり、TPPを破棄したりするなどの状況の中で、慎重に検討した方がいい」と呼び掛けたのに対し、中川俊男委員(日医副会長)も「相当な覚悟で議論を行っていくべき」と呼応。トランプ政権の出方に神経を尖らせている。

昨年薬価収載された乾癬治療薬トルツには当初、外国平均価格調整ルールの適用によって類似薬に比べて著しく高い薬価が付いたため、中医協は問題視。同ルール見直しの機運が一挙に高まった。結局、トルツは、高薬価での収載が見送られ、為替相場の変動によって同ルールが適用されなくなるのを待って類似薬と同じ薬価で収載された。

また昨年、オプジーボの高薬価問題が中医協で議論された際、外国価格に比べた日本の突出した高さが批判され、それが緊急薬価引き下げの決定につながったように、薬価問題をめぐって、たびたび外国価格に焦点が当たった。

この日の薬価専門部会で、厚労省は検討課題として1.各国の医療保険制度の違いや価格表の違いを踏まえ、参照国や参照する価格の妥当性 2.調整すべき医薬品の範囲 3.調整の方法 4.再算定との関係について、世界に先駆けて日本で上市された医薬品は、収載後、外国で設定された薬価と著しく異なる場合があり得るが、このような場合の外国価格との調整について、外国価格との乖離、革新性等を踏まえてどう考えるか-などを挙げた。

委員からの意見は、参照国の妥当性に集中。「米国は薬価が自由価格で、民間保険であり、同様に参照するのは違和感がある」(吉森俊和協会けんぽ理事)、「米国の価格を外すことは自然な考え方と思う」(幸野委員)、「米国のリストプライスの価格はあくまで参考程度とし、平均価格算出の中には入れないという手もある」(安部好弘日薬常務理事)、「米国のリストプライスは除外すべき」(中川委員)と、参照国からの米国除外で支払側・診療側が概ね一致した。

再算定との関係について吉森委員は、「定例の薬価改定の機会のみならず、海外との価格差が大幅に広がってしまったタイミングでも見直しできるように柔軟性をもったルール設定も重要」との見解を示した。

専門委員の加茂谷佳明氏(塩野義製薬常務執行役員)は、ルール全体の見直しに当たって「透明性・公平性の観点からルールの簡素化を議論してほしい。適用範囲がある程度限定的になるようなルールも検討に入れてほしい」と要望した。

 

■行政トピックス

2.中医協総会 1月25日
18年度改定に向け「入院医療」の議論を開始

中医協は1月25日の総会で、次回18年度診療報酬改定に向けて入院医療についての議論を開始した。初回の議論では、長年の課題となってきた、増え過ぎた7対1入院基本料算定病床の削減が前面に出ることはなく、「地域医療構想に診療報酬がどのように寄り添うか」(迫井正深課長)という視点から議論が滑り出した。

前回16年度改定における入院医療(その1)の議論は15年3月にスタート。その際、厚労省は初回から「急性期医療」「地域包括ケア病棟・病床、回復期入院医療」「慢性期入院医療」に分けて課題と論点を提示。12月まで7回にわたり入院医療の議論が行われたが、一貫して7対1入院基本料算定病床の削減が主要なテーマとなった。

最終的に、急性期医療の必要な患者像を明確化する「重症度、医療・看護必要度」の見直し、および同算定病床における重症患者割合の引き上げ(15%以上→25%以上)、在宅復帰を促すための評価見直し(75%以上→80%以上)が行われた。

厚労省が、この日の総会に提示した資料によると、7対1の届出病床数は、15年10月に36万9700床あったのが、16年4月の改定時に36万6000床(3700床減)、同10月には36万2000床(4000床減)と減少傾向にあることが分かった。

一方、回復期の患者の受け皿となる病床で、7対1からの転換先として期待される地域包括ケア病棟入院料など届出病床数は、15年10月の3万6377床から16年10月に5万2492床に1万6115床増加した。

こうした状況の中で、厚労省は、論点として「支え手の減少など限られた医療資源の中で、効率性にも配慮しつつ、より質の高い入院医療を提供でき、かつ、医療ニーズの変化にも対応し得るようなサービス提供のあり方や、地域において求められる医療機能や患者の状態に応じた入院医療の提供体制の推進に資する評価のあり方について、どう考えるか」と問題提起。

診療側の中川俊男委員(日医副会長)が「今回の資料を見て、地域医療構想という言葉が多いのが非常に気になる」とただしたのに対して、迫井医療課長は「確かに大部分を地域医療構想の説明に絡めて提示しているが、趣旨としては、地域の実情に応じた医療提供体制の構築を推進することに対する評価のあり方についてどう考えるかということ」と回答。

中川委員は「地域医療構想は病床機能のでこぼこを修正するものではなく、不足している病床機能を手当てするものであり、全国一律の診療報酬によって地域医療構想を推進するということはあり得ない。ただし、診療報酬が寄り添うということであれば、4つの病床機能(高度急性期、急性期、回復期、慢性期)のどれをとっても医療機関の経営が成り立つようにすることである」と述べた。

一方、支払側の幸野庄司委員(健保連理事)は「ほとんどの医療圏で急性期が過剰で、回復期が不足している傾向が出ている。自主的に病床の転換をされていくような環境をつくっていくことが必要ではないか。診療報酬で無理やり引っ張っていくことを言っているわけではない」と述べた。

 

■記者会見

1.「今後も日本企業とのパートナリングを模索」
-バイオジェン:ミシェル・ヴォナッソスCEO-

バイオジェンCEOの来日記者会見が1月30日に行われ、新CEOのミシェル・ヴォナッソス氏および日本のGMであるスティーブ・スギノ氏が登壇し、バイオジェンの日本における今後の活動の目標について語った。ヴォナッソス氏は20年にわたってメルクに在籍し、欧州・中国・米国などでキャリアを積み、昨年執行副社長およびチーフコマーシャルオフィサーとしてバイオジェンに入社、12月にCEOに指名されている。

ヴォナッソス氏は冒頭、1月のCEO就任以来このような形で米国外で会見するのは初めてであり、それはとりもなおさずバイオジェンが日本を重要なマーケットであると認識しているからだと挨拶。「日本には500万人の認知症患者と100万人のアルツハイマー病患者を抱えて大きなアンメットニーズが残っており、今後発売されてくるバイオジェンの新薬がマーケットに強く求められるようになると考えている。また、バイオジェンは日本の基礎研究能力を高く評価しており、日本支社はアジア地域における研究開発ハブとしての機能を持たせている」と語った。

バイオジェンは昨年6%の増収、Non-GAAPベースで19%の希釈化後EPSの増加を達成した。直近4年の年平均成長率は売上げとしては21%、GAAPベースの希釈化後EPSとしては35%にも達しており、急激な成長を遂げてきている。ヴォナッソス氏は「この業績の伸長は多発性硬化症(MS)領域への特化によってもたらされており、このために昨年は血友病フランチャイズを切り離す決断をした。MS領域では現在5製品を発売しており、2017年にはOcrevusを新発売する見込みである」として、同領域における製品ラインナップの群を抜く充実ぶりを強調する。

パイプラインにおける大きな期待の一つには、脊髄性筋萎縮症(SMA)における成功がある。SMAは非常にまれだが極めて重篤な疾患であり、これまで治療法が確立されていなかった難病でもある。バイオジェンがIONIS社と共に開発してきた化合物であるヌシネルセンは、この分野における画期的な治療薬となりうることが証明された。バイオジェンの新体制は、既存のMS領域における強みを生かしながら、アルツハイマー病とSMAという新たな神経変性性の難病にフォーカスしていくことで持続的な成長を実現していく覚悟を示すものでもある。

ヴォナッソス氏は会見で、疫学的に日本のMS患者は欧米ほど多くないなかで、バイオジェンが日本市場を重要視している理由として、現在の市場よりも長期的な可能性をより重視して優先順位を決めるべきであるとした上で、マーケット以外にも日本の科学力の高さに注目していること、エーザイが重要なパートナーであり、今後も日本の製薬企業とパートナリングを模索していくつもりであることなどを背景に挙げた。

また、アミロイド仮説に基づく創薬・治療戦略の妥当性、特にAducanumabの開発戦略とこれまで失敗してきた化合物、特にsolanezumabとの違いに関しては、「バイオジェンとしては、アミロイド仮説は未だに妥当性が高いと考えており、solanezumabとは大きく3つの違いがある」とした。

1点目は対象患者の違い、すなわちsolanezumabのEXPEDITION試験においては軽度の認知症患者を対象としていたが、aducanumabの対象となっているのは軽度認知障害もしくは早期の認知症患者であり、これらの患者の方が臨床的エンドポイントに差がつきやすいのではないかと考えられること。2点目はその試験の主要評価項目としてADAS-COGではなくCDRを用いていることであり、これによってやはり有意差が証明しやすくなっているのではないかと考えていることで、実際にEXPEDITION試験においてもADASCOGでは差がつかなかったが副次評価項目であるCDRでは差がついていた。

それにも増して重要なのはaducanumabが認識するエピトープが今までの抗体とは異なるという点であり、solanezumabは可溶性のモノマー型アミロイドβを認識してしまうために抗体が病巣に到達するまでに血中で大部分がトラップされてしまうが、aducanumabの場合は重合したアミロイドだけを認識するために、抗体が適切に病巣に到達し有効性を発揮するものと考えているとのことであった。

さらに、ヌシネルセンに対する期待にも触れ、SMAに対する治療薬がこれまでなかったこともあって、この薬剤の浸透速度は病院や医師の側の新薬の受容性に依存しているとした上で、「SMAは早期診断・早期治療が予後にとって極めて重要であるために、SMAの診断、スクリーニングの普及に努めていくとともに、薬剤の価値に関しても、代わりの利かない、SMAの治療に関しては唯一の薬剤であることなどを主張していくつもりである」と語った。

 

■セミナー便り

1.下行性疼痛抑制系の機能異常「認識が十分でない」
-島根大学医学部整形外科学教室:内尾祐司教授-

島根大学医学部整形外科学教室の内尾祐司教授は1月26日、変形性関節症に伴う疼痛について、下行性疼痛抑制系の機能異常は医師の間でも「まだまだ認識が十分でない」と指摘。日本イーライリリーと塩野義製薬が主催したサインバルタ(一般名デュロキセチン)のプレスセミナーで語った。

セミナーで内尾教授は両社が実施した変形性関節症患者516人と変形性関節症の治療経験のある整形外科医110人を対象にしたインターネット調査の結果を報告。「変形性関節症の長引く痛みの発生機序は何だと思いますか」と医師に尋ね、全員から複数回答を得た結果、85.5%の医師が炎症を含む侵害受容性疼痛と答えた。下行性疼痛抑制系の機能異常と回答したのは36.4%、神経障害性疼痛と回答したのは25.5%にとどまった。内尾教授は「炎症性の痛みに加えて、下行性疼痛抑制系の機能減弱など中枢神経の機能異常による痛みについても考慮することが重要だ」と強調。痛みの原因に応じた治療の必要性を説いた。

 

■セミナー便り

2.T790M血漿検査「陰性なら組織検査を」
-北里大学医学部:佐々木治一郎教授-

北里大学医学部附属新世紀医療開発センター横断的医療領域開発部門腫瘍臨床学の佐々木治一郎教授は1月31日、アストラゼネカ主催のメディアセミナーで、アストラゼネカ、NPO法人キャンサーネットジャパン、がん情報サイトオンコロが実施した「進行・再発非小細胞肺がん患者への組織採取や遺伝子検査に関する意識調査」の結果を報告。「(確定診断時の検査で)辛い思いをした患者はセカンドバイオプシーの時には当然、できるだけ侵襲の少ない血液検査を利用するだろう。しかし、陰性だった場合に陽性一致率が6割程度しかないという情報をきちんと把握した上で、もう一度、患者にしんどいけれどがんばりましょうと言ってあげる必要がある。今回の調査から患者はそう言われるとがんばろうと応えようと思っていることが分かった」と解説した。

調査は進行・再発非小細胞肺がんと診断された患者(ステージⅢB/Ⅳ、再発あり)および1年以内に肺がんの治療を実施している患者を対象にウェブで実施され、167人から回答を得た。その中で、検査方法で血液検査/どちらでも問題ないと回答した148人のうち、血液検査で遺伝子変異を特定できなかったが、気管支鏡検査(または経皮的肺生検)で遺伝子変異が特定できる可能性がある場合に、血液検査後に気管支鏡検査(または経皮的肺生検)を受けたいと回答したのは130人(87.8%)であった。

確定診断の検査時に辛い思いをした患者群92人でも82人(89.2%)が再度その辛い思いをした検査を受けると回答した。

 

■セミナー便り

3.くすり屋から「健康屋」へ
-薬樹:小森雄太社長-

薬樹の小森雄太社長は1月24日、スマートフォンなどのコンテンツ配信を手掛けるエムティーアイ主催のメディアセミナーで講演し、薬局の役割が「くすり屋」から「健康屋」へ変化していると強調。健康を維持・管理する機能を強化し、予防から治療までトータルで顧客をサポートすることが必要だと述べた。薬歴とともに健康管理アプリの記録を活用することで、顧客の多様なニーズに応えることができるとした。

小森氏は、生活習慣病薬を処方された患者の20~30%は2回目以降脱落すると指摘。薬局が食事や運動の専門家を置いて相談に乗れば、処方せんがなくとも患者が来局する頻度が高まり、治療継続率が上昇するとの見方を示した。このような取り組みは「10年、20年単位で見れば、透析導入などのイベントを抑制し、医療費を低く維持しながら健康度合いの向上に寄与するだろう」と述べた。

薬樹は、エムティーアイの健康管理アプリ「CARADA」を利用した薬局サポートサービス「CARADA薬局パッケージ」を2月からトライアル導入すると決めている。「CARADA」は歩数、睡眠、血圧、食事といった利用者のバイタルデータをスマートフォンに記録・管理するもの。これをクラウドと連携させ、データを薬局でも閲覧できるようにしたシステムが「薬局パッケージ」だ。

小森氏は「例えば(食事、運動とともに健康を担う)睡眠に関しては我々はリーチできないが、アプリで睡眠のデータが取得できれば補完関係が成り立つ。ICTのサポートで、顧客の好みや生活スタイルに合ったアドバイスができる」と述べた。

一方で、薬歴やバイタルデータ、診療記録のようなヘルスデータが、医療機関などでばらばらに存在していると指摘。データベースを一元化して、個人情報の保護と同意を前提に専門家が活用できる体制が必要だと主張した。

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