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平成30年度診療報酬改定(2) ―薬価制度の抜本改革と調剤報酬改定について

2018年4月1日の平成30年度診療報酬改定施行に向け、MediMarke+では5回にわたって診療報酬改定についての情報をお届けします。第2回目の今回は、製薬企業にとって影響が大きいと考えられる、薬価制度の抜本改革と調剤報酬の改定について解説します。

薬価制度の抜本改革と調剤報酬改定

まず、薬価制度の抜本改革は、「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」(2016年12月20日)に基づき、国民皆保険の堅持と医薬品のイノベーション推進を両立することにより、国民負担の軽減と医療の質の向上を実現する観点から実施されるものです。

その背景のひとつとして挙げられるのが抗がん剤「オプジーボ」の存在です。ご存知のとおり、オプジーボは予想販売額が急激に拡大し、国民負担や医療保険財政に与える影響が懸念されたため、緊急的に薬価が50%も引き下げられました。このように、効能追加のタイミングによっては、市場規模が急激に拡大したにもかかわらず次回の薬価改定まで2年以上の期間がある場合が存在するという問題が生じたことから、迅速かつ機動的に薬価を見直す仕組みの導入が必要となったのです。つまり、薬価制度の抜本改革は“オプジーボ問題”から端を発したといっても過言ではありません。

また、調剤報酬改定の背景には、薬剤料や薬剤師の技術料にあたる調剤医療費の増加があります。2016(平成28)年の調剤医療費はおよそ7.5兆円であり、過去最高であった2015(平成27)年(約7.9兆円)よりは減少したものの、10年前と比べ1.4倍以上に増えており、国民医療費全体の約2割を占めています(厚生労働省「平成28 年度 医療費の動向」)。このように増え続ける調剤報酬を抑えるために、薬局における対人業務の評価充実のための取り組み、後発医薬品の使用促進策、調剤基本料の見直し、処方箋および処方箋様式の見直し等を盛り込んだ改定が行われています。

具体的な薬価制度の抜本改革、調剤報酬改定の内容は次の通りです。

 具体的な薬価制度の抜本改革

効能追加等による市場拡大への速やかな対応
効能追加等があった医薬品はすべて、NDB(ナショナルデータベース)により使用量を把握し、市場規模が350億円を超えたものは、年4回の新薬の薬価収載時に、市場拡大再算定ルールに基づき薬価を改定することになりました。

毎年薬価調査・毎年薬価改定
今後は、2018(平成30)年の薬価通常改定、2019(平成31)年の消費税引き上げに伴う薬価改定、2020(平成32)年の薬価通常改定と、3年連続して全品目の改定が行われます。

そして、2021(平成33)年度から新たに毎年の薬価調査・薬価改定がスタートすることになり、薬価ダウンを避けるための製薬会社による薬価の堅持、医療機関等との厳しい価格交渉が待ち受けていると考えられます。

イノベーションの適切な評価
イノベーションの適切な評価のため、対象品目を真に革新性・有用性のある医薬品に限定する「新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度の抜本的見直し」、原価計算方式においても類似薬効比較方式と同様に価格全体(加算前の算定薬価)に補正加算を行うこととする「新薬のイノベーション評価の見直し」、また「費用対効果評価の試行的導入」が行われることになりました。

長期収載品の薬価の見直し等
長年にわたり、多くの日本の製薬会社は長期収載医薬品に依存してきた傾向があります。このような産業構造を高い創薬力を持つものへと転換していくためにも、後発品上市後10年を経過した長期収載医薬品の薬価について、後発品の薬価を基準に段階的に引き下げることとされました。具体的には、後発品への置換率80%を基準に区分し、80%以上のものは6年かけて後発品の薬価まで、80%未満のものは10年かけて後発品の薬価の1.5倍まで、段階的に引き下げるというものです(図1)。

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外国平均価格調整の見直し
新薬の薬価算定の際には、欧米(米・英・独・仏)の医薬品価格を参考に薬価調整を行っています。米国の医薬品価格は現在Red Bookを参照していますが、これはメーカー希望小売価格であり、市場実勢価格を反映していないため、代わって米国の公的医療保険制度(メディケア、メディケイド)で使われている価格リスト(ASP※1およびNADAC※2)を参照することになりました。

※1     ASP;Medicare Part B Drug Average Sales Price

※2     NADAC;National Average Drug Acquisition Cost

調剤報酬改定について

かかりつけ薬剤師・薬局機能の評価
「患者のための薬局ビジョン」(図2)でも、薬剤師・薬局の役割として、かかりつけ薬剤師・薬局機能と健康サポート薬局機能、高度な薬学的管理ニーズへの対応を行う高度薬学管理機能が求められています。

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今回の診療報酬改定でも、かかりつけ薬剤師・薬局機能の充実のため、対人業務・地域支援体制の評価等の推進が求められています。患者本位の医薬分業の実現に向けて、患者の服薬状況を一元的・継続的に把握して業務を実施するのが、かかりつけ薬剤師です。このかかりつけ薬剤師に関する評価である、かかりつけ薬剤師指導料およびかかりつけ薬剤師包括管理料は、患者が選択した保険薬剤師が、患者の同意を得た上で算定できるものです。この同意取得時に、患者の状態等を踏まえたかかりつけ薬剤師の必要性や、かかりつけ薬剤師に対する患者の要望等を確認することが新たに算定要件となります。

また、地域包括ケアシステムの中で地域医療に貢献する薬局について、その体制を評価する項目が新設されます。夜間・休日対応や医療機関等への服薬情報提供など、地域に貢献する一定の実績があること等を前提として、地域支援に積極的に貢献するための一定の体制を整備している薬局が、地域支援体制加算(新設)で評価されることになりました。

後発医薬品の使用促進
さらに、後発医薬品使用促進のために、後発医薬品調剤体制加算、後発医薬品使用体制加算等や、一般名処方加算などの評価の見直しも行われています。

後発医薬品調剤体制加算については、薬局における後発医薬品の調剤数量割合の基準を引き上げ、調剤数量に応じた評価の見直しが行われている一方で、後発医薬品の調剤数量割合が著しく低い薬局に対しては調剤基本料の減算規定が設けられています。

また、医療機関における後発医薬品使用体制加算および外来後発医薬品使用体制加算については、新たな数量シェア目標(85%~60%)を踏まえ、要件が見直されています。

一般名処方については、後発医薬品の使用促進に一定の効果があるとのことから、一般名処方加算(2倍)の見直しが行われています。

医薬品の適正使用の推進
医薬品の適正使用の推進に関しては、多剤・重複投与の是正、残薬への対応の問題、血行促進・皮膚保湿剤の適正使用推進、後発医薬品の使用促進などが検討されています。

後発医薬品調剤体制加算については、薬局において調剤された後発医薬品の規格単位数量の割合の基準を引き上げ(75%以上、80%以上、85%以上の3区分)、それに応じた評価の見直しが行われている一方で、その割合が著しく低い薬局に対しては調剤基本料の減算規定が設けられています(例外を除き、後発医薬品の規格単位数量の割合が2割以下の場合)。

また、医療機関における後発医薬品使用体制加算および外来後発医薬品使用体制加算については、新たな数量シェア目標を踏まえ、要件が見直されています(後発医薬品の規格単位数量の割合が、後発医薬品使用体制加算では85%以上、80%以上85%未満、70%以上80%未満、60%以上70%未満の4段階、外来後発医薬品使用体制加算では85%以上、75%以上85%未満、70%以上75%未満の3段階)。

一般名処方については、後発医薬品の使用促進に一定の効果があるとのことから、一般名処方加算の見直し(従来の点数の2倍)が行われています。

いわゆる門前薬局の評価の見直し
厚生労働省の医療経済実態調査によると、同一法人の保険薬局の店舗数が多くなるに従って、一店舗当たりの収益性が高い傾向があること、処方箋集中率※3が高い薬局では医薬品の備蓄品目数が少ないこと、医療機関と同一敷地内にある薬局は収益状況が良いこと、医療機関と不動産の賃貸借関係があると医薬品の備蓄品目数がより少ない傾向があることなどから、 いわゆる門前薬局に対しさらに厳しい評価の見直しが行われています。

具体的には、調剤基本料3※4について、特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合の基準の引き下げや、グループ全体の処方箋受付回数が多い、特に大型の門前薬局の評価の引き下げが行われています。調剤基本料2※5についても、処方箋の受付回数が 2,000 回を超える保険薬局における、特定の保険医療機関に係る処方箋による調剤の割合の基準を引き下げる等の改定が行われています。

※3     その薬局の全処方箋受付回数の中で、受付回数が最大となる医療機関のものが占める割合

※4     同一法人グループ内の処方せんの合計が月40,000回超 かつ 次のいずれかに該当する場合の調剤基本料 イ)集中率95%超 ロ)特定の保険医療機関と不動産の賃貸借関係あり(平成28年4月1日施行)

※5     処方せん受付回数および集中率が、次のいずれかに該当する場合の調剤基本料 イ)月4,000回超 かつ 集中率70%超 ロ)月2,000回超 かつ 集中率90%超 ハ)特定の保険医療機関に係る処方せん(平成28年4月1日施行)

このように、薬価制度の抜本改革が行われることになり、画期的新薬等を開発できる見込みのある製薬会社にとっても、長期収載医薬品のウェイトの高い製薬会社にとっても、平成30年度診療報酬改定は、非常に大きな影響のあるものになると考えられます。

また、調剤報酬に関しては、患者本位の医薬分業を実現するために抜本的な改定が行われてきていますが、まだ不十分であるとのことで、次回も大幅な改定が行われる模様です。

(編集:サンテ医業コンサル 田中豊章)

「平成30年度診療報酬改定勉強会セミナー」開催のご案内
平成30年度診療報酬改定の影響は医療機関等の関係者にとっても、また薬価制度の抜本改革が行われることになった製薬会社にとっても大変大きいものだと考えています。今回の診療報酬改正概要である、入院基本料・地域包括ケア病棟等の見直し、DPC/PDPS制度の見直し、かかりつけ医機能の強化、介護医療院の創設、がん・精神科領域等の評価の充実、働き改革、門前薬局の評価の見直し等の内容を理解することが製薬企業の皆さんにとって不可欠だと思います。
メディマーケ+コンテンツとしても情報発信を行っていく予定ですが、製薬企業の本社企画部、営業部、マーケティング部、MR等を対象とした勉強会セミナーとしても開催を企画しました。多数のご参加をお待ちしております。

◆主 催:メディマーケ+編集室(株式会社エム・シー・アンド・ピー)
◆日 時:2018年4月24日(火)15時~17時(予定)
◆会 場:新橋、日比谷、有楽町周辺の会議室(予定)
◆定 員:先着20名
◆参加費:5,000円(予定)
◆講 師:サンテ医業コンサル 田中豊章

<申込方法>——————————————————————————————-

下記をご記入の上、メディマーケ+編集室(medimarkeplus@mcp.co.jp)へ、メールを送信してください。

件名:平成30年度診療報酬改定勉強会セミナー参加希望
ご記入内容:お名前、ご所属、お役職

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※日時、会場、参加費については、変更する場合もございますので予めご了承ください。
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