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■セミナー便り
1.身体と同じように脳の健康を気遣う時代へ-東京都健康長寿センター脳神経内科:岩田淳部長-
2.HFrEFは広くエンレストに切替-九大院循環器内科学・筒井裕之教授-
3.COPD患者に新たな治療選択肢を提供-東北大学大学院医学系研究科:杉浦久敏教授-
■行政トピックス
1.医療用医薬品安定確保策に関する関係者会議 8月28日 WGで「安定確保医薬品」選定・カテゴリ分け作業開始へ

■セミナー便り
1.身体と同じように脳の健康を気遣う時代へ-東京都健康長寿センター脳神経内科:岩田淳部長-
2.HFrEFは広くエンレストに切替-九大院循環器内科学・筒井裕之教授-
3.COPD患者に新たな治療選択肢を提供-東北大学大学院医学系研究科:杉浦久敏教授-
■行政トピックス
1.医療用医薬品安定確保策に関する関係者会議 8月28日 WGで「安定確保医薬品」選定・カテゴリ分け作業開始へ

 

■セミナー便り

1.身体と同じように脳の健康を気遣う時代へ
-東京都健康長寿センター脳神経内科:岩田淳部長-

エーザイは8月20日、「なぜ、“今”ブレインパフォーマンスの維持向上に取り組むべきなのか」と題したメディアセミナーを開催。同社が3月に発売したブレインパフォーマンスをセルフチェックするためのデジタルツール「のうKNOW」をはじめ、同社のブレインパフォーマンス向上に対する取り組みを紹介した。

「のうKNOW」の監修を手掛けた東京都健康長寿医療センター脳神経内科の岩田淳部長によると、ブレインパフォーマンスとは脳の健康度を示す新たな概念のこと。「今後、人生100年時代を迎える中で、健康寿命を伸ばすことが大事になってくる。しかし、健康診断では生活習慣病の早期発見などはできるが、認知機能のチェックは行われていない」と語り、身体と同じように脳の健康を気遣うことの重要性を説明した。

同社の調査によると、認知機能チェックを行ったことがある人は7.0%(n=1696)。行ったことがない人の約8割は、その理由として「必要ない、問題ない」や「(認知機能チェックがあることを)知らなかった、機会が無かった」との回答が挙がっているが、認知機能は老化現象として50代以降から低下するとしており、「働き盛りの40~50代は仕事や子育て、趣味などで一番多忙な時期でもあり、自身のパフォーマンスの維持・向上が気になり始める年代だ。だからこそ、ブレインパフォーマンスに取り組むベストタイミングと言える。また、取り組むタイミングは少しでも早い方が良いため、40~50代に限らず、全ての年代が、自分のことと捉えてブレインパフォーマンスに取り組んでいただく時代が来ていると思う」と岩田部長は述べた。

豪コグステート社が創出した認知機能テストを基に同社が開発した「のうKNOW」は、パソコンやタブレットなどのデジタルデバイスで活用し、約15分でセルフチェックが可能。ブレインパフォーマンスがスコア化され、客観的に評価することができる。トランプカードを用いることによって、世界中の幅広い年代や地域、文化に対応しており、同じアルゴリズムを持つコグステート社のテストは国内外で400報以上の論文報告があるという。

続けて登壇した同社の内藤景介執行役は、既に「のうKNOW」が導入されている活用事例を紹介。島根県邑智郡美郷町で平均年齢77歳の町民118人が参加した「脳の健康教室」を実施しているほか、美容室が健康も含めた「美」を提供する試みの一つとしてパーマやカラーリング等の施術中にブレインパフォーマンスチェックを行ったり、鹿島建設が建設現場での事故防止のために、作業員のテスト結果によって危険を伴う高所作業や特殊作業を実施する際の判断材料としていることを説明し、「実際にブレインパフォーマンスがどういった形で社会に貢献していけるか、しっかりと示していきたい」と語った。

7月28日には、IT大手のディー・エヌ・エー社の子会社であるDeSCヘルスケア社と共同開発したブレインパフォーマンスアプリ「easiit」の提供を開始。

このアプリではブレインパフォーマンスの維持・向上につながる予防行動となるライフスタイルや食生活などを提案しており、9月より「のうKNOW」とのデータ連携を始めるなど、今後も機能やコンテンツの拡充を図っていく。

内藤執行役は「ブレインパフォーマンスの普及を通して、当社が収益を得ることに関しては、今のところは考えていない」としており、「社会の文化として受け入れられる状態を目指していきたい」と抱負を語った。

 

■セミナー便り

2.HFrEFは広くエンレストに切替
-九大院循環器内科学・筒井裕之教授-

九州大学大学院循環器内科学の筒井裕之教授は8月27日、ノバルティスファーマと大塚製薬が共催したメディアセミナーで講演し、慢性心不全治療薬エンレスト(一般名サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物)について、左室駆出率(LVEF)が40%未満に低下したHFrEF患者ではACE阻害薬/ARBからの切り替えが幅広く行われるとの見方を示した。

一方、LVEFが50%以上に保たれたHFpEFに対しては、個別化治療の選択肢の1つとするにとどめた。

同剤は、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)という新たなクラスの薬剤。HFrEFを対象としたPARADIGM-HF試験で、標準治療のACE阻害薬エナラプリルと比べて心血管死および心不全による初回入院リスクを有意に20%低減した。

HFpEF に対するPARAGON-HF試験では、ARBバルサルタンとの比較で心血管死と心不全による全ての入院リスクを13%低減したが、p値は0.06で有意差は見られなかった。

こうした結果から筒井氏は、HFrEFにおいては、心不全増悪で入院した患者の再入院を防ぐなどの目的でACE阻害薬/ARBからエンレストへの切り替えが幅広く行われるのではないかと指摘した。

PARADIGM-HF試験のサブ解析で、心不全患者の心血管死で最も多い突然死を試験開始早期から低減したことに注目しているとも述べた。

HFpEFについては「他のクラスの薬剤の試験と比べて、より有効性を示したのは事実」としながらも、生命予後を改善したとは言えないとの評価を下した。

ただし、PARAGON-HF試験の「女性」「LVEFが(45%以上)57%以下」の各サブグループではエンレスト群が複合エンドポイント(前述)の相対リスク低下を示した。筒井氏は「HFpEFの病態は多様で、個別化アプローチの必要性があらためて確認された」とした。患者ごとに原因疾患を診断し、個々の病態に応じた治療方針を検討する中で、選択肢の1つにエンレストが入ってきたとのスタンスを示した。

安全性の面では、低血圧、腎機能障害、高カリウム血症といったARBの副作用に注意するとした。中でも低血圧は最も注意が必要で、患者の血行動態を見て投与量を少量から調節し、リスクを回避する必要があると指摘した。

国内における心不全の新薬は、昨年承認されたHCN(If)チャネル遮断薬イバブラジン、今回のエンレストに加え、申請中のSGLT2阻害薬ダパグリフロジンと可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬ベルイシグアト、第3相試験を実施中の心筋ミオシン活性化薬omecamtiv mecarbilなどが控えている。

筒井氏は、国内の急性・慢性心不全診療ガイドラインは来年3月にfocused updateが公表される予定で、承認済みの新薬は反映されるとの見通しを示した。

海外では、これらの新薬を既存治療(ACE阻害薬/ARB+β遮断薬)に置き換えあるいは上乗せした包括的な薬物治療で、HFrEF患者の生命予後が向上するとの予測があるという。

具体的には、ARNI、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、SGLT2阻害薬の4剤併用で、55歳の患者が既存治療よりも6.3年は延命し、80歳の患者でも1.4年は長生きすると試算されている。

筒井氏は「今後、薬剤の追加を考える上で重要なデータだ」と指摘した。

 

■セミナー便り

3.COPD患者に新たな治療選択肢を提供
-東北大学大学院医学系研究科:杉浦久敏教授-

アストラゼネカは9月1日、「発売1年、COPD治療におけるビレーズトリの役割と意義~COPDが全身にあたえる影響と、治療の重要性~」と題したオンラインメディアセミナーを開催。COPD(慢性閉塞性肺疾患)治療配合剤「ビレーズトリエアロスフィア」が19年9月の発売から1年が経過したことを受けて、改めてCOPDの症状および同剤の有効性について、周知を図った。

最初に登壇した東北大学大学院医学系研究科呼吸器内科学分野の杉浦久敏教授は、「COPD患者の実態とETHOS試験の意義」をテーマに講演。まず、日本人のCOPD死亡者数は95年から右肩上がりに増加し、17年には1万8000人超であることを説明。同年の厚生労働省のデータによると、COPDは男性の死亡要因の第8位に入っており、同様に気流閉塞をもたらす喘息との合併率も80歳以上では男女とも60%超であり、高年齢になるほど増加していることを示した。「COPDの原因の一つに加齢がある。そのため、超高齢社会の日本では自然と増加している。さらに、現在の高齢者は若い時の喫煙率が高く、それも拍車を掛けている。また、喘息合併COPDをACOと言うが、ACOは喘息の特徴である変動性のある症状と、COPDの症状である慢性的な労作時呼吸困難を併せ持っている。そして、治療により症状は軽減されるが、年単位で症状が進行・悪化する」(杉浦教授)。

さらに、3剤配合剤(ブデソニド/ホルモテロール/グリコピロニウム)のビレーズトリと他の配合剤を比較した、18年のKRONOS試験および20年のETHOS試験の結果を紹介。KRONOS試験の主要評価項目である「投与後12~24週の朝の投与前におけるトラフFEV1のベースラインからの変化量」では、ビベスピ(LAMA/LABA配合剤)やブデソニド/ホルモテロールpMDI(ICS/LABA配合剤)よりも有意差を持って呼吸機能の改善効果が認められ、ETHOS試験の主要評価項目である「中等度または重度のCOPD増悪率」においても、ビベスピやブデソニド/ホルモテロールと比べて、有意差を持って増悪率を抑制していることが観察されている。

このような結果を踏まえて、杉浦教授はビレーズトリの対象患者を想定。通常、COPDの患者はICS/LABA配合剤もしくはLAMA/LABA配合剤で治療しているケースが多いが、前者の場合、「慢性の咳・痰が出る」「身体を動かすと息切れがある」といった患者にはLAMAを追加することになる。また、後者の場合には「喘息の特徴である変動性、朝・晩に症状が出る」「症状が残存したり、時々、増悪をする」などの患者にはICSを追加する。杉浦教授は「つまり、いずれの患者においても、3剤配合剤であるビレーズトリに処方変更することによって、治療効果が期待できると考えている」とビレーズトリの有効性を説明した。

続いて登壇したプラーナクリニックの青木康弘院長は、「プライマリ・ケアにおいてCOPDが与える循環器/全身への影響」をテーマに講演を行った。始めに、COPDがプライマリ・ケアにおいて重要となる一例として、新型コロナウイルス患者がCOPDを併存していた場合に転帰不良(ICUや侵襲的換気に至る重症化、死亡)となるリスクが約2.7倍となることを紹介。さらに、COPD増悪(息切れ、咳、痰の増加など症状悪化)は炎症マーカー(CRP)を上げ、心血管疾患や脳卒中等の循環器疾患につながり、予後に悪影響を及ぼすことが知られていると説明した。青木院長は「プライマリ・ケアでは、増悪時にCOPDが発見されることが多い。その時に、ビレーズトリのような3剤配合薬は増悪を抑制し、より良い予後を作るための重要な選択肢の1つとなる」と語った。

 

■行政トピックス

1.医療用医薬品安定確保策に関する関係者会議 8月28日
WGで「安定確保医薬品」選定・カテゴリ分け作業開始へ

厚労省医政局は8月28日、抗菌薬を含め、医療用医薬品全体としての安定確保のための方向を決める関係者会議の4回目の会合を開き、「取りまとめ(案)」を提示、概ね了承された。今後、医学会から寄せられた医療上必要不可欠な医薬品551品目について、関係者会議の下に設置するワーキンググループ(WG)による「安定確保医薬品」の選定および優先順位付けの作業に移る。

20年度末をめどに個別の品目を選定。同時に前回の「骨子案」に盛り込まれていた(1)対象疾患が重篤であること(2)代替薬または代替療法がないこと(3)多くの患者が服用(使用)していることーに加え、(4)各医薬品の製造の状況(製造の難しさ、製造量等)やサプライチェーンの状況等の4項目の要素やそれらの重要度を勘案して、対策を講じるに当たっての「カテゴリ」を取り決める。

具体的な対策の例として厚労省は、(1)原薬等の在庫積み増し(2)出発物質を含めたサプライチェーンの複数化(複数ソース化)(3)原薬等の国内製造への移行(4)原薬等の共同購入や共同備蓄(5)原薬製造企業との適切な契約の締結-を挙げている。

在庫の積み増しや複数ソース化、国内生産移行などの対策には、初期の設備投資に加えて、製造等に係る継続的なコスト増を伴うことや、採算を確保できるような対応など長期的な対策の運用が可能となる仕組みや支援が必要であることなどに留意する必要性を明記した。

一方、「安定確保医薬品」の薬価の在り方の検討については、「製造販売業者・卸売業者は、安定確保医薬品が不採算に陥ることのないよう努めるとともに、不採算に対応するまたは不採算になる前に薬価を下支えする薬価制度上の既存の仕組みを適切に活用できるよう検討する」と、前回の「骨子案」の文言を踏襲。

現行薬価基準制度では、(1)基礎的医薬品(2)不採算品再算定(3)最低薬価-といった薬価を下支えするルールがある。骨子案に続き「原材料費の高騰やサプライチェーンの複数化などにより採算割れとならないよう、必要に応じて薬価算定の見直しが行える仕組みを検討する必要があるのではないか」との意見があったことが盛り込まれたが、会合では「既に仕組みはあるので、仕組みを適切に実行するとか、適切に運用するとかいう表現がいいのではないか」(日本医師会委員)との意見が出された。

また、「取りまとめ(案)」では、流通の改善として「とりわけ、安定確保医薬品については品目の情報公開とガイドラインに基づく単品単価契約など流通改善の取り組みを普及徹底する」ことを強調した。

このほか、安定確保医薬品以外のものも含め、医薬品の供給不安に関する情報について、当該医薬品の製造販売業者から国に報告を求めるための明確なルール(対象範囲、報告時期等)を定めることや、当該情報を整理分析し、関係者と適切に情報共有する仕組みや情報共有を行う基準などを検討することが明記された。

関係者との情報共有に関して、各社の自主的な取り組みに委ねるのには限界があり、公的組織が全ての医療用医薬品を対象に一元的サイトを整備するとよいのではないかとの意見も盛り込まれた。

「取りまとめ(案)」が大筋了承されたことを受け、厚労省医政局長は「20年度補正予算で国内生産支援策の措置をしており、8月中を締め切りとして公募を行っているところだが、9月末の21年度予算要求に向け、さらなる支援策について検討していきたい」と述べた。

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