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平成30年度診療報酬改定(1) ―基本的事項について

2018年4月1日の施行に向け、平成30年度診療報酬改定に関する議論が現在大詰めを迎えています。そこで、MediMarke+では6回にわたって診療報酬改定についての情報をお届けする予定です。第1回目となる今回は、診療報酬改定における改定率や基本方針、スケジュールといった基本的事項について紹介します。

 

平成30年度診療報酬改定率が決定

2017年12月18日に、平成30年度診療報酬改定率が決まりました(図1)。その特徴は大きく3点あります。1点目は医師の技術料などの診療報酬本体がプラス改定となっていること、2点目は医科・歯科・調剤の改定率の比率が1対1.1対0.3と今までと同じであったこと、3点目はその財源を薬価・医療材料の改定による引き下げにより捻出していることです。各科の改定率は、医科が0.63%で、歯科が0.69%、調剤が0.19%となっています。

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診療報酬本体の改定率は+0.55%と、+0.49%だった前回同様に若干のプラス改定とされています。1958(昭和33)年の診療報酬創設以来、小泉政権下の2002(平成14)年に初めて診療報酬本体がマイナス改定となりましたが、2008(平成20)年以降はプラス改定が続いています(図2)。

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平成30年度診療報酬改定の基本方針

平成30年度診療報酬改定は、団塊の世代が後期高齢者となる2025(平成37)年に向けての道筋をつける最後の介護報酬改定との同時改定と位置付けられています。少子高齢化の進展に伴い、国民皆保険の持続可能性を確保しながら、安心・安全で質が高く効果的・効率的な医療が受けられるような医療制度の抜本的改革が求められており、そのための大改定と言っても過言ではないと考えます。医療機関にとっては入院基本料の見直し・介護医療院の新設・オンライン診察に対する評価の実施などの改正、調剤薬局にとっては調剤基本料の見直しなど、製薬企業にとっては薬価制度抜本改革など、医療関係者に対し大きな影響を与える改定だと考えられます。

平成30年度診療報酬改定の基本的視点は、過去数回の改定と同じく4つに分かれています。今回の視点は以下の通りです。

視点I  地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進
政府は、病院完結型医療から地域完結型の医療・介護の実現のため、急性期医療に対する人的・物的資源を集中投入、それを引き継ぐ回復期病棟などでの医療・介護サービスの充実、また入院期間の短縮による早期の家庭復帰・社会復帰の実現と同時に、地域包括ケアシステムの構築による在宅医療・在宅介護の充実を目指しています。

そのためには、医療機能の分化・強化、連携を進め、効果的・効率的で質の高い医療提供体制を構築することも必要だと考えられます。具体的な改定内容は次の通りです。

I-1  地域包括ケアシステム構築のための取組の強化
I-2  かかりつけ医、かかりつけ歯科医、かかりつけ薬剤師・薬局の機能の評価
I-3  医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価
I-4  外来医療の機能分化、重症化予防の取組の推進
I-5  質の高い在宅医療・訪問看護の確保
I-6  国民の希望に応じた看取りの推進
I-7  リハビリテーションにおける医療と介護の連携の推進

視点II  新しいニーズにも対応でき、安心・安全で納得できる質の高い医療の実現・充実
今後の医療技術の進展や疾病構造の変化なども踏まえ、特にがん医療など重点的な対応が求められる医療分野での医療の安心・安全を確保することが必須であり、診療報酬で適切に評価する必要があります。また、データの収集・利活用およびアウトカム評価などの客観的な評価を進めながら、患者が理解・納得して医療が受けられるように改定が行われています。その主な改定内容は次の通りです。

II-1  重点的な対応が求められる医療分野の充実
II-1-1  緩和ケアを含む質の高いがん医療の評価
II-1-2  認知症の者に対する適切な医療の評価
II-1-3  地域移行・地域生活支援の充実を含む質の高い精神医療の評価
II-1-4  難病患者に対する適切な医療の評価
II-1-5  小児医療、周産期医療、救急医療の充実
II-1-6  感染症対策や薬剤耐性対策、医療安全対策の推進
II-1-7  口腔疾患の重症化予防、口腔機能低下への対応、生活の質に配慮した歯科医療の推進
II-1-8  薬剤師・薬局による対人業務の評価
II-2  医薬品、医療機器、検査等におけるイノベーションやICT等の将来の医療を担う新たな技術を含む先進的な医療技術の適切な評価と着実な導入
II-3  データの収集・利活用及びアウトカムに着目した評価の推進
II-4  明細書無料発行の推進

視点III  医療従事者の負担軽減、働き方改革の推進
現在、全ての産業分野で働き方改革の実現が叫ばれており、特に厳しい勤務環境が指摘されている医療従事者においても、医療安全や地域医療の確保にも留意しつつ負担軽減を図ることが求められています。医療従事者の専門性をさらに発揮し、柔軟な働き方ができるよう改革がすることが必要であり、次の通り改定が行われます。

III-1  チーム医療等の推進(業務の共同化、移管等)等の勤務環境の改善
III-2  業務の効率化・合理化
III-3  ICT等の将来の医療を担う新たな技術の着実な導入
III-4  地域包括ケアシステム構築のための多職種連携による取組の強化
III-5  外来医療の機能分化

視点IV  効率化・適正化を通じた制度の安定性・持続可能性の強化
毎年増加する医療費に対して、国民皆保険制度を堅持するという前提のもと、医療の効率化・適正化をさらに進めることが求められます。そのため次のような改定が行われる予定です。

IV-1  薬価制度の抜本改革の推進
IV-2  後発医薬品の使用促進
IV-3  医療機能や患者の状態に応じた入院医療の評価(再掲)
IV-4  外来医療の機能分化、重症化予防の取組の推進(再掲)
IV-5  費用対効果の評価
IV-6  医薬品の適正使用の推進
IV-7  備蓄の効率性や損益状況等に応じた薬局の評価の推進
IV-8  医薬品、医療機器、検査等の適正な評価

なお、視点Iは重点項目として診療報酬点数が評価(アップ)され、反対に視点IVは効率化・適正化を図る項目として減算される事項です。視点IIIは昨今、社会で声高に叫ばれている働き方改革における課題解決のため今回新たに項目立てされています。

 

平成30年度診療報酬改定のスケジュール

診療報酬改定については、社会保障審議会医療保険部会・医療部会で基本方針が決定され、その後中央社会保険医療協議会(中医協)で議論されています。施行までのスケジュールは図3の通りで、今後は厚生労働大臣からの諮問に対して答申が出され、2018年3月上旬には診療報酬改定に係る告示・通知が発出、4月1日施行となる予定です。

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第2回目となる次回は、平成30年度診療報酬改定における薬価・調剤報酬改定内容に焦点を当て、薬価制度改革や調剤報酬など医薬品に関する議論についての情報をお届けする予定です。

(編集:サンテ医業コンサル 田中豊章)

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