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介護人材不足は外国人で

日本における外国人介護労働者の状況

国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成29年推計)」によると、日本の人口はおよそ50年後の2065年、約8,800万人になると予測されています。2015年の約1億2,700万人(総務省統計局「平成27年国勢調査」)より3割減になると推計されており、高齢化率も26.6%(2015年)から38.4%(2065年)に上昇する見込みです。少子高齢化がますます進むものと考えられ、生産労働人口の減少が課題とされています。

同様に医療・介護分野でも看護師・介護労働者不足などが問題視されています。特に、介護保険制度施行後、要介護(要支援)認定者数の増加、サービス量の増加に伴い介護職員数も15年間で約3.3倍に増加しているのですが、2020年にはさらに約25万人が必要となり、まだまだ人材不足の状況にあると推定されています(厚生労働省「第1回介護のシゴト魅力向上懇談会」参考資料)。その解決策のひとつとしてフィリピン・インドネシア・ベトナムなどの海外の人材に頼らざるを得ない状況にあるのです。

日本では現在約3,500人の外国人が介護分野で働いていると推測されており、国別でみるとフィリピンが42%と最も多く、次いで中国、韓国の順になっています。しかし、OECD諸国では日本より多くの外国人介護労働者が働いています(表1)。

 

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では、フィリピン・インドネシア・ベトナムなどの外国人が日本で介護労働者として働くにはどのような制度があるのでしょうか。

外国人が日本で介護労働者として働く方法

外国人が日本で介護労働者として働くには次のような方法があります。

(1)経済活動の連携強化を目的とした特例的な経済連携協定(EPA;Economic Partnership Agreement)による受け入れ
二国間の協定に基づく公的な枠組みで特例的に行う受け入れで、介護福祉士資格取得を目的とした適切な研修を実施することが求められています。現在はフィリピン・インドネシア・ベトナムからのみ。

(2)資格を取得した留学生への在留資格付与による受け入れ
2016年秋の臨時国会で「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律」が成立し、介護福祉士養成施設を卒業して介護福祉士の国家資格を取得した留学生に適用される在留資格「介護」が新設されました。

(3)技能実習制度による受け入れ
現在、外国人技能実習生受け入れ対象職種は機械・金属関係、繊維・衣服関係、建設関係など74職種ありますが、これに介護職種が追加されることになりました。これは、2016年秋の臨時国会で成立した「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」に基づく新制度であり、2017年11月の施行(予定)と同時に職種追加が行われます。

ここでは、今後特に期待されている外国人技能実習制度での介護職種の追加について詳しく述べます。

外国人技能実習制度での介護職種の追加

外国人技能実習制度は、日本で学んだ知識や技術を自国の経済発展に生かす目的で1993年に導入された制度で、国際貢献のために、開発途上国等の外国人を日本で一定期間(最長5年間:改正後)に限り受け入れ、OJTを通じて技能を移転する制度です。新制度では具体的に、技能実習の適切な実施と技能実習生の保護を図るための基本理念が定められ、各々の関係者の責務を明らかにするとともに、技能実習計画の認定制度や監理団体(受け入れを行う商工会や中小企業団体)の許可制度を設け、これらに関する事務を行う「外国人技能実習機構」の設置等の措置が講じられます。

外国人技能実習制度の仕組みは図1の通りです。

 

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外国人技能実習制度は、これまでは機械・金属関係、繊維・衣服関係、建設関係などを対象としていましたが、人を相手にする職種として初めて介護職種が追加されることになります。介護職種追加に関する基本的な考え方は、外国人介護人材の確保を目的とするのではなく、技能移転という制度趣旨に沿って対応することであり、職種追加にあたっては次の要件を満たすことが求められています。

(1)介護が「外国人が担う単純な仕事」というイメージを払拭すること

(2)日本人と同様に適切な処遇を確保すること

(3)介護サービスの質を担保し、利用者が不安を抱かないようにすること

特に、介護職種の追加に際しては、介護職としての適切な業務内容・範囲の明確化、必要なコミュニケーション能力の確保、適切な公的評価システムの構築、適切な実習実施機関の対象範囲の設定、適切な実習体制の確保、日本人との同等処遇の担保、監理団体による監理の徹底などが求められています。

外国人が日本で介護労働者として働くことに対する考え

介護人材不足という状況の中、介護分野でも外国人労働者を積極的に受け入れるべきとの意見もありますが、その一方で、低賃金労働者の確保に利用されるという問題、長時間労働や賃金不払い問題のほか、居住地のスラム化、教育問題等が起こる可能性があるという理由で受け入れに消極的な意見もあります。

しかし、外国人介護労働者がこの仕事を始めた理由として「やりがいのあり仕事である」「人の役に立ちたかったから」「自分に向いていると思った」などが多く挙げられており、また、外国人介護労働者の雇用要因では「就労意欲が高い」「日本人職員の雇用が困難であるため」が高くなっています。このように、外国人介護労働者にとっても、日本の外国人介護労働者雇用主にとってもメリットが数多くあるのです。外国人介護労働者には食事・移動・入浴・脱着介助などの基本的な介護技術の習得、介護利用者の心を捉える接し方の習得、医師等専門職との良好なコミュニケーションの構築などを早急に習得し、日本での介護人材不足解決の一翼を担っていただききたいと考えます。

 

少子高齢化が進み、生活習慣病など慢性疾患患者が増加する日本において、外国人技能実習制度などによる介護分野への外国人労働者の受け入れ拡大は必須と考えられます。医療・介護施設においては、外国人介護労働者の受け入れが患者やその家族への支援の向上、施設の経営改善につながると考えられるので、受け入れのメリット・デメリットをよく考え、その可否を決めることが求められます。

(編集:サンテ医業コンサル 田中豊章)

 

参考:一般社団法人医療介護福祉政策研究フォーラム 第46回月例社会保障研究会資料(2017年4月)

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