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■行政トピックス
1.中医協総会 1月17日 市場拡大再算定の適用品目が決定
■記者会見
1.新薬創出等加算ルールの再見直しに全力-製薬協:畑中好彦会長-
■セミナー便り
1.カルテコでPHR「ようやく現実的になってきた」-恵寿総合病院:神野正博理事長-

■行政トピックス

1.中医協総会1月17日
市場拡大再算定の適用品目が決定

厚労省の薬価算定組織は1月17日の中医協に、今年4月の薬価改定時に再算定を実施する品目を報告し、了承された。ネキシウムは、特例拡大再算定を受け、薬価が最大25%引き下げられ、その類似品としてタケキャブが道連れとなる。オプジーボは今年4月からルール変更となる用法用量変化再算定を受け、昨年2月に実施された緊急改定前の100㎎1瓶73万円をベースに56%薬価が引き下げられる。オプジーボの類似品としてキイトルーダ、バベンチオが道連れとなる。

市場拡大再算定は、当初の予想販売量を大幅に超えて販売された医薬品について、年間販売額が予想販売額の一定倍数・一定額を超えた場合に、薬価改定時に価格を引き下げるもの。

収載時に原価計算方式で薬価が算定された医薬品では、「予想年間販売額の2倍以上かつ年間販売額が150億円超」または「予想年間販売額の10倍以上かつ年間販売額が100億円超」の場合に、薬価が最大25%引き下げられる。今回これに該当したのは次の通り。

▼アミティーザカプセル24㎍
▼レボレード錠12.5mg、25mg
▼アフィニトール錠5mg、2.5mg、アフィニトール分散錠2mg、3mg
▼ボトックス注用50単位、100単位
▼ブリディオン静注200mg、500mg
▼リツキサン注10mg/mL(100mg/10mL)、10mg/mL(500mg/50mL)
▼ビダーザ注射用100mg

なお、このうちレボレードとリツキサンについては、希少疾病の効能追加があったことを評価して、それぞれ加算率を5%として、再算定による引き下げ率を緩和した。

また、市場拡大再算定では、収載時に類似薬効比較方式で算定された医薬品については、使用実態が著しく変化した場合(多くの場合は効能追加)に限り、「予想年間販売額の2倍以上かつ年間販売額が150億円超」の場合に、薬価が最大15%引き下げられる。今回これに該当したのは次の通り。

▼トレリーフ錠25㎎、OD錠25mg、OD錠50mg
▼サインバルタカプセル20mg、30mg

トレリーフは、「パーキンソン病(レボドパ含有製剤に他の抗パーキンソン病薬を使用しても十分に効果が得られなかった場合)」を効能・効果として09年3月に発売され、13年8月にはパーキンソン病における日内変動(wearing-off現象)に対する用法・用量の一部変更承認を取得した。大日本住友製薬の決算資料によると、トレリーフの売上げは、14年度116億円、15年度131億円、16年度151億円、17年度予想160億円となっている。

一方、サインバルタは、抗うつ薬として10年4月に発売され、その後、12年2月に糖尿病性神経障害、15年5月に線維筋痛症、16年3月に慢性腰痛症、同年12月に変形性関節症を効能追加した。塩野義製薬の決算資料によると、サインバルタ(日本イーライリリーとコ・プロ、販売はリリー)の売上げは、14年度109億円、15年度152億円、16年度190億円、17年度予想260億円となっている。

 

ネキシウム、タケキャブに特例拡大再算定

2年前の16年4月薬価改定時には、国民皆保険制度を維持するための例外的な制度として、特例拡大再算定が導入され、ソバルディ(1500億円超)とその類似品ハーボニー、さらにプラビックス(1000億円超)、アバスチン(同)が対象になった。この特例は、使用実態の変化にかかわらず、「予想年間販売額の1.5倍以上かつ年間販売額1000億円超から1500億円」の場合に最大25%、「予想年間販売額の1.3倍以上かつ年間販売額1500億円超」の場合に最大50%薬価を引き下げるもの。

今回これに該当したのは次の通りで、タケキャブについては「薬価収載時にネキシウムを比較薬の一つとして収載されたことから類似品に該当すると判断した」(秋下雅弘薬価算定組織委員長)と説明された。

▼ネキシウムカプセル10mg、20mg(1000億円超)
▼タケキャブ錠10mg、20mg(類似品)

これらの薬価は最大25%引き下げられる。なお、第一三共の決算資料によると、ネキシウムの売上げは、14年度693億円、15年度824億円、16年度840億円、17年度予想920億円となっている。

一方、武田薬品の決算資料によると、タケキャブの売上げは、14年度32億円、15年度84億円、16年度341億円、17年度中間期までで253億円(通期予想は非開示)となっている。

 

オプジーボは最小でも56%下げへ

2018年度の薬価制度抜本改革では、用法用量変化再算定が生まれ変わる。従来は、主たる効能・効果に係る用法・用量に変更があった医薬品について、変更前後の1日薬価が同じになるように、再算定を実施するルールだったのが、「主たる効能・効果の変更に伴って用法・用量が大幅に拡大した場合」も対象になる。

これによりオプジーボの薬価は、悪性黒色腫(14年9月発売)から15年12月に肺がんへ主たる効能が変更された際、投与量が2.25倍(1回当たり2mg/kg→3mg/kg、投与間隔3週間→2週間)に増えたことを根拠として、昨年2月の緊急改定前の100mg1瓶73万円を基準に56%引き下げられることが決まった。

ただし、この32万円という薬価は、米国の30万円と同程度であり、ドイツの20万円、英国の14万円(海外薬価は16年11月25日の経済財政諮問会議における塩崎恭久前厚労相提出資料より)に比べてかなり高く、外国平均価格調整の適用により、さらに下がる可能性がある。18年度の薬価制度抜本改革では、収載時ばかりでなく、全4項目に該当する医薬品については、薬価改定の際においても、1回に限り、外国平均価格調整を行うことになり、オプジーボがこの4項目に該当するためだ。

さらに、オプジーボは、費用対効果評価の試行的導入の対象品目にもなっており、最終的な薬価の行方が、さらに収載時にオプジーボの1日薬価合わせで薬価算定されたキイトルーダ、バベンチオの薬価の行方も注目される。

 

■記者会見

1.新薬創出等加算ルールの再見直しに全力
-製薬協:畑中好彦会長-

日本製薬工業協会の畑中好彦会長は1月16日の定例記者会見で、昨年末の中医協で抜本的見直しが決定した新薬創出等加算について「決して納得できるものではない。今後、品目要件や企業要件の改善に向けた検討が極めて重要」と強調した。

今後各社に4月からの改定薬価が内示され、全体像が見えてきた段階で、「厚労省の線引きのやり方がおかしいのではないかといった、より具体的な意見が出てくるだろう。それを取りまとめて厚労省と協議することが、一番にやるべきこと」と語った。

昨年末の中医協で決定した薬価制度抜本改革について、畑中会長は(1)新薬創出等加算の抜本的見直し (2)長期収載品の薬価見直し (3)費用対効果評価の3項目に絞って言及。このうち、新薬創出等加算については、従来の乖離率が平均以下という品目要件が撤廃され、真に革新性・有用性のある医薬品に限定。加えて企業要件も設けられ、加算にメリハリがつくことになった。具体的には、ポイントの高い上位25%程度の企業が加算係数1.0、最低点数の企業が0.8、それ以外が0.9と相対的な評価となった。畑中会長は「25%の企業しかフルに加算の適用を受けられず、薬価を100%維持できない。また、相対的な評価であることは、企業にとって予見性を著しく阻害する」と苦言を呈した。

一方、長期収載品の薬価見直しについては、後発品の上市から10年経過した、置き換え率80%以上の品目は4回(6年目)で後発品と同一価格まで、80%未満は6回(8年目)で後発品の1.5倍まで薬価が引き下げられることになった。畑中会長は「長期収載品への依存から脱却する基本的方向性に異論はない」としながらも、「特許期間中の新薬の薬価維持とセットで検討されるべきであるという点が十分に考慮されないまま、大幅な価格引き下げの仕組みが導入されたことは極めて遺憾」と述べた。

中医協は、今後の検討事項として「新薬創出等加算の見直し、長期収載品の薬価の見直しなど、今般の薬価制度の抜本改革による医薬品の開発・製造・流通等への影響を検証した上で、必要と認められる場合には、次期改定において、所要の措置を検討する」ことなどを挙げており、畑中会長は「議論に積極的に参画していく」と述べた。

また、費用対効果評価に関しては、試行的導入の対象になった13品目(うち医薬品は7品目)の価格調整を4月に実施することが決まったものの、当初予定していた4月からの本格導入は見送られた。中医協は「本格実施に向けて、その具体的内容について引き続き検討し、18年度中に結論を得る」とした。

畑中会長は「既存薬価制度との整合性、ICER(増分費用効果比)基準値の設定の在り方、倫理的・社会的考慮要素等、検討すべき課題が多く、引き続き丁寧かつ慎重な検討が必要」と指摘した。

15年末の政府の薬価制度抜本改革基本方針を皮切りに、官邸主導で進められた抜本改革論議を振り返って、畑中会長は「18年度社会保障制度関係予算案の抑制策を薬価制度に係る財源に依存した結果のものである。薬価のみで財政調整することは限界に来ている」と総括。その上で、社会保障全体の議論の場への参画に向けて、さまざまなステークホルダーに働き掛けていくとし、「国民皆保険の負担のあり方からスタートする話だろう。税金、保険料、受益者がどこまで自己負担すべきか、全体の見直しが必要な時期に来ている」との認識を示した。

 

■セミナー便り

1.カルテコでPHR「ようやく現実的になってきた」
-恵寿総合病院:神野正博理事長-

メディカル・データ・ビジョン(MDV)が1月17日に開催したプレスセミナー「患者がカルテを管理する時代」で、恵寿総合病院(石川県七尾市)の神野正博理事長は、2011年の内閣官房の医療情報化に関するタスクフォースでパーソナル・ヘルス・レコード(自らの健康に関する情報、PHR)の考え方がすでに出てきているものの「遅々として進まない」と指摘。MDVが提供するカルテコにより「ようやく現実的になってきた」と期待を示した。

カルテコは医師が記録した診療情報(カルテ情報)の一部を患者自身が保管・閲覧できるウェブサービスである。患者は自分の傷病名、検査結果、処置・手術の記録、処方薬などの情報をスマートフォンやパソコンで見ることができる。恵寿総合病院では17年9月にカルテコを導入し、登録患者は400人(同病院の患者の数%)となった。

恵寿総合病院ではカルテコが ▽患者自身が自分の情報を持てる仕組みであること ▽お任せ医療ではなく患者参加型医療を後押しする仕組みであること ▽医療データベースとして活用できる将来性があること ▽補助金頼りではない持続可能性のある事業モデルであることを理由に導入を決定した。神野理事長は、将来的に患者自身が測定した血圧、体重、歩数などの生活情報と合わせて、より良い治療に向けたコミュニケーションツールになるだろうと見通しを示した。またカルテコの利活用の一例として糖尿病治療を挙げ、「データとして今後エビデンスを出さないといけない。糖尿病の専門医から利用したいという要望が来ているので、患者の同意を得てエビデンスを作っていきたい」と話した。

同セミナーには認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOMLの山口育子理事長も登壇し、患者がカルテを管理する時代になったことについて「非常に良い時代になった」とコメントした。一方で「ひとつ難しいのは自分のものなのに理解できないことが多い」と指摘する。山口理事長は、自分の医療情報が閲覧できるようになったいま、患者の側も自分の医療情報の読み解き方などリテラシーを高める必要があり、患者と医師が「お互いに成熟しないといけない」と語った。

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