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■新薬収載 5月20日
1.遺伝子治療薬ゾルゲンスマの薬価は1億6707万円―第一三共のエンハーツに5%の有用性加算―

■新薬収載 5月20日
1.遺伝子治療薬ゾルゲンスマの薬価は1億6707万円―第一三共のエンハーツに5%の有用性加算―

 

■新薬収載 5月20日

1.遺伝子治療薬ゾルゲンスマの薬価は1億6707万円
―第一三共のエンハーツに5%の有用性加算―

厚労省は5月13日の中医協総会に、再生医療等製品2品目の保険償還価格案および新薬18品目の薬価案を提示し了承された。再生医療等製品のうち、医薬品の事例にならって保険償還価格を決定したノバルティスファーマの脊髄性筋萎縮症(SMA)の遺伝子治療薬ゾルゲンスマ点滴静注および新薬18品目は5月20日に薬価収載された。

また、再生医療等製品のうち、医療機器の事例にならって保険償還価格を決定したジャパン・ティッシュ・エンジニアリングの角膜上皮幹細胞疲弊症に用いるネピックの保険収載日は6月1日。

先駆け審査指定加算の在り方に疑義も

最も注目を集めたのは、米国においてノバルティスによって1回の注射に2億円を超える価格(2億7795万円(AWP:リスト・プライス)、2億3162万5000円(WAC:卸仕入れ価格))が付けられた、ゾルゲンスマの日本の薬価の行方だった。これまでの国内最高額である血液がんに対するCAR-T細胞療法キムリア点滴静注(1回注射)の3411万3655円を上回ることが確実視されていた。

厚労省の薬価算定組織は、ゾルゲンスマ(静脈内に単回投与。2歳未満に限定)の薬価を、類似薬効比較方式(Ⅰ)により算定。バイオジェン・ジャパンのSMAに対するアンチセンス核酸医薬スピンラザ髄注(乳児型には初回投与後、2週、4週および9週に投与し、以降4カ月の間隔で髄腔内投与)と比較を行い、有用性加算(Ⅰ)(A=50%)および先駆け審査指定加算(A=10%)の評価を受け、薬価は1患者当たり1億6707万7222円となった。ピーク時販売金額予想は42億円(2021年度/25人が使用)。

スピンラザの薬価は1回949万3024円であり、その11回分(1億442万3264円)に加算(有用性加算50%+先駆け加算10%=60%)を上乗せした価格と同額。

中医協総会では、薬価算定組織は当初有用性加算(Ⅰ)の評価を40%としていたが、ノバルティスファーマの不服意見を受け入れ、10%上乗せし50%の評価に改めたことが明らかにされた。1億442万3264円の10%は、約1044万に上る計算だ。

また、ゾルゲンスマには、審査スケジュールが大幅に遅延した経緯がある。2018年3月27日に再生医療等製品に係る先駆け審査指定制度の対象品目に指定され、18年11月1日に国内製造販売承認申請が行われたが、承認が下りたのは20年3月19日だった。

2019年3月、アベクシス社(ゾルゲンスマを創製。ノバルティスが買収)のサンディエゴ研究所において実施した試験の不正に関する内部通報を発端として、治験製品の品質試験(in vivo生物活性試験)において不適切なデータ操作がなされていた形跡が確認された。

PMDAは、この試験成績を審査から除外するとともに、別の試験により実施された品質の再評価結果を基に審査を行った。

また、PMDAは、審査報告書の中で、(1)審査期間短縮のための先駆け総合評価相談が全く実施されないうちに申請が行われた(2)申請資料の改訂指示への対応が遅かった(3)照会に対する回答内容に多くの不備があった(4)臨床試験で使用された治験製品の出荷試験においてデータが故意に操作されていたことが発覚した-などを明らかにした。

その上で「以上のような事態は極めて異例であり、このような多数かつ多岐にわたる問題は、資料の十分性の問題にとどまらず、本邦の患者に適用する製品の品質、安全性および有効性を担保するために重要な事項についての申請者の認識が極めて不十分であったことに起因すると考える」と明記している。

こうした経緯があったにもかかわらず、先駆け審査指定加算(A=10%)が適用されたため、中医協委員からは、「先駆け審査指定制度の対象品目になれば、何の手続きをしなくても、10%の加算が付くのは極めて問題だと思っている」(今村聡日医副会長)など、先駆け審査指定加算の在り方を問題視する声も上がった。

ゾルゲンスマは、著しく単価が高い品目など、中医協総会において必要と判断された品目(H3区分)に該当するとされ、費用対効果評価が課された。

ラツーダは類似薬効比較方式(Ⅱ)で算定

第一三共のHER2陽性乳がん治療薬で抗体薬物複合体(ADC)のエンハーツ点滴静注用(3週間間隔で点滴静注)の薬価は、類似薬効比較方式(Ⅰ)により算定。カドサイラ点滴静注用(2014年4月販売開始、3週間間隔で点滴静注)と比較。

カドサイラによる治療歴のある患者で奏効が認められたことから、治療方法の改善が評価され、ただし奏効率の結果を基に延命効果に関する評価を行うことは困難であるとして、有用性加算(Ⅱ)(A=5%)の適用が妥当と判断された。

ピーク時販売金額予想は129億円(2027年度/1300人が使用)。(1)有用性系加算が適用(2)ピーク時市場規模予測が100億円以上の品目(H1区分)-の要件に該当したため、費用対効果評価が課された。

武田薬品の腎細胞がん治療薬カボメティクス錠(1日1回60mgを経口投与)は、類似薬効比較方式(Ⅰ)により算定。スーテントカプセル(2008年6月販売開始、腎細胞がんでは1日1回50mgを4週間連日経口投与し、その後2週間休薬する。これを1コースとして投与を繰り返す)と1日薬価を合わせた上で、海外第3相ランダム化比較試験の結果を踏まえ、有用性加算(Ⅱ)(A=10%)が適用された。60mg1錠2万2333円。

ピーク時販売金額予想は127億円(2029年度/2800人が使用)。(1)有用性系加算が適用(2)ピーク時市場規模予測が100億円以上の品目(H1区分)-の要件に該当したため、費用対効果評価が課された。

ノバルティスファーマの加齢黄斑変性治療薬ベオビュ硝子体内注射用キット(4週ごとに1回、連続3回(導入期)硝子体内投与。その後の維持期においては通常、12週ごとに1回、硝子体内投与)は、類似薬効比較方式(Ⅰ)により算定。

アイリーア硝子体内注射液(2012年11月販売開始、加齢黄斑変性では1カ月ごとに1回、連続3回(導入期)硝子体内投与。その後の維持期においては通常、2カ月ごとに1回、硝子体内投与)と1日薬価を合わせ、6mg0.05mL 1筒14万2784円(1日薬価1956円)。補正加算は付かなかった。ピーク時販売金額予想は294億円(2029年度/3万7000人が使用)。

国内企業初の核酸医薬である日本新薬のデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬ビルテプソ点滴静注(週1回、静脈内投与)は、原価計算方式により算定。市場性加算(Ⅰ)(A=10%)、先駆け審査指定制度加算(A=10%)が適用された。製品総原価のうち、薬価算定組織での開示可能な部分が50%以上80%未満だった場合の加算係数0.6が適用され、実際の加算率は12%(20×0.6)に抑えられた。250mg5mL 1瓶9万1136円。ピーク時販売金額5予想は54億円(2022年度/128人が使用)。

米国でブロックバスター化している大日本住友製薬の統合失調症・双極性障害治療薬ラツーダ錠(統合失調症:40mgを1日1回経口投与、双極性障害:20~60mgを1日1回経口投与)は、新規性に乏しい新薬を対象とする類似薬効比較方式(Ⅱ)で算定。過去6年間の最低1日薬価とし、40mg1錠328.90 円。ピーク時販売金額予想は61 億円(2023年度/8万2000人が使用)。

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