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■記者会見
1.新社長会見、デジタルツール活用に意欲-日本イーライリリー:シモーネ・トムセン社長-
■行政トピックス
1.中医協薬価専門部会 6月10日 中間年改定巡り薬価調査で業界ヒアリングを実施

■記者会見
1.新社長会見、デジタルツール活用に意欲-日本イーライリリー:シモーネ・トムセン社長-
■行政トピックス
1.中医協薬価専門部会 6月10日 中間年改定巡り薬価調査で業界ヒアリングを実施

 

■記者会見

1.新社長会見、デジタルツール活用に意欲
-日本イーライリリー:シモーネ・トムセン社長-

日本イーライリリーのシモーネ・トムセン社長は6月2日のウェブ社長記者会見で今後の成長に向けた展望として「患者志向による製品にとどまらないイノベーションの推進により継続的な成長を図る」と示し、「25年までに約2200万人の日本の患者のより豊かな人生に貢献する価値を提供する」とした。今後特に注力する取り組みとしては「医師や患者とデジタルツールを活用してコミュニケーションをとっていくことだ」と話した。

日本イーライリリーはデジタルツールに関して(1)医療関係者への効果的な情報提供活動(2)臨床試験に参加する患者へのサポート(3)患者に寄り添うサポートで治療へのモチベーション維持を支援―に取り組んできた。

医療関係者への情報提供では、e-MR、リリーメール(1~4月で16万5000通のeメールを発行)の他、e-学術、ウェブサイトLillymedical.jpを行っている。トムセン社長は19年の1年間で同社が積極的にアプローチしている顧客のうち何らかのデジタルコミュニケーションを実施した割合は76%(主要顧客の76%に対してデジタルコミュニケーションを実施)、また、全ての顧客に対しリリーがデジタルを通じてコミュニケーションを実施した回数は130万回とデジタルツールを活用していることを紹介。臨床試験に参加する患者へのサポートでは小児患者が治験に参加しやすい環境づくりのため、たまご型ロボット「タピア」などを実施。患者に寄り添うサポートはオルミエントやトルツで行っているほか、ベージニオ、トルリシティでも展開を開始したという。

こうした取り組みを踏まえ、トムセン社長は「これまで10年間、特に過去数年間、オンラインのデジタルツールが使えるように投資をしてきた。これが今回のパンデミックでも活かされたと思う。構築してきた能力を拡大し充実させたい」とした。

今後のMR活動に関しては「これから数週間の間、徐々にどのように我々のMRがお客様と対面することができるか、その方法を考えていかなければならない。まずナンバーワンとしてはデジタル活動となると思う」と話したほか、「MRの人数の変更に関して計画は全くない。(デジタルは)追加的に価値を提供する方法だ。医師は多忙なのでより柔軟な形で価値を提供できるツールと考えている。今後フェイストゥフェイスでの対面とオンラインでの対面でのミックスになっていくと思う」として、オンラインだけが良い、対面だけが良い、両方欲しいと顧客のニーズが異なる中で「我々は全てのニーズに応えていきたい」とした。

20 in 10計画は着実に進展

トムセン社長は19年9月に社長に就任。11年には日本イーライリリーのマーケティング本部長を務めた。会見では「革新的医薬品に思いやりを込めて何百万人という日本の患者に医薬品を届けていきたい。特に高齢化や慢性疾患の人口を抱えている日本において非常に強いパイプラインでもって貢献していきたい」と抱負を語った。また「ダイバーシティとインクルージョンにも力を入れていきたい」とした。

日本イーライリリーの19年度業績は売上高2750億円(前年比4.5%増)。販売数量は前年比6.5%増。イーライリリーはグローバル全体で14年から23年までの10年間で20の革新的新薬の承認を目指す20 in 10計画を進めており、日本法人では15年以降に発売した新薬が堅調に推移した。抗がん剤ではサイラムザ、ベージニオ、糖尿病治療薬ではトルリシティ、ジャディアンス、トラディアンス、自己免疫疾患治療薬ではオルミエント、トルツがそれぞれ伸長した。

研究開発では吉川彰一バイスプレジデントが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬の開発を進めていることを説明。バリシチニブがNIH傘下のNIAID主導の臨床試験に参画しているほか、抗Ang2抗体LY3127804は急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を発症するリスクの高いCOVID-19で入院している肺炎患者を対象にした第2相試験を実施中。AbCelleraと共同開発しているLY-CoV555は第1相試験を6月1日に開始した。どの試験も6月末にも結果が判明する見通しだ。

 

■行政トピックス

1.中医協薬価専門部会 6月10日
中間年改定巡り薬価調査で業界ヒアリングを実施

中医協薬価専門部会は6月10日、2021年4月の薬価中間年改定実施に向けた薬価調査の実施を巡り関係業界から意見聴取を行った。日本医薬品卸売業連合会(卸連)などから「中間年改定の薬価調査を実施できる状況ではない」との意見が示されたのに対し、診療側の日本医師会(日医)委員は「十分に理解できた。尊重したい」と理解を示した。一方、支払側の委員は昨年度の骨太の方針に盛り込まれた政府方針に沿って、なお実施を模索すべきだとの姿勢を崩していない。次回は17日に開かれる。

意見聴取で卸連は、コロナ禍の医薬品流通の現状について「ほとんどの医薬品卸は、医療機関等から納品以外の訪問自粛要請を受け、通常の営業活動を自粛し、配送業務を中心に活動している状況であり、見積書の提示どころか、条件面の調整も行えていない状況である」と指摘。

さらに「緊急事態宣言が解除された現在でも、医療機関等からの自粛要請は継続されており、同時に、未妥結減算制度を念頭においた極めてタイトな期間での交渉にもなるため、適切な価格交渉は困難な状況である」と訴えた。

つまり、薬価調査を適切に実施するための、単品単価契約や早期妥結などを推進できる状況にはなく、無理に中間年の薬価調査を実施しても、医薬品の価値を踏まえた取引価格のデータが得られず、大きな疑問が残るだけであることを強調したものだ。

日本製薬団体連合会(日薬連)も「今年度の薬価調査・薬価改定を実施する状況にはない」と卸連と同じ立場。海外からの原薬等の調達において混乱が生じており、製造原価に上昇圧力がかかっていることなどを理由に挙げ、「医薬品の安定供給確保に取り組みつつ、危機発生に柔軟に対応できるサプライチェーンの強化を早急に進める必要がある」と強調。

第二波への警戒を怠ることなく、医療提供体制の確保や医薬品の安定供給のための取り組みを優先すべきとの考えだ。

こうした関係業界からの意見を踏まえ、支払側の健保連委員は「非常に厳しいことは良く理解した」としながらも、なお薬価調査を実施できる方法を模索できないか関係業界に要請。協会けんぽ委員も「大手卸のみに対象を絞るといった検討の余地はないか」とさらなる検討を要請した。

支払側委員の意見に対し、日医委員は「調査方法を変更して行った場合、不確かで検証不能な数値に基づいて薬価改定を実施することになる」「改定ができるという前提で進めるということについて意味が理解できない。皆が無理だと言っている。良く考えてほしい」と苦言を呈した。

17日の薬価専門部会で厚労省は、「今後の新型コロナウイルス感染症の状況等を踏まえた医薬品流通の実情等を注意深く見つつ、薬価調査の実施の可否については引き続き検討することとしてはどうか」としつつ、調査実施計画案を提示したが、依然として診療側、支払側の意見が割れており、結論を持ち越した。

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