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■行政トピックス
1.がんゲノム医療中核拠点病院指定検討会 2月14日 国がん中央、東大、京大など11病院を選定
■セミナー便り
1.レクタブル「遠位型のみならず全大腸炎型でも症状改善」-北里研究所病院IBDセンター:日比紀文センター長-
2.業界共通AI基盤構築「製薬企業、世界で勝ってきて」-京都大学大学院医学研究科:奥野恭史教授-
3.再生医療等製品の安全性評価の課題を指摘-北里:APDD合同シンポ-

■行政トピックス

1.がんゲノム医療中核拠点病院指定検討会 2月14日
国がん中央、東大、京大など11病院を選定

厚生労働省の「がんゲノム医療中核拠点病院等の指定に関する検討会」は2月14日、11病院を選定した。北大、東北大、国立がん研究センター(国がん)東、慶大、東大、国がん中央、名大、京大、阪大、岡大、九大-の各病院で、今後、「がんゲノム医療連携病院(中核拠点病院が申請)」と協力しながらがんゲノム医療の提供を進めていく。具体的には、18年度から遺伝子パネル検査などの先端医療の実施が想定されている。

同省が年末に実施した公募に対し、当初23病院が申請。申請内容などに基づく事前評価で、17病院に絞り込まれ、同検討会委員による採点の結果、90点満点中70点以上だった上位9病院を選定、さらに地域性を考慮して2病院(11位68.59点、13位65.71点)を追加選定した。

昨年10月に策定された「第3期がん対策推進基本計画」には、がん医療の充実において、取り組むべき施策の一つにがんゲノム医療が位置付けられた。一方、昨年6月に取りまとめられた「がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会報告書」においては、がんゲノム医療に必要かつ高度な機能を有する医療機関を「がんゲノム医療中核拠点病院」として指定し、「がん診療連携拠点病院」等と協力しながら、がんゲノム医療を提供することや、これら病院で得られた臨床情報やゲノム情報を「がんゲノム情報管理センター(国がんに設置)」に集約する体制を構築することが示された。

また、同コンソーシアム懇談会では、中核拠点病院の要件として (1)パネル検査結果の医学的解釈可能な専門家集団を有している (2)専門的な遺伝子カウンセリングが可能 (3)臨床試験・治験等の実施について適切な体制を備えている-など8項目を掲げていた。

これを基に、同省は公募を実施。23病院から申請があった。同検討会委員は、事前評価を通過した17病院について (1)遺伝子パネル検査の検体処理、シークエンスの体制 (2)エキスパートパネルの体制・実績 (3)遺伝子カウンセリングの体制・実績 (4)臨床研究中核に準拠した体制 (5)治験・先進医療等の体制・実績(以上5項目が重視すべき項目)-など13項目について、通常の項目を各5点、重視すべき項目を各10点で、合計90点満点で採点した。

 

■セミナー便り

1.レクタブル「遠位型のみならず全大腸炎型でも症状改善」
-北里研究所病院IBDセンター:日比紀文センター長-

北里大学北里研究所病院炎症性腸疾患先進治療センター(IBDセンター)の日比紀文センター長は2月8日、キッセイ薬品工業とEAファーマ共催の潰瘍性大腸炎治療薬レクタブル注腸フォーム(一般名ブテソニド)のプレスセミナーで同剤の特長について「有効成分が泡状になり簡便」、「吸収されると肝臓ですぐに代謝され全身的な副作用の低減が期待される」としたほか、「5ASA(5-アミノサリチル酸)・ステロイドの直腸粘膜濃度を高める注腸剤・坐剤は遠位型(直腸炎型)のみならず全大腸炎型でも症状を改善する」と解説した。

レクタブルは副腎皮質ステロイドのブテソニドを有効成分とする泡状の注腸剤で、肛門から注入し有効成分の泡が直腸とS字結腸まで広がる。日比センター長は「直腸に炎症があると常に刺激される形だから便の回数の増加や血便などの症状が出る。直腸やS字結腸の炎症をとれば(大腸の)上のほうに炎症が残っていてもかなり改善する」と話した。

潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に慢性の炎症が起こり、びらん(粘膜のただれ)や潰瘍を形成する非特異性(原因がはっきり分からない)の慢性炎症性疾患。便の回数の増加や下痢、粘血便などを症状とする。国内患者数は14年末で18万人。厚労省の疫学班の調査によると17年は20万人を超えたという。原因不明のため根本治療はまだないが、治療薬は症状の重さに応じて5ASA→ステロイド→抗体薬の順番で使い分けられる。レクタブルと5ASAの坐薬や注腸剤との使い分けについては「原則として5ASAの坐薬や注腸剤を使用し次のステップとしてステロイドを使う」とした。

潰瘍性大腸炎の治療選択肢は増加しており、16~17年にかけて5ASAにリアルダ、ステロイドにレクタブル、抗体にシンポニーが登場した。18年にはα4β7インテグリン抗体エンティビオ、JAK阻害剤ゼルヤンツの登場が予想される。日比センター長は「薬が出ることによってほとんどの方が外来で治療して元気にしている。治癒機序を考えて、ちゃんと治療すれば、きめ細やかなチーム医療をすることによって、ほとんどの方が普通に暮らしていける。将来は根本治療ができればと考えている」と展望を語った。

 

■セミナー便り

2.業界共通AI基盤構築「製薬企業、世界で勝ってきて」
-京都大学大学院医学研究科:奥野恭史教授-

健康・医療データ(電子カルテ、レセプト、コホート、生活ログなどリアルワールドデータ)、大規模実験データ、文献(論文)、ビジネス情報(市場ニーズ、特許、事業性、パートナー情報など)といった大量の情報を人工知能に学習させ医薬品の開発につなげるAI創薬。成功確率2.5万分の1以下、開発費用1200億円、開発期間10年以上といわれる医薬品開発プロセスを効率化する手段として注目されている。

京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻ビッグデータ医科学分野の奥野恭史教授は2月13日、製薬協主催のライフサイエンス知財フォーラムで「AI創薬の現状と可能性」と題して講演。奥野教授を代表とするライフインテリジェンスコンソーシアム(LINC)は京都大学、理化学研究所、医薬基盤・健康・栄養研究所のほか、製薬企業、IT企業が加盟し、創薬にかかわるAIを開発している。

さらにはAIの開発と並行し、京大、理研、医薬健栄研からアクセスできる広域のネットワークを構築している。そこに開発したAIを実装し業界全体で使用できるようにする。奥野教授は「ITの部分は製薬企業にとって戦う場所ではなく、むしろ共通の基盤を持って、そこから出てくる医薬品で戦うべきではないかと考えている。理研、京大、健栄研などで基盤を整備してサービスするので製薬企業は世界で勝ってきてください、世界で生き残ってくださいという形で進めている」と話した。

LINCではターゲット探索→リード探索→リード最適化→バイオアッセイ→前臨床試験→臨床試験→承認→市販後の薬物治療といった医薬品開発プロセスの全域と医療をカバーする30種のAIの開発を行っている。究極的には人がAIに「どんな疾患の薬を開発すればいいか」と聞くと、病気A→Aの原因(標的)タンパク質はX→Xに結合する候補化合物はY→Yより最適な候補化合物はZ→Zはヒトに投与しても安全なので製品化していい→Zの臨床試験に最適な患者群はP、治療方法はT→市販後の副作用リスクや費用対効果に関しては安全に効く患者群はSであり薬価はWが妥当というところまで答える形を目指している。

奥野教授は、現時点でのAI活用例に関して、タンパク質と化合物の結合予測があるとし、大量のタンパク質と化合物の結合データを人工知能に学習させた上で、標的タンパク質に対し人が提示した候補化合物が結合するかどうか判定するものがあるほか、いまでは標的タンパク質に対し人工知能自らが候補化合物をデザインするようにもなっていると紹介した。「CDK2というキナーゼに対する化合物を自動にデザインしなさいとさせた例では、でたらめな化合物から始まり、ここから化合物のデザインを人工知能が自分で考えていく。人工知能自らがCDK2に結合しやすい化合物をデザインしていくというのをやらせている」。

また、奥野教授はAIの課題として、予測範囲(探索空間)や予測精度が学習するデータの質と量に依存するため、新規事象や新規物質を発見することが難しいとした上で、「シミュレーションで計算機実験をすることによって未知の結合性を探索していく。そのシミュレーション結果を学習する。機械学習とシミュレーション間の計算機のやりとりだけでは誤差が出るので必要最小限のリアルな実験をすることによって誤差を減らす。そういう戦略が必要だろう」と話した。

 

■セミナー便り

3.再生医療等製品の安全性評価の課題を指摘
-北里:APDD合同シンポ-

北里大学臨床研究機構(KARO)と医薬品開発支援機構(APDD)の合同シンポジウム「薬物動態研究の新たな可能性と未来展望」が2月2日、都内で開催された。

新日本科学の前臨床研究推進本部神戸再生医療支援室の内山朝子氏は、再生医療等製品安全性評価に関するガイドラインがなく、ケースバイケースの対応になっている現状を指摘した。再生医療等製品(細胞加工品、ウイルスベクター製品等)の安全性および有効性を考えるに当たり、低分子化合物と同様に製品の分布組織とその期間(体内分布)および分布組織における造腫瘍能の有無を確認しなければならず、薬効の検証であれば再生医療等製品の存在の証明であり、安全性であれば非存在を検証する試験をデザインすることが重要であるとした。

同社では、前臨床試験における検証に、放射性同位元素標識を用いた定量的全身オートラジオルミノグラフィー(ARLG)法、蛍光標識を用いたin vivo imaging system(IVAS)法、製品の核酸配列を特異的に検出するリアルタイム定量PCR(quantitative polymerase chain reaction:qPCR)法、抗体抗原反応によって対象を染色する免疫組織化学(ICH)法の4つを使っているという。それぞれ長所短所があるため、複数の方法の組み合わせによる検証となる。また、内山氏は大きな課題として、臨床試験における検証を挙げた。その検証は核磁気共鳴画像法(MRI)のみが利用されている状況。しかし、そのガイドラインはなく手探りの状態と表現した。

農業・食品産業技術総合研究機構の竹澤俊明氏は、「創薬に有用な次世代培養技術の創出を目指して」との演題で講演した。竹澤氏が発明したコラーゲンビトリゲル薄膜は、両面に異種細胞を培養してパラクライン相互作用を誘発できる3次元培養担体である。液相-液相培養以外にも液相-気相培養など生体内の環境を模した条件での培養が可能で、異種細胞の共培養による相互作用解析にも活用できる基材だ。成功例としてHCE-T細胞による角膜上皮モデル(眼刺激性試験法)、HCE-T細胞とBCEC/D-1b細胞の異種細胞の共培養による角膜透過性試験法や肝実質モデルを応用した肝代謝排泄試験法について報告した。コラーゲンビトリゲル薄膜関連製品は「ad-MEDビトリゲル2」の製品名で関東化学から発売されている。

今後の研究の展開としては、コラーゲンビトリゲルの機能を取り込んだより簡便な細胞培養操作を可能にするデバイスを考案(PCT/JP2017/023754)。このデバイスを活用することで創薬に有用な次世代培養技術を確立することを目指していると締めくくった。

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