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■行政トピックス
1.中医協費用対効果評価専門部会 7月12日 一般人対象「支払い意思額」調査票に異論続出
■セミナー便り
1.QOL値の測定に有用なEQ-5D-国立保健医療科学院:福田敬部長-
■記者会見
1.ネットワーク型創薬「国内での提携も進んでいる」-アステラス製薬:畑中好彦社長-
2.個人情報保護法違反の可能性「重く受け止める」-バイエル薬品:ハイケ・プリンツ社長-

■行政トピックス

1.中医協費用対効果評価専門部会 7月12日
一般人対象「支払い意思額」調査票に異論続出

中医協費用対効果評価専門部会は7月12日、厚労省が提示した、一般人を対象とした「支払い意思額に関する調査」調査票および「費用対効果評価の制度化に向けたこれまでの議論のまとめ(案)」を基に議論した。調査票に関して両側から「分かりにくい」との指摘が相次ぐとともに、議論のまとめ(案)に対しても修正を求める意見が出た。厚労省は次回業界ヒアリングを予定しているが、「この状況の中でどういう聴取ができるのか、非常に疑問」(松本純一日医常任理事)との声も上がった。厚労省は18年度からの費用対効果評価の制度化を目指しているが、雲行きが怪しくなってきた。

同部会では、今年2月に今後の進め方について厚労省案を了承し、各論点について議論を重ねてきた。今後、業界ヒアリングを実施した後、中間取りまとめを行う計画だ。

12日の会合では、厚生科学研究費で実施する「支払い意思額に関する調査」調査票が示された。それによると、同調査は、全国の市区町村のうち人口比例で100地点以上を調査地点として無作為に抽出し、住民基本台帳を用いて性・年齢を層別因子として無作為抽出して、3000人以上を対象に実施。「完全な健康状態で1年間生存すること(1QALY)を可能とする、医薬品・医療機器等の新しい治療法が開発され、その治療法にかかる費用の総額がX円であるとき、公的医療保険から支払うべきと考えるかどうかを、『はい』または『いいえ』の選択肢で尋ねる」というもの。

得られた支払い意思額は、ICER(増分費用効果比)を用いて、費用対効果が良いか、悪いかを判断する際の基準となる。つまり、少ない割合の人が支払いを許容する額は費用対効果が悪い、一方、多くの人が支払いを許容する額は費用対効果が良いというように活用される。

調査票に対して、支払側委員からは「調査が適切に行われるかどうか、やはり不安がある。公的医療保険から支払う金額については、我々患者の立場から言えば、普段あまり意識していないのではないか」(吉森俊和協会けんぽ理事)、「国民は公的医療保険というものをあまり理解しておらず、自分が幾ら保険料を支払っているかを正確に言える人はほとんどいないと思う。これだけの情報だけでは判断できない、あるいは質問の意味が分からないまま、公的医療保険に関する問いに回答して、受諾確率曲線ができることが本当に良いことなのか疑問として残る」(幸野庄司健保連理事)と、調査対象者に対して、よりていねいに説明を行う必要性が示された。

また、診療側からも「どれだけの人が公的医療保険から支払われることについて理解できるか。『公的医療保険として』ではなく、なぜ『いくら支払えるか』との設問でいけなかったのか非常に疑問に感じる」(松本日医常任理事)との意見が出された。

一方、厚労省が提示した「費用対効果評価の制度化に向けたこれまでの議論のまとめ(案)」に対しては、総合的評価(アプレイザル)の際の倫理的、社会的影響等に関する検証について異論が出された。ICERの値から費用対効果が「悪い」あるいは「とても悪い」となっても、アプレイザルにおいて「受け入れ可能」となる場合があり、その際考慮される要素として「イノベーション」や「小児の疾患を対象とする治療」が挙がっていることに、幸野委員は「外すべき」と主張。専門委員の加茂谷佳明氏(塩野義製薬)は「イノベーションと小児の部分を考慮すべきことは必須である」と反発した。

松本委員は「支払い意思額に関することやアプレイザルの際の倫理的、社会的影響等に関する観点についての説明にも私自身納得していない状況」とし、厚労省が7月中旬以降に予定している業界ヒアリングについて「どういう意見を聴取しようとしているのかイメージがわきにくい」と指摘。迫井正深保険局医療課長は「支払い意思額の調査についてまだまだ課題が多く、分かりにくいとの指摘を頂いた。調査の一方で、制度の骨格・仕組みについての議論を並行して行う必要があり、現段階で関係者の意見を聴取することはそれなりに必要なこと」と理解を求めた。

 

■セミナー便り

1.QOL値の測定に有用なEQ-5D
-国立保健医療科学院:福田敬部長-

7月1日に東京大学において第11回CSP-HOR年会が開催された。基調講演「QOL評価の現状~政策応用~」で国立保健医療科学院医療・福祉サービス研究部の福田敬部長は中医協費用対効果評価専門部会での最近の動向を報告するとともに、QALY(質調整生存年)を算出する際のQOL値測定の一つであるEQ-5Dについて説明した。

EQ-5DはEuroQol Groupより開発された質問票であり、5項目に患者らが回答し、換算表からQOL値を求めるものである。当初は質問のスコアは3段階であったが、感度を上げるなど改良されて5段階になったため、最初の方はEQ-5D-3L、改良版はEQ-5D-5Lとして区別される。EQ-5D-3LはQALY算出に国際的に最も使用されている尺度であり、日本語版は1997年に完成し、日本でも最も多く用いられている。一方、日本語版EQ-5D-5Lは池田俊也、白岩健、五十嵐中、能登真一、福田敬、齋藤信也、下妻晃二郎の各氏によって開発され、15年に公表されたもの。今後はこのEQ-5D-5Lが国内で多くの臨床試験に用いられて、妥当性と信頼性が確保されていくものと予想される。

基調講演の中で福田敬氏は費用対効果評価の分析ガイドラインの‘8.効果指標の選択’ではQALYが基本であり、QALYを算出する際のQOL値の測定の方法の一つとしてEQ-5Dがあるとした上で、QOL値を測定する場合は対象者本人が回答することが原則であること、対象者本人からQOL値が得られない場合に限り、家族や介護者等による代理の回答を用いてもよいと記載されていると述べて、EQ-5Dのバリエーションとして、小児向けに表現を改めたEQ-5D-Yがあり、また代理回答者が記載するEQ-5D-5LProxyがあることを示した。まとめとしてQOL値は海外のものを用いることも可能であるが、国内での調査結果を用いることが望ましいと結んだ。

 

■記者会見

1.ネットワーク型創薬「国内での提携も進んでいる」
-アステラス製薬:畑中好彦社長-

アステラス製薬の畑中好彦社長は7月11日の記者懇談会で「科学の進歩を患者さんの価値に変える」と題して講演を行い、イノベーションの創出に関して「アンメットニーズの変化や将来の患者数の予測に加えて、最新の研究開発の実行可能性を踏まえ、従来から注力している領域に加えて、筋疾患や眼科領域に取り組んでいる。創薬のための技術についても低分子や抗体だけでなく次世代型ワクチンや細胞治療にも挑戦している」と強調した。

ネットワーク型研究体制では「かつては提携先のほとんどを米国のベンチャーやアカデミアが占めていたが、近年では日本の研究機関やアカデミアとの提携が進んでいる」と紹介。国内では、1.大阪大学と次世代の細胞医療に関する研究開発で共同研究講座を設置 2.CLINO社と網膜色素変性症を適応疾患とした遺伝子治療薬の全世界における開発・商業化のライセンス契約を締結 3.東京大学の医科学研究所と経口コメ型ワクチン(ムコライス)の共同研究を実施 4.京都大学と先端医療実現を目指すアライアンス・ステーションを開設していることを示した。

同社は現在、前立腺がん治療薬イクスタンジを含むがん領域フランチャイズ、過活動膀胱治療薬ベシケアおよびベタニスを含む泌尿器OABフランチャイズ、移植フランチャイズが成長を牽引しているが、短期的には、急性骨髄性白血病治療薬ギルテリチニブ、胃食道がん対象の抗体IMAB362、尿路上皮がん対象のASG-22ME、慢性腎臓病に伴う貧血治療薬ロキサデュスタット、更年期に伴う血管運動神経症状(ホットフラッシュ)対象のフェゾリネタントの上市・成長を見込む。中長期的には、新たに重点疾患領域に位置付けた筋骨格領域のCK-2127107、アレルギー対象のLAMP-VAXワクチン、その先には国内での提携であるムコライスや細胞治療が続く。畑中社長は「戦略に合致する外部資源を積極的に取り込みながら、持続的な成長を実現していきたい」と話し、「大学や第3者の研究機関がスタートしたものをベンチャーがアーリーなフェーズをやり、そこから我々もかかわっていくということが一般的に行われている。あまり自社創製、他社創製にこだわることなく、私たちが一番価値があるというものを見つけてネットワークの中で早く患者さんに届けるという考え方でいきたい」と述べた。

 

■記者会見

2.個人情報保護法違反の可能性「重く受け止める」
-バイエル薬品:ハイケ・プリンツ社長-

バイエル薬品は7月14日、抗凝固薬イグザレルトの販促資材に使用された「服薬における患者の嗜好に関するアンケート調査」実施に伴う不適切なカルテ閲覧や副作用報告遅延など一連の問題について会見を開き、調査を実施した外部法律事務所は宮崎営業所長2人およびMR1人による患者カルテ等の閲覧、MRによる患者台帳の入手について「カルテとアンケート調査用紙の閲覧は患者の同意の有無が明確ではなく確定的な判断はできないが、患者台帳に関しては、患者の同意が無かった可能性が高く、バイエル薬品に個人情報保護法17条違反が成立する可能性が高い」と見解を示した。こうした個人情報保護法違反の可能性が高いとする指摘や副作用報告が遅延したことについてバイエル薬品のハイケ・プリンツ社長は「重く受け止め、再発防止策に努める」と話した。

バイエル薬品宮崎営業所はイグザレルトの新発売記念講演会などでの発表資料に用いることを想定して、宮崎県の循環器科を専門とする医院に対し、心房細動患者の抗凝固薬に対するアドヒアランスなどに関する調査を委託。2度にわたるアンケート調査、当該医院におけるイグザレルト使用経験についての調査が行われた。

このアンケート調査および使用経験調査のデータ入力作業は、医院の医師ではなく、宮崎営業所長2人とMR1人により行われた。データ入力の過程で、患者の背景情報を調べるため、営業所長2人とMRは医院の患者のカルテを閲覧し、MRは医院の患者台帳を閲覧した。

外部法律事務所は「本社側からカルテを閲覧する指示はなかった」との見解を示したほか、「問題となる販促資材について厳密には薬機法違反にはあたらないと考えるが、販促資材の作成過程におけるずさんさは厳しく非難されるべきものである」とした。

調査報告書では、「根本原因は営業部門による販促目的での医学的な調査・研究への関与について適正性を確保するための体制が組織的に脆弱であったことにあると考えている」と結論付けている。

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