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■記者会見
1.日本政府は「イノベーション政策継続」を―PhRMA:ジョージ・スキャンゴス会長―
■セミナー便り
1.「実臨床での観察研究が重要になる」―富山大学:井上博名誉教授―
2.薬剤師の介入で禁煙率が向上―日本大学薬学部:亀井美和子教授―
3.「薬の種類を減らしたい」が5割―塩野義製薬の患者調査結果―

■記者会見

1.日本政府は「イノベーション政策継続」を
-PhRMA:ジョージ・スキャンゴス会長-

米国研究製薬工業協会(PhRMA)のジョージ・スキャンゴス会長(バイオジェン社CEO)は6月1日、都内で来日記者会見し、「日本政府は、イノベーション重視型の政策を継続すること、予見性の高い政策を維持することが重要」と述べ、「新薬創出加算は機能しており、将来にわたってより良く機能できる」と評価した。また「日本では後発品の使用拡大の余地がある」と述べ、イノベーション推進にかかるコストを賄う方策として、さらなる後発品使用促進を訴えた。

スキャンゴス会長は「2010年度に新薬創出加算が試行的に導入された。日本の政策が変わった結果として、臨床開発活動が大幅に増えた」と指摘。特にドラッグ・ラグ問題の解消効果に言及し、06~09年には欧米から42カ月承認が遅れていたのが、10~14年には15カ月まで短縮、現行政策の継続を前提に、15~19年には5カ月に縮まると予想されていると説明した。

同会長は「今、日本は分岐点に立っているように見える。この数年間、日本が構築してきた成果を維持するために、イノベーション推進政策を意識的に選択していかなければならない」と強調。「毎年の薬価改定」、「適応追加の際の臨時の薬価改定」や「成功を収めた革新的な新薬の薬価見直し」といった薬価引き下げ制度が導入されれば、「ドラッグ・ラグ問題が再発しかねない」と警鐘を鳴らした。

一方で「政府が出せる資金には限界がある」とも述べ、14年の米国の後発品シェア87%に対し日本は66%と大きな開きがあること、14年度の日本における「後発品への置き換えによる医療費適正化効果額」は5500億円に上ったことを指摘し、「後発品の使用促進でイノベーションへの資金投入が可能になる」と提案した。

 

■セミナー便り

1.「実臨床での観察研究が重要になる」
-富山大学:井上博名誉教授-

最近、製薬業界で、リアルワールドエビデンス(real world evidence)やリアルワールドデータ(real world data)という言葉が頻繁に聞かれるようになった。新薬開発のための臨床試験(治験)は、条件の揃った限られた患者集団を対象とする。ノイズを排除し、従来の薬との差分を際立たせることが狙い。ところが、薬の上市後、実臨床では、さまざまな背景を持つ患者にその薬が投与される。処方の実態や治療効果、副作用などについて、実臨床で得られるデータから検証する取り組みが、リアルワールドデータ・エビデンスである。リアルワールド(実臨床)データには、レセプトデータやDPCデータなどの実診療下のデータ、健診データ、各製薬企業が持つPMSや特別調査などの安全性データなどが該当する。

バイエル薬品主催のメディア向け勉強会「リアルワールド(実臨床)エビデンスと医療」の第1回「改めて『リアルワールド(実臨床)エビデンス』の重要性を理解しませんか?」が6月8日に開かれ、講師の井上博氏(富山県済生会富山病院長・富山大名誉教授)は、リアルワールドエビデンスの重要性を示す例として、「抗凝固薬」に関する実臨床のデータを挙げ、「臨床研究には様々な特性、限界があるため、実臨床における薬剤の安全性・有効性については、複数のリアルワールドデータで確認することが重要である」と指摘した。

従来、抗凝固薬の標準療法とされてきたのは、1962年に発売されたワルファリンの服用。その後、2010年代に入り、「ダビガトラン」「リバーロキサバン」「アピキサバン」「エドキサバン」といった新規抗凝固薬(NOAC)が登場した。臨床試験の段階で懸念された副作用の一つに、消化管出血があり、いくつかのNOACの臨床試験では、消化管出血の頻度がワルファリンに比べて増えるとの報告がなされた。一方で、NOAC発売後に各国で検証された実臨床のデータからは、消化管出血という副作用に関して、新薬がワルファリンに劣るとの結果は得られなかった。例えば、フランスや米国の医療保険のデータからは、副作用に関する新薬の非劣性が示された。井上氏は、「このように、臨床試験と実臨床に横たわる間隙を埋めるために、実臨床での観察研究であるクリニカル・レジストリーが重要になる」と指摘した。

さらに、臨床試験では見えていなかった副作用の「人種間差」も、リアルワールドエビデンスによって明らかにされた。J-RHYTHM registryと呼ぶ日本で実施されたクリニカル・レジストリーからは、「日本人に対して欧米と同等のコントロール濃度でワルファリンを使うと、頭蓋内出血の頻度が高まる」ことが明らかになった。

しかし一方で、実臨床データはエビデンスレベルが必ずしも高いとは言えず、実臨床データには限界や問題点もある。このため、井上氏は「実臨床データの特徴を理解した上で、臨床試験の結果を補うことが大切だ」と指摘した。

■セミナー便り

2.薬剤師の介入で禁煙率が向上
-日本大学薬学部:亀井美和子教授-

薬局薬剤師の介入によって禁煙率が40%から70%に向上した。日本大学薬学部の亀井美和子教授は5月19日、医療・医薬品情報研究会で「薬局薬剤師存在感を示すことができるか~薬局のプロフェッションが試されている~」と題して講演を行い、医師と薬剤師が連携して行う禁煙治療サポートの事例を紹介した。事例は茨城県笠間市のもので、禁煙外来の医師、病院薬剤師、薬局薬剤師が中心となって、禁煙治療サポートのプロトコルを作成。禁煙治療薬チャンピックス(バレニクリン)やOTCの禁煙補助薬を使った治療を行った。

バレニクリンの場合、初回診療から禁煙を開始し、2回目、3回目、4回目、5回目の再診を受けて禁煙達成となる。初回診療から2回目の診療までは2週間の間隔があり、この間に吐き気などの副作用が生じるなどして、禁煙を断念する患者が多い。そこで「禁煙開始から3~10日の間、副作用のモニタリングを実施した」(亀井氏)。副作用は事前に医師と勉強会を開催し対処法を共有した。患者から副作用の相談があったり、アドバイスを行ったりした場合はFAXで医師に内容を報告した。

薬局には呼気CO測定(スモーカライザー)を置き、来局時に毎回測定できるようにした。特に禁煙開始2週間は薬局でいつでも測定できるようにし患者の動機付けに利用した。タバコを止めると呼気中のCO濃度が低下するため、禁煙の効果が実感できる。また、禁煙手帳を治療中に常に携帯させ、医師、患者の間で情報共有に活用した。

通常の薬局ならバレニクリンを手渡してそれでおしまいなので、手厚い禁煙治療サポートといえる。その結果、禁煙率は向上した。

亀井教授によると、糖尿病、喘息など慢性疾患でも医師と薬局薬剤師が連携し、薬局薬剤師が介入することで治療アウトカムが高まる可能性がある。こうした事例を蓄積し、研修や勉強会の中で共有していくことが重要だと語った。

講演では薬局の機能として「予防の観点が重要」とも語った。1次予防(病気にならない)、2次予防(早期発見・早期治療)、3次予防(重症化予防)とある中で、「医療機関は2次予防から3次予防にかかわる場所だが、薬局は健康な人を含めて1次予防から利用しやすい施設だと思う」と指摘。健康サポートでの活躍も期待される。

 ■セミナー便り

3.「薬の種類を減らしたい」が5割
―塩野義製薬の患者調査結果―

「薬の種類を減らしたい」が49.1%もいるとの実態が、塩野義製薬が実施したT-CARE NCD(非感染症疾患)調査で明らかになった。同社が5月31日のプレスセミナーで発表した。

この調査は、塩野義製薬が、2016年3月にNCD関連疾患(高血圧、脂質異常症、糖尿病、心疾患、脳梗塞・脳卒中、がん、慢性肺疾患、うつ病)患者を対象にインターネットで治療への態度や意識についてアンケートを行ったもの。3031人が回答した。

同調査では、「治療継続の必要性」を認識しているのは、77.2%、「定期的に通院している」が87.1%と治療継続への意識は高いが、一方では、「自分の健康は自分で管理したい」は56.9%、「自分なりの治療目標がある」は27.8%という自己管理には不得意な実態も浮き彫りにされた。「自分の治療方法については医師の判断に任せる」が66.1%と高く、「自分の治療方法については自分で決めたい」が38.6%と低かった。

同調査結果の薬剤に関する項目をみると、「服薬錠数」では、1日1錠が22.6%、2-3錠が27%、4-6錠が18.5%、7-9錠が12.0%、10-13錠が7.8%、14-16錠が3.8%、17-19錠が1.5%、20錠以上が2.9%となった。疾患別では、20錠以上については、最多はがんの10.4%、次いで心疾患の8.2%、脳梗塞・脳卒中の7.4%などとなった。

薬剤評価では、「信頼できる」が78.6%、「病気を治すのに役立つ」が75.7%などとなり、「副作用が怖い」は32.2%だった。「信頼できる」を疾患別にみると、がんが最多で86.8%、次いで脂質異常症の81.3%、高血圧の80.4%などと続いた。「薬の種類を減らしたい」では、全体では49.1%となり、疾患別では最多は、糖尿病の60.5%、次いで脳梗塞・脳卒中の58.8%、心疾患の57.9%などとなった。また、薬に関する心配事では、「副作用が出たときの対処法が分からない」が33.8%、「薬をいつやめたらいいか分からない」が29.6%、「何の薬を飲んでいるか分からない」が6.6%などとなった。このほか、「薬のことを誰に相談すればいいのか分からない」が13.9%あった。

相談との関連では、薬剤師に対する期待に関して、「信頼・信用できる薬剤師がいてほしい」が80.0%、「病気や緒療法について十分に説明してほしい」が78.5%、「患者の立場に立った病気への対処法、指導を行ってほしい」が78.8%などと期待感が大きいことが浮き彫りになった。

ただ、調査では、医師以外の医療関係者とのかかわりのある者について尋ねたところ、医師以外に関わりのある医療関係者はいないが42.6%、薬剤師31.0%、看護師20.9%となっており、薬剤師への期待と現実にはまだギャップがある結果となった。

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