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■セミナー便り
1.抗菌薬適正使用で提言「単純な使用制限のリスク指摘」-昭和大医学部:二木芳人教授-
2.患者の個別性に対応した医療が可能になる-桶狭間病院藤田こころケアセンター・藤田潔理事長-
■学会レポート
1.「在宅高齢者の安全な薬物療法」めぐり議論-在宅医学会・在宅ケア学会合同大会-

■セミナー便り

1.抗菌薬適正使用で提言「単純な使用制限のリスク指摘」
-昭和大医学部:二木芳人教授-

薬剤耐性対策として政府が打ち出した抗菌薬使用量の削減目標をいかに達成するか。昭和大医学部内科学講座臨床感染症学部門の二木芳人教授は7月の生命科学フォーラムで講演し、「ただ単に使用量を制限すればいいというものではない。減らしていいところと、いけないところと仕分けることが重要」と指摘。医療現場で抗菌薬の適正使用を推進するには、その妥当性を再考する機会となる届出制や、専門家の別の医師の判断を仰ぐ許可制といった頭ごなしの規制には限界があり、欧米で普及している「Antimicrobial Stewardship(抗菌薬適正使用支援)」チーム(AST)を院内に立ち上げる必要性を強調した。

政府が今年4月に決定した薬剤耐性対策アクションプランには、2020年の抗菌薬使用量を13年比で3分の2に減らす(経口のセファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライド系薬を半減、静注用抗菌薬を2割減)との数値目標が盛り込まれた。抗菌薬の使い過ぎが原因で、薬剤耐性が世界的に大きな問題となっており、5月のG7伊勢志摩サミットでは、協調してこの問題に取り組むことが確認されている。

薬剤耐性問題の背景には、製薬企業による新しい抗菌薬開発の滞りがある。企業が、より高い利益が見込める糖尿病、高脂血症、高血圧といった慢性疾患に研究開発の注力をシフトしたことが要因。日本で上市された抗菌薬の数を見ると、経口薬は70年代15、80年代21、90年代14、2000年代9、10年代ゼロ。注射薬は70年代15、80年代33、90年代10、2000年代7、10年代6と減少傾向が顕著となっている。二木教授は「かつては耐性菌が出てきても新薬が解決してくれる時代が続いた。ところが最近は新薬が出なくなり、状況が変わった」と指摘。

こうした中で、「手持ちの抗菌薬を少しでも上手に使うことを考えないといけない」と述べ、新しい診断技術の開発の重要性を強調するとともに、ワクチン、感染予防対策の重要性が一気に高まっているとも指摘した。

抗菌薬使用量の削減については「日本でむちゃくちゃ使われているかというとそうでもない。無駄な使用を減らすことは大事な要素だが、数字だけが独り歩きして、うっかり縛りをつけてしまうと、適切な治療が行われず、かえって耐性菌が増えかねない」と指摘し、重点的に減らす部分を仕分ける必要性を示した。

二木教授はまた「院内感染対策を野放しにしていたら、いくら抗菌薬の使い方を考えても、耐性菌はどんどん広がっていく」とし、早急に実行すべきことの1つに、全国の医療機関におけるASTの立ち上げを挙げた。

ASTは、感染症専門医や感染制御薬剤師が中核となり、検査室や感染対策チーム(インフェクション・コントロール・チーム)、薬剤部など他部署と連携して、1.抗菌薬使用状況の把握2.耐性菌出現状況の把握3.症例ごとの診療介入4.特定抗菌薬の適正使用の指導5.若手医師・薬剤師、医学生・薬学生を対象としたセミナーの実施-などを行うもの。

これにより抗菌薬の適正使用を通して、1.特定の耐性菌の出現抑制2.感染症患者の治療効果向上3.感染症治療の安全性向上、合併症減少4.ICU収容期間、入院期間の短縮5.医療経済性の向上-などが期待できるとした。

 

■セミナー便り

2.患者の個別性に対応した医療が可能になる
-桶狭間病院藤田こころケアセンター・藤田潔理事長-

大塚デジタルヘルスは7月28日、人工知能ワトソンの機能を活用したデータ分析ソリューションMENTATのプレスセミナーを開催した。共同開発者の桶狭間病院藤田こころケアセンターの藤田潔理事長は「クリニカルパスを使って入院期間は短くなっているが、さらにカスタマイズされた医療を提供するためにはMENTATが必要ではないかと考えている」と期待感を示した。MENTATは7月1日から販売が開始された。同センターにも導入されている。

精神科医療では長期入院の問題が指摘され、医師、看護師、ケースワーカーそれぞれの業務工程を整理したクリニカルパスを導入することなどで平均在院日数の短縮が図られている。

ただし、精神科医療は個別性が高く、患者の性別、年齢、治療歴、治療に重要な役割を果たすキーパーソンなど患者それぞれの背景を把握する必要があるが、院内の電子カルテのテキストデータは読み込むのに時間がかかり、医療従事者が患者情報を十分に活用しているとは言い難い課題があった。

MENTATはこうした電子カルテのデータをクラウド上にまとめ、医療従事者が見やすく使いやすい形でアウトプットする。院内の多職種会議でも患者情報を共有しやすくなり、患者の個別性に合わせた医療が提供できるようになったという。

中でもMENTATでは患者ごとに入院長期化や再発にかかわる因子が色付きで表示されるので、それを重点的に解決することで退院をスムーズにすることができているそうだ。

MENTATにかかる費用は、病院ごとに条件が変わるため公表していないが、大塚デジタルヘルスによると、目安としては、サーバー設置など初期費用は数十万円単位、月額利用料は電子カルテごとに数万円単位かかるという。

セミナーで大塚デジタルヘルスの清水泰喜社長はMENTATを通じて院内の情報を見やすくすることのほか、「病院から地域への流れの中で患者情報を切れ目のない形でお伝えすることでシームレスな医療を提供したい」と語った。

 

■学会レポート

1.「在宅高齢者の安全な薬物療法」めぐり議論
-在宅医学会・在宅ケア学会合同大会-

日本在宅医学会大会・日本在宅ケア学会学術集会合同大会(7月15~16日)のランチョンセミナー「在宅高齢者の安全な薬物療法」では、東大大学院加齢医学(老年病学)の秋下雅弘教授が講演し、「高齢者の薬物有害事象は重症化しやすく、東大老年病科のデータでは緊急入院の3~6%を占める」などと、在宅高齢者の薬物療法の問題点を指摘した。

高齢者で薬物有害事象が増加する要因として、1.複数の疾患を有し、多剤服用、併科受診をしている2.慢性疾患が多いことから長期服用になりやすい3.症状が非定型的で、誤診に基づく誤投薬、対症療法による多剤併用に陥りやすい4.薬物動態の加齢変化により過量投与になりやすい5.認知機能、視力・聴力の低下により、アドヒアランス(服用率)低下、誤服用、症状発現の遅れを招いている-ことを挙げた。

秋下氏が副理事長を務める日本老年医学会では、昨年12月、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」を全面改訂し、「特に慎重な投与を要する薬物のリスト」と「開始を考慮すべき薬物のリスト」を列記した。

GLを基に、在宅高齢者で特に慎重な投与を要する薬物として、ベンゾジアゼピン(BZ)系薬剤は在宅高齢者の転倒リスクを高めることを指摘。また、抗コリン作用を有する薬剤を服用する高齢者では口渇感と便秘が最も多く観察され、さらに近年の報告では、認知機能低下との関連性が指摘されていることを指摘した。

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