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■記者会見
1.日本の開発順位の低下を懸念-PhRMA:パトリック・ジョンソン委員長-
2.「中堅なのでアライアンスを組む」-持田製薬:持田直幸社長-
■セミナー便り
1.肝硬変患者予後改善にリファキシミンに期待-奈良県立医大:吉治仁志教授-
2.骨転移「生存期間の延長を狙った標的器官へ」-佐藤威文前立腺クリニック:佐藤威文院長-

■記者会見

1.日本の開発順位の低下を懸念
-PhRMA:パトリック・ジョンソン委員長-

薬価の抜本改革に関してPhRMA在日執行委員会のパトリック・ジョンソン委員長は1月29日の定例記者会見で「日本の国際競争力が損なわれる」と懸念を表明した。グローバル本社に対し日本への投資を依頼する努力は継続するものの、投資すべき市場が複数あることから、「日本に投資を誘致できる保証はない」と述べた。日本の開発順位が落ちれば、日本の患者に新薬が届く時期が数年間遅くなる可能性がある。

抜本改革はイノベーションの促進と国民皆保険の維持とのバランスをとる目的であったが、ジョンソン委員長は「バランスがとれていない」と主張。PhRMAによると、新薬創出・適応外薬解消等促進加算の対象品目は920品目から540品目に減少する。効能追加等による市場拡大への対応では年間350億円以上の品目に対して市場拡大再算定ルールにしたがい年4回の薬価見直しがある。新薬創出等加算に関してジョンソン委員長は「再検討してほしい」と要望。ドラッグラグを起こさない方法として「特許期間中の革新的新薬の価格を維持する。それが世界におけるベストな医薬品をタイムリーに日本に届ける制度だ」と語った。

費用対効果評価の導入に関しては「世界各国で導入されたが、すべて失敗に終わったと思う。命を救うであろう新薬へのアクセスの障害になっていると患者は証言している」とした。

 

患者は「蚊帳の外」

会見には膵臓がん患者団体のパンキャンジャパンの眞島喜幸理事長も登壇し、「薬価が安くなれば患者にとって良いことだろうという話もあるが、1日、1日を大切に生きて新薬を待っている患者がいる。新薬が日本に届くのが遅れるのは懸念材料だ」と話した。加えて、今回の中医協の議論を振り返り、患者会は「蚊帳の外だった」と指摘。「中医協マターと言われるものは残念ながら我々の声が届くような状況ができていない」とした。費用対効果評価に関してはイギリスの患者団体から導入を懸念する声が届いている状況を説明しながら「新しい医薬品へのアクセスが遅れることで患者が不利益を被る。こうした状況は避けていただきたい。特に新薬の保険償還の段階での費用対効果評価の導入には断固反対だ」と述べた。

また、アカデミアの視点から小黒一正法政大学経済学部教授が薬価制度の抜本改革について「抜本的な保険改革が費用対効果評価の前に必要だと思う」とコメント。小黒教授によると、IMSのデータをもとに、代替薬がない品目は自己負担ゼロ、ある程度有用性がある品目は自己負担3割、OTC類似薬のような有用性が低い品目は自己負担7割とし、その後に高額療養費制度を仮定すると、8000億円の削減ができるという。この予算を財政再建に使用するか、イノベーションの促進に使用するかは議論が分かれるところだが、費用対効果評価の導入を議論する前にこうした保険制度自体の見直しをすることを勧めた。

費用対効果評価に関しては「完全に否定するわけではなく、部分的に有用である」とした上で「データがきちんと取れるものが対象になる。代替薬があり市場に十分浸透した薬剤に対しては行うべきだと思うが、新薬といった市場にまだ浸透しておらず患者のニーズも分からないものについては慎重に行うべき」と話した。

 

■記者会見

2.「中堅なのでアライアンスを組む」
-持田製薬:持田直幸社長-

持田製薬の持田直幸社長は1月31日の記者懇談会で薬価制度の抜本改革など「国内医薬品市場の環境はますます厳しさを増すのは明らか」と語り「中堅なので色々なファンクションをすべて持つことはせず、色々な会社とアライアンスを組む」と基本方針を示した。

医薬品事業では新薬への注力による収益の最大化を目指し、鎮痛剤トラムセットと抗うつ剤レクサプロの売上げ拡大を図る。特にレクサプロはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)の中で国内シェアトップだが、持田社長は「他のメカニズムを含む抗うつ剤市場の中でナンバーワンを目指して継続して活動したい」と意気込みを語った。

同社の売上げを牽引しているのはトラムセット、エパデール、レクサプロ。1月1日には抗がん剤ドキシルの販売を開始した。トラムセットに後発品が登場する頃には、潰瘍性大腸炎治療剤リアルダ、EAファーマと共同開発した慢性便秘症治療剤グーフィス(エロビキシバット)、慢性便秘症治療剤AJG555(ポリエチレングリコール製剤)が成長している見通し。リアルダは1日1回の経口メサラジン製剤で12月に長期処方が解禁となった。グーフィスは胆汁酸トランスポーター阻害剤という新規の作用機序であり、営業面では慢性便秘症診療ガイドライン2017の発行を追い風にするほか、産婦人科や精神科など診療科を問わず患者が存在する疾患であることから従来のMR体制が活用できるとしている。

バイオ後続品のエンブレルBSは5月に収載されると想定。あゆみ製薬が販売する。開発パイプラインを見ると、アダリムマブBS、テリパラチドBS、新薬では痛風・高尿酸血症治療剤FYU-981が第3相にあるなど後期開発品が充実している。

一方、早期開発品目が課題で、持田社長は「大学や研究機関などオープンイノベーションの推進を通じて早期開発候補品を導入するなど開発パイプラインの充実を図る」と話した。

 

■セミナー便り

1.肝硬変患者予後改善にリファキシミンに期待
-奈良県立医大:吉治仁志教授-

食事などに含まれるタンパク質が腸内細菌によって分解されると、アンモニアのような腸内有毒物質も産生される。通常、肝臓の働きでアンモニアは解毒・代謝される。だが、肝硬変など肝細胞障害があると、アンモニアが解毒・代謝されず、脳内において炎症を起こし、認知症のような症状を呈することがある。これが「肝性脳症」である。

あすか製薬は、「肝性脳症における高アンモニア血症」を効能・効果とするリフキシマ錠(リファキシミン)を16年11月に発売。奈良県立医大の吉治仁志教授は1月31日の同社主催プレスセミナーで「肝性脳症」診断・治療の最新動向をテーマに講演した。

リファキシミンは、1985年にイタリアで承認されており、「ドラッグラグの典型のような薬」(同教授)だ。腸の中だけで働く「難吸収性抗菌薬」に分類され、腸管内で腸内細菌に作用することで、アンモニアの産生を抑制する。難吸収性抗菌薬としては、これまでカナマイシンが肝性脳症に使われてきたというが、「肝性脳症における高アンモニア血症」の効能・効果を持つのは、リファキシミンが初めて。

また、肝性脳症に用いられる薬剤には、筋肉におけるアンモニア代謝を促進する分岐鎖アミノ酸製剤(BCAA)や、腸管内pH低下や排便促進などにより腸管からのアンモニア産生・吸収を抑制する合成二糖類などがある。ただし、「肝性脳症における高アンモニア血症」の効能・効果を持つ薬剤はこれまでなかった。

リファキシミンは、合成二糖類などとは異なる作用機序であることから、臨床上、治療選択肢の一つとなっており、同社によると、臨床現場から「これまで治療のために週3回点滴のために来院する患者も多かったが、週1回もしくは月1回の来院ですむようになり、患者・家族の負担が非常に減った」など、評価する声が上がっているという。

吉治教授によると、リファキシミンが肝硬変患者の予後をしっかり改善していくか評価するため、日本人での長期投与試験が多施設共同で実施される予定だ。また、同教授は、「リファキシミンは腸内細菌を整えるため、海外ではさまざまな病気に使われている」と述べ、国内での潰瘍性大腸炎や過敏性腸症候群などへの適応拡大に期待を示した。

肝性脳症は、認知症やうつ病と症状が似ている(睡眠異常、指南力低下、異常行動、もの忘れなど)ため、臨床的に区別がつきにくいといい、「認知症だろうと精神科に行くケースがほとんどではないか」(同教授)というのが実情。当然、認知症やうつ病の治療をしても改善せず、「肝臓専門医などによる肝機能検査などの判別が重要」とした。

 

■セミナー便り

2.骨転移「生存期間の延長を狙った標的器官へ」
-佐藤威文前立腺クリニック:佐藤威文院長-

佐藤威文前立腺クリニックの佐藤威文院長は1月31日、バイエル薬品主催の前立腺がん骨転移に対する放射線核種治療薬ゾーフィゴ(ラジウム-223)のメディアセミナーで講演し、ゾーフィゴ登場によって「骨転移治療は痛みを取るだけの緩和治療から、SRE(骨関連事象)/SSE(症候性骨関連事象)の予防、さらには骨転移があってもそれを逆手にとることで生存期間の延長を狙いにいこうと治療コンセプトが変わってきた」と話した。

前立腺がんは胃がん、肺がんに続く国内第3位の患者数(8万6100人、国立がん研究センターの2017年のがん統計予測のがん罹患者数予測)。前立腺がんが進行した去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)の患者のうち9割は骨転移を発症するといわれている。骨転移の治療法には、緩和照射(放射線療法)、骨修飾薬として抗RANKL抗体ランマーク(デノスマブ)やビスホスホネート製剤ゾメタ(ゾレドロン酸)、放射線核種治療薬としてメタストロン(ストロンチウム-89)やゾーフィゴがある。そのうちゾーフィゴはSSEの発症抑制と生存期間の延長を目的とする薬剤であり、骨転移巣のような骨代謝が亢進している部分に集積し、アルファ線を放出することによって抗腫瘍効果を発揮する。

講演ではゾーフィゴのピボタル第3相ALSYMPCA試験の結果を解説。ゾーフィゴ投与群はプラセボ群と比較し、全生存期間(中央値)と初回SSEまでの期間(中央値)において有意な延長を示したほか、入院期間の短縮でも有意な効果を示した。

バイエル薬品が前立腺がん患者を対象に行ったインターネット調査では患者は生存期間の延長のほか、QOLの向上を求めている。佐藤院長は「入院期間の短縮により患者のQOLへの寄与が推測される」と述べた。

また、ALSYMPCA試験でのALP(アルカリフォスファターゼ)の変化の探索的研究において、ALP値の改善の有無による生存期間の比較を行った結果、ALP値が改善した群で生存期間の延長が見られた。

佐藤院長は「骨転移の時に血液のALPは大きく上がる。その値が下がった方と下がらない方で生存期間の差が出てくる。したがって、我々は、PSAという腫瘍マーカーを下げることを目的としがちだが、骨転移においてALP値のモニターが有用だということが分かる」と解説。骨転移マネジメントの重要性を語るとともに「骨転移は従来の疼痛緩和から生存期間の延長を狙った標的器官へ」と展望を示した。

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