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■行政トピックス
1.中医協薬価専門部会 2月22日 類似薬効比較方式の比較薬選定の在り方で議論
■セミナー便り
1.「テクフィデラはMSの第1選択薬」-九州大学神経内科学:吉良潤一教授-
2.うつ病「身体的な症状に理解を」-日本うつ病センター:樋口輝彦理事長-
3.易刺激性への投薬「週3日以上ある場合に」-筑波大学:宮本信也副学長-
4.特発性肺線維症治療「非専門医にも明確に」-GL作成委員会:本間栄委員長-

■行政トピックス

1.中医協薬価専門部会 2月22日
類似薬効比較方式の比較薬選定の在り方で議論

中医協薬価専門部会は2月22日、昨年末にまとまった政府の「薬価制度抜本改革基本方針」を踏まえ、個別課題の議論を継続し、この日は「類似薬効比較方式」をテーマに議論した。中川俊男委員(日医副会長)は化学合成品の比較薬に高価な抗体医薬が選定される場合があること、また有用性加算や新薬創出等加算の対象品目が比較薬に選定される場合があり、次の新薬に加算を持ち越すことになるのではないかと問題視したが、厚労省は「一定の合理性がある」と反論した。

一方、厚労省が「類似薬効比較方式で算定された場合に、外国平均価格調整による価格調整についてどう考えるか」と問題提起したのに対しては、幸野庄司委員(健保連理事)は、「物差しは2つくらい必要であり、外国価格を用いることも必要だと考える」との見解を示した。

専門委員の加茂谷佳明氏(塩野義製薬常務執行役員)は、「この調整ルールは、日本の算定薬価が欧米主要国の価格との間で著しい乖離が生じた場合の補正と認識している。適用範囲がある程度限定的になるようなルールも検討してほしい」と述べた。

昨年薬価収載された乾癬治療薬トルツには当初、類似薬のコセンティクスやルミセフと1日当たり薬価が同じになるように薬価が付くところを、外国平均価格調整が適用されたため、これら類似薬に比べて著しく高い薬価が付いた。トルツは一旦薬価収載が見送られ、為替相場の変動によって外国調整が適用されなくなるのを待って類似薬と1日薬価が同じ薬価で収載された。

これを契機に中医協で外国平均価格調整ルール見直しの機運が高まり、1月25日の薬価専門部会で集中的に議論され、現行の米・英・独・仏の参照国の中から、米国を除外することが妥当との意見で支払・診療側が一致していた。

22日の薬価専門部会で加茂谷専門委員は「米国のリストプライスであるAWPをそのまま参照することについては問題があると認識している。実際に米国で取り引きされている価格の代表値として何か特定できるものはあるか、我々も検討したい。米国の価格を全く無視するという取り扱いが妥当なのか、慎重な検討をお願いしたい」と求めた。

 

■セミナー便り

1.「テクフィデラはMSの第1選択薬」
-九州大学神経内科学:吉良潤一教授-

九州大学大学院神経内科学の吉良潤一教授は2月17日、バイオジェン・ジャパン主催のメディアセミナーで講演し、同月発売の多発性硬化症(MS)治療剤テクフィデラ(一般名フマル酸ジメチル)について「第1選択薬でよい」との見方を示した。主な理由として、現在の第1選択薬である注射薬のインターフェロンβ(IFNβ)やグラチラマー酢酸塩(GA)と比べて継続しやすいこと、第2選択薬としての使用が多い経口薬フィンゴリモドに対して有効性は同程度で副作用は少ないと思われることを挙げた。

MSは中枢神経系の自己免疫疾患で、若い女性に発症することが多い。髄鞘の傷害によって神経伝達がうまくいかず、排尿障害、視力障害、運動障害などの多彩な症状が出現する。寛解と再発を繰り返すが、一部の患者では徐々に進行する。再発期(急性期)にはステロイドや種々の対症療法薬が用いられる。

2000年以降、IFNβなど、免疫系に作用する「疾患修飾薬(DMD)」が5剤承認され、寛解期に再発抑制の目的で用いられている。昨年12月には6剤目のテクフィデラが承認された。同剤は抗炎症作用と神経保護作用を有する。

吉良氏は、DMDの使用によって「再発を1年に1回から5年に1回に低減できる」と解説。現状では、DMDの第1選択薬としてIFNβかGAを用い、効果があれば長期間継続、反応不良な場合にはフィンゴリモドかナタリズマブを用いるとした。

ただし、DMDの使用率は40~50%未満にとどまるという。背景には「第1選択薬は注射薬のため初期からは使用しにくい」「長期の安全性が不明な薬剤がある」「妊娠しても安心な経口薬がない」といった課題があると指摘した。その点、テクフィデラは「経口薬のメリットがあり、最長7年間の使用経験で新たな重篤な副作用が報告されていないことから、第1選択薬でよいと思っている」と期待感を示した。

 

■セミナー便り

2.うつ病「身体的な症状に理解を」
-日本うつ病センター:樋口輝彦理事長-

日本うつ病センターの樋口輝彦理事長は2月24日、日本イーライリリー主催のメディアセミナーでうつ病に関して一般に「だるい、重い、痛いといった身体的な症状への理解度は低く、医師に伝えきれていないケースが見受けられる」と指摘。日本イーライリリーが実施した調査の結果を受けて発言した。

日本イーライリリーは、過去うつ病と診断され現在社会生活に復帰しているまたは復帰に向けて調整中の20~60代の男女517人に対し、インターネットを通じたアンケート調査を実施。うつ病と診断される前のうつ病に対する認識について尋ねたところ、「気分の落ち込み、眠れない、食べられない」といった症状については72.3%がうつ病の症状だと理解していたが、「だるい、重い、様々なところが痛い」といった症状がうつ病の症状だと理解しているのは50.3%にとどまった。

うつ病は抑うつ気分、興味・喜びの喪失が中核的な症状だが、それだけでなく睡眠障害、食欲障害、易疲労感、自律神経症状、疼痛性身体症状を伴う。その上で樋口理事長は患者と医師とのコミュニケーションのあり方にも言及。「うつ病か分からない段階で、これは身体の病気じゃないかと思って、かかりつけ医を受診する方は身体の症状を訴えているが、精神科や心療内科を受診する方は落ち込んで元気がない、何かしようと思う気力がわかないといった精神的な症状を話す。こちらから食欲はどうですか、身体に痛みはありませんか、汗をかくといった自律神経の症状はありませんかと聞くとあると答えるけれども、積極的に自分の方から出てこない場合は結構多い」という臨床現場での実感を語り、「患者は自分に起こっているすべてのことを伝えられるわけではないが、患者も感じている不調を伝えていく、または医師が引き出していくことが重要だ」と話した。

 

■セミナー便り

3.易刺激性への投薬「週3日以上ある場合に」
-筑波大学:宮本信也副学長-

筑波大学の宮本信也副学長(小児科医)は2月28日、大塚製薬主催のメディアセミナーで小児期自閉スペクトラム症(ASD)に伴う易刺激性を対象とした非定型抗精神病薬2剤リスパダール(一般名リスペリドン)、エビリファイ(アリピプラゾール)について「これまでも自閉症の子どもにはオフラベル(適応外使用)でごめんなさいして使ってきたが、適応が通ったことで普通に使えるようになった」と述べ「とても変なことだ。自閉症に有効といわれている2つの薬はどちらも欧米では自閉症への適応が通っているのに日本では使えなかった」と指摘。ドラッグラグがあった現状を振り返った。

ヤンセンファーマのリスパダールは16年2月に国内における小児期ASDに伴う易刺激性の適応追加承認を取得。エビリファイは16年9月に取得した。エビリファイについて言えば、米国では09年に承認を取得しており、11年に日本小児心身医学会、日本小児精神神経学会、日本小児神経学会が医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議に開発要望を提出していた。

講演ではASDについて解説。ASDは、広汎性発達障害、自閉性障害、アスペルガー障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害をまとめた概念。DSM-5の診断基準では1.意思疎通や対人交流に関する問題が持続的に複数の場で認められる 2.限定された行動パターンや限定された関心・活動領域の反復 3.症状は発達早期に見られなければならない 4.社会生活や仕事、その他の重要な領域で大きな支障を来している 5.除外項目となっている。宮本副学長によると「マイペース、話が通じにくい、しつこい」ことがASDの特徴という。頻度(有病率)は1%(100人に1人)といわれている。

その中で小児期のASDに伴う易刺激性は、些細なことで不満、不快感、怒りの感情を生じやすく、その状況に対して気持ちや行動をコントロールしにくい状態のことを言い、不機嫌、イライラ、かんしゃく、暴言、大声、興奮、攻撃的行動(自傷・他害)が見られる。こうした易刺激性に対して薬物療法が行えるようになったが、宮本副学長は薬物療法に踏み切るタイミングについて「大事なことはこれらのことが繰り返されることが問題。程度よりも頻度(回数)をみる」と解説。「私の場合、週3日以上ある場合には本人もそのことで不利益を被っていると考え薬物療法を行う」とした。

2剤の使い分けは明確ではないが、宮本副学長は「非常にイライラしている子がリスペリドンの場合には1週間したら割と落ち着きましたということがある。エビリファイはそういう子もいるが、もう少し時間がかかったりする。なので、その子の状態を見ながら使い分ける。ただ、エビリファイは副作用的なものが少ない印象があるので、そこでも使い分ける」と述べた。

 

■セミナー便り

4.特発性肺線維症治療「非専門医にも明確に」
-GL作成委員会:本間栄委員長-

特発性肺線維症(IPF)の治療ガイドライン(GL)作成委員会の本間栄委員長(東邦大学医学部内科学講座呼吸器内科分野)は3月1日、塩野義製薬主催のメディアセミナーで国内初のGLについて解説。「今までクリニカルクエスチョンに対する推奨度が無かったので、分かりやすく非専門医の先生にも明確になった。診断する時点では非常に難しいが、治療する時点においては、専門医施設で診断して、そういうところにお返しして、治療を続けてもらうことが可能になった」と述べた。

IPFは肺胞に傷ができ、その修復のためコラーゲンなどの線維が蓄積して間質が厚くなる病気。進行すると肺が固くなり膨らみにくくなることから咳が出たり息苦しくなったりする。伝統的に抗炎症薬が使用されてきたが、08年に塩野義製薬が抗線維化薬ピレスパ(一般名ピルフェニドン)、15年に日本ベーリンガーインゲルハイムが抗線維化薬オフェブ(ニンテダニブ)を上市。それを受けてGLが作成された。

GLは慢性安定期の薬物治療において、ステロイド単独療法は行わないことを強く推奨(エビデンスの質:非常に低い)、ステロイドと免疫抑制薬の併用は行わないことを強く推奨(同:低い)、ピルフェニドンを投与することを提案する(同:中)、ニンテダニブを投与することを提案する(同:中)と明示した。

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