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■行政トピックス
1.中医協費用対効果評価等合同部会 10月25日 試行的導入、ICER500万円以上で価格下げへ
2.偽造品流通防止のための検討会 10月19日 年内の最終とりまとめに向けた議論を開始
■記者会見
1.希少疾病薬への日本のアクセス環境の良さを評価-セルジーン:マーク・J・アレスCEO-
■セミナー便り
1.タグリッソは1次治療の標準治療になるべき-帝京大学病院:関順彦腫瘍内科科長・病院教授-
2.臨床試験、正確な施設選定でコスト削減 -クインタイルズ:品川丈太郎臨床開発事業本部長-

■行政トピックス

1.中医協費用対効果評価等合同部会 10月25日
試行的導入、ICER500万円以上で価格下げへ

厚労省は10月25日、中医協費用対効果評価、薬価、保険医療材料専門部会の合同部会を開き、「試行的導入における価格調整方法」について、ICER(増分費用効果比)の値が500万円以上の場合に価格引き下げ調整を行うことを提案した。次回以降、価格調整方法の詳細を決定し、試行的導入の対象となった13品目(うち医薬品7品目)の18年度価格改定に反映させる。

ICERの値が幾らになったら価格引き下げ調整の対象にするか-。厚労省は当初、この基準値を、一般人を対象として実施する「支払い意思額調査」から導き出そうとしたが、調査手法をめぐって委員から疑問の声が続出。結局、試行的導入においては、新たに実施する「支払い意思額調査」の結果を用いることを断念し、過去に行われた調査結果(2010年の白岩らによる調査)および英国における評価基準を用いることが決まった。

この日、厚労省は基準値として500万円を提案。その根拠について、1)10年の調査において回答者の半数が支払を許容した金額が485万円 2)英国において「当該技術の受け入れ可能性は個別に判断される」上限額が3万ポンド(436万円) 3)英国において「致死的疾患、終末期における治療について当該技術は推奨される」上限額が5万ポンド(727万円)-であることを参考にしたと説明。

一方、ICERによる科学的分析だけでは反映しきれない4項目の倫理的・社会的考慮要素に1項目該当するごとにICERの値を5%(価格調整係数)割り引く案も示した。これに対して、上出厚志専門委員(アステラス製薬)は「5%は少ないように思う。5%であった場合、ICERの比重が大き過ぎるのではないか」と再検討を要請。松本吉郎委員(日医常任理事)は「1項目で5%、最大(4項目)でも20%というのが目安としては妥当」と発言した。

吉森俊和委員(協会けんぽ理事)から出された「5%の根拠について、特に確たるものはないであろう。参考にした指標や該当するものがあれば教えてほしい」との問いに対して、古元重和医療課企画官は「現在の薬価および保険医療材料価格の算定における市場性加算Ⅱが5%と設定されていることを参考にした」と答え、「制度化以降にどのような項目にどの程度重みを置いていくのかについては、今後引き続き議論していくべきではないかと考えている」と付け加えた。

このほか、厚労省は、比較対照品目と比べて、効果が増加し(または同等であり)、同時に費用が削減される、ICERが計算できない品目については、価格を引き上げることもあり得るとの見解を示した。

 

2.偽造品流通防止のための検討会 10月19日
年内の最終とりまとめに向けた議論を開始

厚労省の医療用医薬品の偽造品流通防止のための施策のあり方に関する検討会は10月19日の第5回会合で、年内の最終取りまとめに向けた議論を開始した。6月21日付で発出した中間とりまとめにおいて「今後更に対応を要する事項」として記載された5項目のうち、主に 1)流通過程における品質の確保等に向けた検討 2)規制の法令上の位置付けのあり方の検討 3)封かん方法等に係る適切な情報共有に関するルール作りに向けた検討-について議論を進める。PIC/SのGDPガイドライン全般に対応する国内ルールの検討に関しては11月10日の第6回会合で話し合う。その後、12月20日の第7回を経て、早ければ年内に最終取りまとめを行う。

第5回では主に封かん方法等に係る適切な情報共有に関するルール作りに向けた検討について議論した。松本欣也構成員(日薬連)は日薬連加盟団体企業290社を対象とした「封の例示」の見直しプロジェクトアンケート調査の結果を報告した。アンケートで医薬品の販売包装単位に施した封の情報共有について「医薬品に施された封が外観上どのように開封されたか判るようになっているかについて、流通の各段階の関係者が認識できるよう、製造販売業者から情報共有を実施しているか」と尋ねたところ「情報共有はしていない」と回答した企業は221社(全体の75%)であった。

一條宏構成員(卸連)は「過去に何度か製薬協などと封の情報交換をやってきたと思っていたが、その結果として75%が共有されていないということに驚いている」とし、日薬連に今後の対応を尋ねた。松本構成員は「プロジェクトの中でどういう形でそれを発出していくか協議しているところ。将来、日薬連からこういうことをやってくださいというのを何らかの形で出したい」と答えた。

ハーボニーの偽造品が流通した事件では、ボトルが外箱から出され、添付文書が付されていない形で卸や薬局を流通した。こうした事態を防ぐためにも製造販売業者、卸、薬局で開封・未開封の意思疎通を図ることが求められている。

 

■記者会見

1.希少疾病薬への日本のアクセス環境の良さを評価
-セルジーン:マーク・J・アレスCEO-

極めて未充足な医療ニーズに焦点を当てている世界的なバイオ医薬品企業セルジーン。2016年の総収益は112億ドルで、直近5年の年平均成長率は20%。また、総収益に占める研究開発費比率は39.9%で、世界の全業種の中で第1位にある。開発品目を見ると、固形腫瘍12品目、リンパ腫・白血病7品目、多発性骨髄腫11品目、骨髄性疾患9品目、炎症・免疫性疾患12品目で、しかも第3相段階に19品目を抱えており、極めてアンメット領域に特化した強力なパイプラインを有していることが分かる。そのセルジーンのマーク・J・アレスCEOが10月3日に来日記者会見を開き、日本の希少疾病用医薬品へのアクセス環境の良さを賞賛するとともに、環境継続を訴えた。

セルジーンは2005年に日本法人を設立。2010年に再発または難治性の多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群の治療薬としてレブラミドを発売し、日本市場でのビジネスを開始した。今年は日本では25年ぶりの経口の乾癬治療薬となるオテズラ(アプレミラスト、経口ホスホジエステラーゼ4阻害剤)を「局所療法で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬」の適応症で3月に発売。炎症・免疫性疾患領域への参入も果たしている。また、レブラミドも3月に世界で初めてATLL(再発または難治性の成人T細胞白血病リンパ腫)に対する適応を取得。イストダックス(ロミデプシン、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤)は7月にPTCL(再発または難治性の末梢性T細胞リンパ腫)の治療薬として承認され、現在、薬価収載を目指して当局との交渉中にある。どちらも希少疾病用医薬品指定であるが、ATLLは毎年国内で1000人が発症、PTCLは2000人が発症すると推計されている。

国内後期開発品目では、レミナリドミド水和物が未治療濾胞性リンパ腫、低悪性度リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫でそれぞれ第3相にあるほか、ポマリドミドが多発性骨髄腫で第3相、また、アプレミラストはべーチェット病で第3相にある。

アレスCEOは、現在、米国、日本、ドイツ、英国と世界各国でがんによる死亡率が20年前と比べて20%以上減少しているのは、新しい薬剤が貢献している重要なエビデンスとした上で、日本でもセルジーンの薬剤が血液がんの死亡率改善に貢献してきたとし「多発性骨髄腫患者の生存率は劇的に向上。90年代前半まで5年生存率は30%未満だったが、2014年の5年生存率は66%と予測され、今では70%近くまでになっている。治療が難しい血液がんの領域でレブラミドが導入され生存率が伸びた」と強調した。

さらに、日本政府のイノベーション促進政策により革新的新薬が大幅に増加しただけでなく、患者の新薬へのアクセスも良くなっていると評価。「日本の政策環境が非常にポジティブになり、バイオ医薬品企業にとって良いものになっただけでなく、患者にとっても、前向きなものになっている。レブラミドについては、日本、米国、ドイツでは、承認から薬剤が使えるようになるまでの時間差がない。しかし、他の市場では薬価のことがあって、保険償還が遅れている」と紹介。英国、フランス、スペイン、イタリアでは、希少疾病用医薬品に患者がアクセスするまでの平均期間が承認から20カ月以上を要するのが実情。レブラミドについては、英国、フランスでは保険償還待ちの状態にある。アレスCEOは、アクセスの遅れは早期ステージのがん患者にとって、より死亡リスクを高めると指摘した上で「日本はアクセス環境で世界をリードしている。イノベーション、アクセスを推進する政策があり、最も重要な薬剤にアクセスできるようになっていることに感謝する。そしてこういった環境が続くよう今後も我々は政策立案者と対話をしていきたい」と語った。

さらに、その話し合いでは予測可能性についても取り組んでいきたいとする。「薬価の設定やバリューの議論などによっては、特定の薬剤について保険償還で突然の変化が起きるかもしれない。しかしながら、イノベーションを促進する政策があること、そして薬価や保険償還について予測可能性があるということが、患者にとって重要であるとともに、我々が商機を考える中でも非常に重要だと思っている」と語った。

 

■セミナー便り

1.タグリッソは1次治療の標準治療になるべき
-帝京大学病院:関順彦腫瘍内科科長・病院教授-

非小細胞肺がん(NSCLC)治療において、「タグリッソは(1次治療の)標準治療になるべき」。帝京大学病院腫瘍内科の関順彦科長は10月30日、第8回アストラゼネカ・オンコロジーサイエンス・セミナーでタグリッソを現在の標準治療と比較した第3相試験の結果を紹介し、その可能性を大いに評価した。

NSCLC治療薬として1次治療で承認されているEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)には、第1世代と呼ばれるイレッサ(一般名ゲフィチニブ、アストラゼネカ)、タルセバ(エルロチニブ、中外製薬)と第2世代のジオトリフ(アファチニブ、日本ベーリンガーインゲルハイム)の3剤がある。これら3剤の使い分けについて、セカンドライン以降でのエルロチニブとゲフィチニブを比較した第3相WJOG 5108L試験、ファーストライン治療としてアファチニブとゲフィチニブを比較した第2b相Lux-Lung試験の結果を示し、「臨床家としてはどの薬剤を使っても基本的には同じ効果が得られるだろうと捉えている」との見解を述べた。

一方のタグリッソ(オシメルチニブ)は第3世代のEGFR-TKI。現在はセカンドラインの標準治療として使われている。今年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)では、未治療進行NSCLC患者を対象に、このオシメルチニブ群をファーストライン標準治療のゲフィチニブあるいはエルロチニブ群と比較した第3相FLAURA試験の結果が発表された。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はオシメルチニブ群18.9カ月、標準治療群10.2カ月でハザード比0.46、p<0.0001だった。

その後に行われた今年の日本肺がん学会では日本人サブセットでの解析結果が発表され、PFS中央値はオシメルチニブ群19.1カ月、標準治療群(すべてゲフィチニブ)13.8カ月、ハザード比は0.61、p=0.0456となった。

グレード3以上の毒性は、オシメルチニブ群34%、標準治療群45%、日本人サブセットではオシメルチニブ群48%、標準治療群56%だった。日本人患者群におけるグレード3〜5の間質性肺炎は両群ともに2%だった。

関科長はこうした試験結果を基に、今後の治療シークエンスの展望について、良いものを最初から多くの人に届けるというのが全く自然な考え方であり、オシメルチニブは「標準治療になるべきで、そこからオプションを考えていく治療になるだろう」と語った。

アストラゼネカの森田慎一郎オンコロジー事業本部長は2021年までに、日本では肺がん、卵巣がん、乳がん、血液がん領域において少なくとも4つ(オラパリブ、デュルバルマブ、トレメリムマブ、アカラブルチニブ)を承認まで持っていきたいとの展望を述べた。

 

■セミナー便り

2.臨床試験、正確な施設選定でコスト削減
-クインタイルズ:品川丈太郎臨床開発事業本部長-

クインタイルズ・トランスナショナル・ジャパンの品川丈太郎臨床開発事業本部長は10月12日のメディアセミナーでCROのクインタイルズとIMSが統合することで可能になった「ネクスト・ジェネレーション・オブ・クリニカル・ディベロップメント(NGCD)」について解説した。NGCDは、製薬企業が臨床試験を行う際、正しい施設を高い確度で選定することによって、施設の再選定をなくし、費用の抑制や試験期間の短縮を図るもの。IMSとクインタイルズの双方のデータを活用し、施設を選定し、製薬企業に提案する。

品川氏によると、臨床試験を行う施設を決定して、契約症例を割り当てても、その1〜2割の施設では契約症例数に満たない。施設を再選定して試験を再度立ち上げると費用がかかり、試験期間の延長にもつながる。クインタイルズはCROの経験から医師や施設に関する豊富なデータを有しているが、「やはり1〜2割の施設再選定が起きていた。なぜかというと、例えば、医師が病院を変わっていた。勤務医は2〜3年で病院を変わることが多い。臨床試験に基づくデータはそういう情報を取りこぼすことがある」(品川臨床開発事業本部長)。一方で、IMSにはリアルタイムに近い最新の患者動向や処方動向などのデータがあり、このデータとクインタイルズのデータを組み合わせることで、より正確な施設選定が可能になるという。品川臨床開発事業本部長は「16年の統合以来、アメリカではこれで始まった試験が幾つかある。日本では1つ、2つ動き始めたところなので、結果を報告できる段階ではないが、NGCDを使いたいという要望を多数頂いている」とした。

加えて、品川臨床開発事業本部長は「我々は臨床試験の領域に続いて、市販後のところを重視している。市販後ビジネスの開拓、さらなる成長につなげたい」と強調。市販後ビジネスでは、安全性業務、PMS(市販後調査)、RWI(リアルワールドインサイト)の3本柱を展開している。なお、PMSではこれまでPMSデータマネジメント(回収したデータをまとめて整理する業務)を行ってきたが、新たにPMSモニタリング(施設と契約してケースカードを回収する業務)に進出した。品川臨床開発事業本部長は市販後のデータ収集においてMRが副作用報告をしなかった問題でPMSモニタリングをMRにさせたくないという顧客が増えてきたと指摘。「我々はMRではないがGCP経験を持つ、もしくはそれに近いプロファイルの者でモニタリングをするサービスを立ち上げた。立ち上げてすぐ1つ仕事が始まっている」と紹介した。

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