特ダネ+
特ダネ情報を独自のアンテナでお届け
製薬企業の記者会見やセミナー情報、行政関連情報などを国際医薬品情報からの提供記事として配信。
提供:国際医薬品情報 編集部

facebook facebook

■行政トピックス
中医協薬価専門部会 9月14日-多田会長、オプジーボ薬価「既存ルールで処理できる」
■セミナー便り
1.多様な医薬品産業形成を期待-厚生労働省医政局:大西友弘経済課長-
2.除菌寄与し、胃がんによる死亡者が減少傾向-北海道医療大学:浅香正博学長-
■学会トピックス
がん支持療法に正面から取り組む-第1回「がんサポーティブケア学会」学術集会-

■行政トピックス

中医協薬価専門部会 9月14日
-多田会長、オプジーボ薬価「既存ルールで処理できる」

中医協薬価専門部会は9月14日、高額な薬剤への対応について関係業界から意見聴取した。多田正世日薬連会長は、焦点となっているオプジーボの薬価見直しについて「一部に非常に大きな売上げ予測だけを取り上げた議論があるようだが、実態としてそのような売上げにはなっていないようだ」と緊急的な対応の必要性に疑問を呈し、「既存の特例拡大再算定により次回改定時に処理できる問題ではないか」との認識を示した。

中川俊男委員(日医副会長)は、多田会長が「薬価こそが企業経営の要であり、持続的経営の源でもある」と発言したのに対し、「公的医療保険制度を持続可能にする最大の論点も企業経営と同じく薬価である。製薬企業としてどのように公的医療保険制度の持続性を担保する努力をしているかが見えない」と指摘。

また、多田会長が「企業戦略として、一般には市場の小さなものからスタートし、その後適応拡大して順序立てて開発を進めるのが通常の革新的新薬の在り方である」と発言したのに対しては、「企業戦略としてまず悪性黒色腫から承認を取ったということであれば、まさに製薬企業の企業戦略が日本の公的医療保険制度を翻弄しているとしか言いようがない。企業戦略に翻弄されてはたまらないというのが日本国民の考えではないか」と問題提起した。

その上で「期中改定とまではいかないまでも、何らかの緊急的な措置が必要という考えに同意していただけるか」とただした。多田会長は「今この場で同意する、しないの問題ではなく、慎重に検討すべき課題と認識している。しかし、効能追加によって販売数量がどのようになるか、開発コストがどのくらいかかったかなどの背景情報が十分に分かっていない中で、直ちに何らかのルールを適用するということ自体に違和感を覚えている」と応じた。

幸野庄司委員(健保連理事)は、オプジーボと同じ作用機序のキイトルーダが非小細胞肺がんの適応でも承認申請中にあることを指摘した上で、キイトルーダの薬価算定について「オプジーボの価格を是正する方針としている中、現在のオプジーボの薬価が付けられることは不合理ではないか。オプジーボの価格を見直した上で類似薬効比較方式を適用すべき」と訴えた。

これに対し多田会長は「類似性がどの程度なのか、十分な知識を持ち合わせていないため、返答することが難しい」と述べるにとどめた。

■セミナー便り

1.多様な医薬品産業形成を期待
-厚生労働省医政局:大西友弘経済課長-

厚生労働省医政局の大西友弘経済課長は9月2日、製薬協政策セミナーで講演し、厚労省の「医薬品産業ビジョン」を、18年度の介護報酬・診療報酬同時改定に先立って前倒しで策定したい考えを示した。その上で、各企業に対し、イノベーション追求によりアンメット・ニーズに応えていくことと併せて、海外展開、新規事業展開、国民皆保険との両立などの課題に戦略を持って取り組むよう求め、「多様な医薬品産業が形成されることを望んでいる」と述べた。

厚労省が医薬品産業の将来像を示す「医薬品産業ビジョン」は、経済課が中心となってほぼ5年おきに策定しており、前回は13年度だった。次回は18年度になるが、介護報酬・診療報酬同時改定の重要な年に当たるため、大西経済課長は、前倒しで策定し、それに基づき同時改定論議に臨みたい意向を示した。

その上で医薬品産業の今後の展望に触れた大西課長は、「製薬協加盟企業の中で画期的な新薬を創出し続けていく企業が果たして何社あるだろうか。ただし、新薬創出できない新薬創出型企業はいなくなれと言うつもりは毛頭ない」と強調。

「近い将来の世界最大の製薬企業はグーグルだと予想する人もいるように新薬創出型企業の姿も大きく変わっていくことは間違いない。一方、新薬を創出し続けられない場合でも、いくらでもいろんな道があると思う」と続けた。

具体的には「IT、食品、環境といった他業界とコラボレーションすることによって国民の健康、医療の発展に貢献する切り口があるのではないか」としたほか、今後の課題の一つに挙げた「国民皆保険との関係の見直し」では、政府によるスイッチOTC推進税制の導入などをてこに、「保険の外のセルフメディケーションの推進の道もあるのではないか」とした。

■セミナー便り

2.除菌寄与し、胃がんによる死亡者が減少傾向
-北海道医療大学:浅香正博学長-

武田薬品と大塚製薬は9月1日、「世界が注目する日本の胃がん予防の最前線-胃がん予防としてのピロリ菌除菌治療の現状-」と題してメディアセミナーを開催し、北海道医療大学の浅香正博学長が講演した。講演は13年2月にヘリコバクター・ピロリ感染性胃炎の除菌治療が保険適用されたことを受けて、実際に国内での胃がんによる死亡者数が減少していることを強調。厚生労働省の人口動態調査では胃がんによる死亡者数が13年4万8632人→14年4万7903人→15年4万6679人となっており、浅香学長は「16年は4万5000人、20年には3万人になる」と見通しを示した。一次予防としての除菌と二次予防としての内視鏡検査の組み合わせが奏功しているという。浅香学長によると、保険適用後、国内で年間150万件の除菌がなされている。また、内視鏡手術が増加し、開腹手術が減少している。こうしたことから、早期がんの頻度が増加し、進行胃がんが減少していると考えられ、それが死亡者数の減少につながっているのではないかと話した。

会場からは内視鏡検査よりも簡便な方法はないかという声が上がり、浅香学長はピロリ菌の有無を調べる方法は、抗体測定(血液や尿を採取してピロリ菌に対する抗体の有無を調べる方法)や尿素呼気試験(検査用の薬を飲んだ後、呼気を調べる方法)があると解説。ただ、「一つ言いたいのは、胃がんでも早期がんは症状がない。早期がん患者に除菌しても進行がんに移行してしまうので、胃がんがないことを確かめてから除菌する」と内視鏡検査の重要性を指摘した。

ピロリ菌除菌をすれば胃がんのリスクは抑制できるが、ゼロになるわけではないことにも注意を促し、「ピロリ菌を除菌すれば胃がんにならないというのは20代まで。特に60歳以上はその後も1年に1回フォローしなければならない」と除菌後のフォローアップの必要性を改めて語った。

■学会トピックス

がん支持療法に正面から取り組む
-第1回「がんサポーティブケア学会」学術集会-

近年のがん医療の進歩により、がん患者の予後は改善しているものの、その一方で治療に伴う副作用や合併症、後遺症などにより日常生活に支障を来す患者が少なくない。そのような中、「副作用を制するものはがん治療を制する、医はいたわりの心から始まる〜学と術と道〜」をメインテーマに、第1回日本がんサポーティブケア学会学術集会(JASCC、会長=相羽惠介東京慈恵会医科大学腫瘍・血液内科教授)が9月3日〜4日、慈恵医大で開催された。

岡山大大学院精神神経病態学の井上真一郎助教は、「せん妄とコミュニケーション」について講演。せん妄には「低活動型」と「過活動型」があり、「低活動型」はがん・HIV患者の51%にみられるものの、見逃されやすいと指摘。

また、緩和医療におけるせん妄の直接因子は薬物が57%も占めるデータを紹介し、「薬剤性せん妄を避けるためには、反跳性不眠、不安・焦燥、自律神経症状、せん妄などの離脱症状がみられるベンゾジアゼピン系薬剤投与を避けることが必要だ」とした。

「過活動型」に対する薬物療法について、1.内服薬では、興奮が軽度の場合はトラゾドン(レスリン・デジレル)2.興奮が中等度以上の場合は、クエチアピン(セロクエル)かリスペリドン(リスパダール)3.注射薬では、内服困難・拒薬傾向・即効性が要求される場合は、ハロペリドール(セレネース)-が推奨されるとした。

一方で「低活動型」の薬物療法に対する考え方について、1.エビデンスが少なく、今後の検討が待たれる 2.「過鎮静を避ける」視点が重要 3.非薬物療法の重要性-を挙げた。

さらに井上氏は、「せん妄の薬物療法では、基本的には適応外の薬剤を用いるため、薬剤使用に当たっては副作用などに十分注意をする」ことを付け加えた。

日本医大武蔵小杉病院腫瘍内科の勝俣範之教授は、「これだけは知っておきたい外来化学療法の副作用対策」をテーマに講演。米国におけるがんの外来、入院治療の比較では、全生存期間、奏効率、血液毒性・非血液毒性、QOLに差がなく、外来の方が有意に体重減少が軽度、外来群で入院が必要になった例は1.6%のみ-との結果を紹介。このため、米国では外来化学療法実施率が90%に達しているとした。

注意すべき副作用の1つとして発熱性好中球減少症(FN)を挙げ、高リスクFNに対する注意点として、1.内科的エマージェンシーであり、迅速にエンピリック抗菌薬剤をフルドースで開始する 2.治療開始が遅れると70%まで死亡率が上昇する 3.緑膿菌をカバーする広域スペクトラムを持つ抗菌薬を選択する 4.施設の最近の培養結果を参考にする-ことを挙げた。

発熱のない好中球減少患者へのキノロン投与の臨床試験について、クラビット500mg/7日間投与群のFN発症率は3.5%(入院率15.7%)と、プラセボの7.9%(入院率21.6%)に比べて予防効果があることも紹介した。

学術集会に先立って記者会見した、同学会理事長の田村和夫福岡大医学部教授(腫瘍・血液・感染症内科)は、「学会設立の基盤となったのが、化学療法に伴う悪心・嘔吐(CINV)の前向き全国調査を実施したがんとCINVを考える会と、強力な化学療法に頻発する発熱性好中球減少症(FN)の治療研究グループである日本FN研究会の2つの研究会である。従来から、がんの支持療法は極めて重要であるにもかかわらず、正面から取り組む学会が無いことが懸念されていたこともあり、設立に向けて動き始めた」などと学会設立の経緯を説明した。

すでに海外では、国際がん支持療法学会(MASCC)などの組織を中心にガイドライン作成などが積極的に行われている。田村理事長は、「支持療法に対して相談できる日本の学術団体が無いばかりかアジア地区でも相応の団体がなく、この種の活動の空白地域であると言われたことも同学会設立のきっかけとなった」と述べ、グローバルな視点からも活動していく方針を示した。

学術集会では、多職種・多領域の参加者のもと、がん治療の副作用マネジメント、原病や治療の合併症、後遺症、サイコオンコロジー、リハビリテーション、がんサバイバー・就労支援など、多方面にわたる演題が発表された。

関連記事-こちらもどうぞ

TOP ↑