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■行政トピックス
1.中医協費用対効果評価専門部会 8月23日 制度化向け年内骨子取りまとめへ仕切り直し
2.未承認薬・適応外薬検討会議 8月23日 ボルテゾミブの適応拡大など2件を公知と判断
■記者会見
1.米国ラジカヴァ、患者支援プログラム好評-田辺三菱製薬:三津家正之社長-
■セミナー便り
1.カナリア、肥満患者でより効果-東大大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科:門脇孝教授-
■記者説明会
1.国内VBは2012年から再興期に-日本ベンチャーキャピタル協会:半田宗樹副会長-

■行政トピックス

1.中医協費用対効果評価専門部会 8月23日
制度化向け年内骨子取りまとめへ仕切り直し

厚労省は8月23日の中医協費用対効果評価専門部会に、「今後の検討の進め方(スケジュール案)」を示し、 1.試行的導入の医薬品7品目については価格調整を18年度診療報酬改定時に行う 2.18年度からの制度化に向けて年内をめどに骨子を取りまとめる―との方針を明示した。7月12日の会合では、一般人を対象とした「支払い意思額に関する調査」の内容に委員から疑問の声が続出したため、その後に予定していた業界ヒアリングが延期され、夏をめどとした中間取りまとめもできなかったことから、仕切り直した格好だ。

同省のスケジュール案によると、試行的導入の7品目の価格調整を18年度改定時に実施するため、9月中に業界ヒアリングを行った後、10月中に評価基準の設定方法、価格調整方法を取りまとめる。試行的導入においては、過去に行われた国内の支払い意思額調査の結果や、諸外国における評価基準を活用して評価基準の設定を行うこととし、新たな調査は行わないこととした。価格調整方法については、薬価専門部会などと合同で開催して検討する。

一方、制度化に向けた検討については試行的導入と分けて整理。年内をめどに 1.対象品目の選定の在り方 2.評価の手続き(対象の選定から価格調整までの期間、実際に価格調整を行うタイミング) 3.総合評価(アプレイザル)における増分費用効果比(ICER)の評価基準の設定方法(支払い意思額調査の実施やその活用の在り方を含む)、倫理的・社会的影響等に関する考慮 4.価格調整方法―について骨子を取りまとめる。

また、委員から疑問の声が続出した、新たに実施する支払い意思額調査について同省は、調査実施および集計・分析には最短でも4カ月程度を要するため、仮に11月から開始した場合、結果が得られるのは、18年2月末から3月となる見込みと説明。調査は今回1回限りのものとはせず、制度化後の状況も踏まえながら、必要に応じて実施する方針を示した。

迫井正深保険局医療課長は「スケジュール自体は遅れ気味と素直に申し上げなくてはいけない」とした上で、「それも踏まえて改めてスケジュールを示し、あくまでも年内の骨子とりまとめに向けて、しっかり議論を進めたい」との考えを示した。

幸野庄司委員(健保連理事)は「中医協が始まる前、支払側の打ち合わせの場で支払い意思額調査をどうするか議論した。完璧な状態で走り出すのは無理であるので、ここは腹をくくって走りながら変えていこうということで実施に向けて意見がまとまった」と述べた。「我々もこの調査の仕方が正しい方法だとは思っていない」としながらも、「この議論を突き詰めていくと、多分来月も同じ議論をしているのではないか。そこはもう割り切ろうという訳である」とした。

診療側からも「支払側から取りあえずまず一歩進めようと提案いただき、それはその通りである」(万代恭嗣日本病院会常任理事)との意見が示された。

 

2.未承認薬・適応外薬検討会議 8月23日
ボルテゾミブの適応拡大など2件を公知と判断

厚労省の医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議は8月23日、日本リンパ網内系学会と日本血液学会が要望したボルテゾミブ(製品名ベルケイド、ヤンセンファーマ)の原発性マクログロブリン血症/リンパ形質細胞リンパ腫への効能・効果、日本核医学会や日本心臓病学会など9団体が要望したフルデオキシグルコース(放射性医薬品メーカー日本メジフィジックスのPET検査用放射性医薬品FDGスキャン注)の大型血管炎の診断への効能・効果を医学薬学上公知と判断した。9月8日に開催される薬食審医薬品第二部会で公知申請にかかわる事前評価を通過すれば、8日付で保険適用となる。

また、日本造血細胞移植学会(骨髄移植やさい帯血移植など造血細胞移植を研究する学会)が要望したデフィブロタイドの類洞閉塞症候群(肝中心静脈閉塞症)に対する効能・効果、日本神経学会が要望したタウリンのMELAS(ミトコンドリア脳筋症の一種)における脳卒中様発作の再発抑制に対する効能・効果、日本臨床腫瘍学会が要望したオキサリプラチンとフルオロウラシルとレボホリナートカルシウム3剤併用の小腸がんに対する効能・効果について、医療上の必要性が高いと判断した。医療上の必要性が高いと判断された製品は国が企業に開発要請を行う。

 

■記者会見

1.米国ラジカヴァ、患者支援プログラム好評
-田辺三菱製薬:三津家正之社長-

田辺三菱製薬の三津家正之社長は8月29日の記者会見で、米国事業と国内新薬の状況について報告し、8月8日(米国時間)に発売した米国自販製品第1号のALS治療薬ラジカヴァについては「米国ではすごく盛り上がった。ALSの20年ぶりの新薬ということで非常に大きなインパクトになっている」と手応えを語った。発売日には米国の全国紙やテレビ番組で紹介され、8月10日には第1例目の患者への投与が始まった。売上げは第2四半期決算で発表する。

ラジカヴァは日本国内でのデータを基に申請し5月5日にFDAから承認を取得した。三津家社長は「FDAから人種差の問題、作用機序の問題、日本でのすべての安全性データを英訳して、かつデータベースに整理するということで1年間の開発要員としては当社として過去最大であった」と振り返る。米国の営業方針は「非常に重篤な疾患かつ高価な薬剤なので、どれだけ患者をサポートできるか」(三津家社長)とし、発売前からwebを中心にALS患者支援プログラム「サーチライトサポート」を実行。投与期と休薬期を組み合わせた28日間を1クールとして繰り返すことから患者にとって治療が受けやすい施設を紹介するほか、保険償還の相談にも応じる。三津家社長によると同プログラムには「相当数のアクセスがあり、一斉にサポートが動き出している」。米国子会社のMTファーマアメリカはMR数50人で、ALSアソシエーションの認定施設130施設、ALS治療を行う神経内科医300人をカバーしている。米国事業売上収益目標は20年度800億円。ラジカヴァはそのうち400億円。1241億円で買収したニューロダーム社の19年発売予定のパーキンソン病治療薬ND0612で400億円を売り上げる計画だ。

なお、買収したニューロダームは、既存薬に関するアンメットメディカルニーズをデバイスや製剤の改良で解決する企業である。三津家社長は「特に中枢系の薬剤で開発リスクを抑えるためにもこういう取り組みを進めたい」と言う。ニューロダームに蓄積されたアイデアと三菱ケミカルホールディングスのグループ会社の技術力を組み合わせた新製品開発も視野に入れている。

国内では売上げの2本柱のうち、自己免疫疾患領域は20年度以降の将来目標売上収益1500億円を掲げ、17年度はシンポニーとステラーラの炎症性腸疾患領域でのシェア拡大を目指す。その上で三津家社長は「MT-1303(ジレニア後継品、アミセリモド)、MT-5547(ファシヌマブ)を20年近辺に加えることで1500億円超えが視野に入ってくる」と言う。

もう一つの柱である糖尿病・腎領域は将来目標売上収益1000億円を掲げ、17年度はカナグル(インヴォカナ)の心血管イベントリスク抑制効果を示したCANVAS試験の結果を活用するほか、カナグルとテネリアの配合剤カナリアの伸長を図る。その先はカナグル(インヴォカナ)の腎保護効果をみるCREDENCE試験(19年終了予定)結果の活用、腎性貧血治療薬MT-6548(バダデュスタット)や糖尿病性腎症治療薬MT-3995の上市を見込む。記者会見で村上誠一育薬本部長はカナリア配合錠について「SGLT2の価値を上げることで、2剤を合わせたものが大きな実を結んでくれるだろうというようなストーリーで持っていきたい」と語り、CANVAS試験で判明した下肢切断リスクの増加に関しては「アメリカでも添付文書に書かれ、日本でもそういう方向で対処しながら、きっちりと使っていただくのが第一と考えている。成長はどうかということになるが、糖尿病がかなり悪化された患者さんなのでフットケアなどを奨励しながら使っていけばそれなりに上手くいくのだろうということで糖尿病の専門の先生方にもこの点を強調していただいている」とした。

 

■セミナー便り

1.カナリア、肥満患者でより効果
-東大大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科:門脇孝教授-

東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科の門脇孝教授は8月31日、第一三共と田辺三菱製薬が共催した2型糖尿病治療剤カナリア配合錠のメディアセミナーでDPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬との併用は「DPP-4阻害薬が効きにくい肥満の患者に対して、効きにくい部分を解除する効果があるので、プラスアルファ以上の効果が得られる可能性があると考えられる」と述べた。

カナリアはDPP-4阻害薬テネリアとSGLT2阻害薬カナグルの配合剤。7月3日に田辺三菱製薬が国内製造販売承認を取得した。第一三共が販売し、両社でプロモーションを行う。9月7日に発売した。テネリアの薬価169.9円、カナグルの薬価205.5円、カナリア配合錠の薬価は300.3円。DPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬の配合剤は国内初。DPP-4阻害薬がインスリン分泌低下に作用する一方、SGLT2阻害薬は尿細管でのグルコース(ブドウ糖)の再吸収を阻害し、尿中に排泄することで血糖を低下させる。グルコースが排泄されるのでその分カロリーロスとなり体重減少や内臓脂肪の減少につながる。「SGLT2は糖尿病を悪化させる肥満そのものの改善を通じて糖尿病の病態の改善に資する可能性がある」(門脇教授)。

講演ではDPP-4阻害薬のHbA1c低下効果とBMIの関係を見た海外データを提示。DPP-4阻害薬(単独または併用)の無作為化比較試験55件、2型糖尿病患者1万8328例を対象とし、メタ回帰分析によりHbA1c低下効果とBMIの関係を解析したもので、門脇教授は「体重が下がるほどHbA1cの変化量は大きくなる。肥満型に比べて小太り型ややせ型のほうがよく効くということが示されている。DPP-4阻害薬を投与する場合に肥満そのものを改善するような薬と併用したほうがDPP-4阻害薬の効きが良くなることを示唆している」と解説した。

国内の2型糖尿病患者を巡っては血糖降下薬の中ではDPP-4阻害薬やビグアナイド薬がよく使用されているが、最近ではSGLT2阻害薬の使用患者が増えている。その背景について門脇教授は「65歳から74歳は老年症候群がない場合は、65歳未満とリスクが変わらない。75歳以上は脱水所見は多いので注意は必要であるが、安全性のプロファイルが確認されたことが大きい」と指摘。日本イーライリリーと日本ベーリンガーインゲルハイムのSGLT2阻害薬ジャディアンスのEMPAREG OUTCOME試験やカナグル(インヴォカナ)のCANVAS試験で心血管イベントのリスク抑制効果が報告されたことも伸長の一因とした。CANVAS試験で明らかとなった下肢切断リスクの増加についてコメントはなかったが、門脇教授は「今後、さらにSGLT2阻害薬はその使用頻度が増していくと思われる。その意味でDPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬の組み合わせは非常に増える可能性がある」とした上で、配合剤は「非常にタイムリーな開発だと思う」と語った。

 

■記者説明会

1.国内VBは2012年から再興期に
-日本ベンチャーキャピタル協会:半田宗樹副会長-

日本ベンチャーキャピタル協会の半田宗樹副会長(三菱UFJキャピタル代表取締役社長)は8月29日、一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(岡野栄之理事長、以下LINK-J)の設立1周年の記者説明会で登壇し、ライフサイエンス業界におけるVCの役割について語った。

ベンチャー企業による年間資金調達金額は年々増加しており、2016年は前年比383億円増の2099億円に拡大。うち、VCによる投資額は212億円増の950億円で約半分を占める。半田副会長は「米国に比べた問題意識はあるが、少なくともVCによるベンチャー投資は順調に需要化している」と解説。さらに、VCによるライフサイエンス関連分野への投資金額は2015年度が全体の19%(約140億円)、2016年度は27%(約257億円)にまで伸長していると紹介した。また、各VCの出資比率にも特徴がみられ、ライフサイエンス分野への出資比率が特に高いのは、政府・地方公共団体系VC(同分野への出資比率49%)、大学系VC(同30%)、銀行系ファンド(同22%)となっている。半田氏は「VCの出資母体が多様化していることに伴い、各VCが戦略や目的に沿って、得意分野を絞った投資をしている結果」とした。三菱UFJキャピタルでも、ライフサイエンス分野に特化した1号ファンドを2017年2月に設立。資金総額は100億円と純粋な民間資金としては国内最大で、運用期間は12年間(29年2月)となっている。

1997~04年にかけて数多くのベンチャー投資ファンドが設立され、国内バイオベンチャーは勃興期にあった。その後、東証マザーズの創薬VB上場基準の一部改定により、結果としてバイオVB上場ラッシュがストップしたこと、さらにはリーマンショックも重なり、「冬の時代」を迎えることになる。しかし、半田氏は、安倍内閣が発足し、アベノミクスがマーケットを牽引するなかで、13年11月に改正薬事法が成立して、再生医療を中心に日本が世界に先駆けた新薬の開発環境に整備されたこと、加えて、大学ファンドが次々生まれ、行政によるスタートアップの支援も強化されたことで、2012年からバイオベンチャー再興期に入っているとの認識を示した。2012年以降、バイオベンチャーの時価総額は飛躍的に増加しており、マザーズにおけるライフサイエンス銘柄の時価総額は全体の20%を占め、市場を牽引しているという。

同氏は、VCの役割について、「資金面でのサポートはもとより、ベンチャーと支援者の結節点として、成長支援のエコシステムを構築すること」と強調。事業会社とのマッチング、資本・業務提携の斡旋、グローバル化の支援といったサポートが重要とし、現在、当協会としてもオープンイノベーション委員会では事業サポートに力を入れているとした。

なお、LINK-Jは医薬関連企業が集積する日本橋エリアを創薬の街とする三井不動産の日本橋再生計画の一環として昨年3月に設立。この1年間で同組織には医薬関連の民間企業72社、非営利団体36団体がメンバーとして入会。創薬のハブになるべく日本橋に開設したライフサイエンスビル3拠点には、1年間で非営利団体21団体、民間企業22社が入居。ベンチャー企業、アカデミアと大企業との交流連携が始まっている。

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