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■行政トピックス
1.中医協薬価専門部会 9月13日
2.中医協費用対効果評価専門部会 9月13日
■セミナー便り
1.費用対効果評価、効能追加に課題-ISPOR日本部会第13回学術集会-
2.認知症「25年前からの予防が非常に重要」-岡山大学脳神経内科学:阿部康二教授-
3.認知症発症前の介入で社会的コストを削減-MSD:ヤニー・ウェストハイゼン社長-
4.中和剤は適正な血栓塞栓症治療に貢献する-国立病院機構九州医療センター:矢坂正弘部長-
5.ロコモ認知度46.8%、調査開始以来初めて低下-日本整形外科学会:山﨑正志理事長-

■行政トピックス

1.中医協薬価専門部会 9月13日
ヒアリングで吉田JGA会長、「会社数減少は必然」

中医協薬価専門部会は9月13日、関係業界から意見聴取を行った。日米欧の新薬メーカー団体の要望項目の一丁目一番地は、やはり「新薬創出等加算」であり、そろって制度化を求めた。日本ジェネリック製薬協会(JGA)の吉田逸郎会長(東和薬品社長)は、「今後、集約化・大型化が進み、後発品の会社数・品目数が減少していくことは必然的な流れ」と明言。これまで中医協で出ていた後発品の品目数が多過ぎるとの批判に応えた。その上で、1.薬価の集約をせず、銘柄ごとの市場実勢価格を適切に反映 2.初収載の薬価は現行の水準を維持-などを改めて要望した。

2018年度薬価制度抜本改革に向け、年初から始まった薬価専門部会における第一ラウンドの議論で、「新薬創出等加算」がテーマとなったのは、6月14日。「対象範囲」と「企業要件」の各論点に対して、委員からは「革新的な新薬を対象とすべきであり、類似薬効比較方式Ⅱや、新医療用配合剤等は対象から外すべき」「平均乖離率は革新性を示す指標ではないため、見直すべき」「企業要件として、新薬開発投資比率等の指標を設けることや、達成度合いに応じて差を付けることを検討することも妥当」「企業要件として、国際共同治験における日本国内の治験症例数は重要」などの意見が出ていた。

この日、日薬連の多田正世会長(大日本住友製薬社長)は、「新薬創出等加算のコンセプトは、特許期間中の新薬の薬価維持によるイノベーションの推進であり、特許期間中の新薬の薬価はすべて維持されるべき」と主張。また企業要件については「新薬創出により軸足を置いた企業の取り組みを確認し、その状況に応じて評価を行うという枠組みに異論はない」と述べた。

これに対し、診療側委員から「先発品企業が関連会社・子会社に長期収載品を承継している事例があり、業界全体としてこの長期収載品への依存から脱却する気があるのか疑問である」(松本純一日医常任理事)、「そもそもイノベーションを評価するということであれば、どの業種でもそうだが、良いものができたからそれを高く評価するというのが当たり前であって、これから良いものをつくるからそのための費用を、というのは順番が違うのではないか」(今村聡日医副会長)との意見が出た。

このほか原価計算方式について、欧州製薬団体連合会のフィリップ・フォシェ副会長が「製造コストを基に算定される原価計算方式は医薬品の価値を評価するには限界がある」として、1.同一効能に対する薬物以外の治療法(薬物以外の治療費用を加える) 2.類似する疾患に対する治療薬・治療法(疾患背景等の類似性) 3.当該品目および類似薬の海外における価格参照-といった算定方式を選択肢に増やすよう要望したのに対し、幸野庄司委員(健保連理事)は「我々としては画期的な提案だと思う。抜本改革を機に選択肢の一つに入れてはどうか」と高く評価。

厚労省保険局の中山智紀薬剤管理官は「検討するに当たって過去の事例を基にということになるだろう。どのような算定の仕方があるのかという事例をそれなりに積み上げて精査していく作業は避けられず、今回の抜本改革に取り入れることはなかなか難しい」との見解を示した。

JGAの吉田会長は、政府の使用促進策で伸び続けてきた後発品数量について、政府目標の20年9月の80%達成後、低分子薬の特許切れの減少、多剤投与の適正化などにより、減少に転じる可能性が高いと指摘。その上で、「集約化・大型化を含め、後発品産業の構造転換への取り組みを行う必要がある」と強調した。これに対し、今村委員は「ずっと先の将来に段々集約していくといったように聞こえる。ユーザー側からはできるだけ早期に集約化・大型化をやっていただきたい」と求めた。

 

2.中医協費用対効果評価専門部会 9月13日
来年度改定時に価格調整へ、詰めの議論を開始

中医協費用対効果評価専門部会は9月13日、試行的導入における医薬品7品目の価格調整を18年度診療報酬改定時に実施することを目指し、評価基準の設定方法について議論した。同部会ではすでに、増分費用効果比(ICER)の値に基づき、5段階(とても悪い/悪い/受け入れ可能/良い/とても良い)で評価を行うこと、その具体的な値については、過去の支払い意思額調査および諸外国における評価基準を参考に設定することで合意していた。この日、厚労省は過去の4つの調査の概要、および諸外国の費用対効果評価の現状を示し、どれを参考にすべきか委員に意見を求めたが、結論を得るには至らなかった。

厚労省から、過去4つの調査を基に受諾確率曲線を引いた場合、どのような姿になるかといった具体的な検討素材は示されなかった。吉森俊和委員(協会けんぽ理事)は「そもそも論点を議論するためには具体的な絵姿を見る必要がある。材料がなく議論しろというのは乱暴である」と苦言を呈した。

また、参考とする諸外国の基準についても、厚労省は、「具体的な評価基準が公開されている国のうち、できるだけ医療体制や生活の状況等が日本と近い国の評価基準を参考とすることとしてはどうか」と提案するにとどめた。同省の説明によると、評価基準の公表を確認できたのは、英国、ポーランド、アイスランド、スロバキアの4カ国のみ。

安部好弘委員(日薬常務理事)は「英国を参考にするという方向が資料に出ていた」としたが、保険局の古元重和医療課企画官は「英国はそもそも税方式であって償還の可否判断に用いるなど、わが国とは仕組みとして極めて異なる」と説明。万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)は「英国は税方式であって日本の社会保険方式と相当違うということからすれば、本当に英国が良いかどうかということも考えられ、4カ国全部を比較することも議論を進める意味で必要と思う」と述べた。

 

■セミナー便り

1.費用対効果評価、効能追加に課題
-ISPOR日本部会第13回学術集会-

国際医療経済・アウトカム研究学会(ISPOR)日本部会第13回学術集会が8月31日に星陵会館で開催された。シンポジウム『費用対効果評価を政策にどう活かすか?〜各国におけるアプレイザルの工夫〜』では、白岩健(国立保健医療科学院)、五十嵐中(東京大学)、赤沢学(明治薬科大学)の各氏がそれぞれ英国、フランス、オーストラリアの状況について報告、国立保健医療科学院の福田敬氏は中医協総会、専門部会などでの最新の検討内容と課題を報告した。総合討論では日本はどのような総合的評価(アプレイザル)を行うべきかについて議論が交わされた。

各国の現況は、英国では分析-評価-最終決定のプロセスがアプレイザルであり、非公開が原則の4つの委員会において関係者間で活発に議論する。フランスでは償還割合は医療上の利益と疾患の重篤度から4つのレベル評価で決定し、価格は従来薬と比較して良い面があるかの追加的な医療上の利益を吟味して5つのレベル評価で決定するという2つのプロセスを持ち、いずれも最長で5年ごとに再評価を行う。償還割合と価格の決定においてはそれぞれにバッファーがあり、巧みに運用されている。また、費用対効果評価は価格決定ではなく価格調整に用いられ、ICERの閾値を先に決めておくことはない。オーストラリアは医薬品の償還可否については、企業から提出された資料と保健大臣から委託を受けた大学での再分析を諮問委員会において議論して判断する。その判断基準は推奨する、推奨しない、判断延期の3つである。ICERの閾値に明確な基準はない、との報告内容であった。

日本においては16年4月から医薬品・医療機器の費用対効果評価の試行的導入がなされており、すでに保険収載されている品目について保険償還価格への反映に活用することが定められている。諸外国と異なり、薬価制度・保険医療材料価格制度を有し、価格決定では中医協において透明性の高い議論がなされていることは、総合的評価を考慮する際に留意する必要がある。福田氏は、以上のことを踏まえると、費用対効果評価に対しては5段階評価とする場合の区分の目安値、結果のばらつきの反映方法、疾患などによる違いの取扱いが課題であるとした。さらに評価結果を反映させるタイミング、効能追加があった場合の対応、価格を上げる考えはないのかが新たに生じる課題であると結んだ。

総合討論では、シンポジスト、座長、フロアーから領域ごとにICERの閾値を決めるべき、QALY等の数値化は難しい、値ごろ感が必要、NICEが参考になる、事務局が機能すべきなど種々の意見が出された。座長の下妻晃二郎氏(立命館大学)から公的資金をどのように使うかの視点が重要であるとの指摘があった。

 

■セミナー便り

2.認知症「25年前からの予防が非常に重要」
-岡山大学脳神経内科学:阿部康二教授-

岡山大学脳神経内科学の阿部康二教授は9月13日、日本イーライリリー、日本医療政策機構、日本認知症予防学会が共催した認知症の早期診断・治療の実現と、認知症にやさしい社会づくりへ向けた提言白書「認知症の社会的処方箋」記者発表会で「75歳でアルツハイマー型認知症(AD)と診断されたとして、その方のADは25年前から始まっている。50歳から少しずつ始まり、70歳辺りで物忘れが強くなって、2〜3年、4〜5年して医者に行き、ADと診断される。75歳で分かって初めて治療しても相手はなかなか手ごわい。したがって25年の間の予防が非常に重要である」と語った。

阿部教授が理事を務める日本認知症予防学会では、正常な状態とAD予備軍であるMCI(軽度認知障害)の間の1次予防、MCIとADの間の2次予防、ADの進行および死亡までの3次予防に総合的に取り組んでいる。阿部教授は50歳からの認知症予防には、生活習慣病対策、ライフスタイルの見直し、サプリメント、認知症予防プログラム、予防カフェなどがあると紹介。その上で「医学的には検診であなたまだ症状が出ていないけれど、アミロイド(β)がかなりたまっていますよということが分かるようになってきているので、ライフスタイルや生活習慣病への注意と共に検診を受けるということもできる時代にはなってきている」と続けた。

阿部教授は65歳以上の高齢者2874万人のうち、明らかな認知症は440万人、MCIは380万人いるとした上で「できるだけ健常な方がMCIに行かないようにする。MCIになった方が本格的な認知症に行かないようにすることが大事」と強調。

認知症にはAD、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあり、岡山大学神経内科認知症外来全1554患者を対象とした調査では、全患者のうちADは62%、MCIは12%であった。年齢別に分けて見ると、全患者のうち後期高齢者(75歳以上)の割合は72.5%で、後期高齢者の中ではADは69%、MCIは11%を占めていた。阿部教授は「今後は後期高齢者が増える。国の認知症対策は主としてADの予防対策、あるいは治療対策になるということはこういうデータからも言える」とした。

なお、提言白書については東京大学大学院医学系研究科の近藤尚己准教授が発表。白書では認知症の症状があっても医療機関を受診したり、スクリーニング検査を受けたりしないことがほとんどであることなどを指摘。コミュニティを基盤にした認知症予防、発見、ケア、サポートの重要性を広めることや科学的根拠に基づいてコミュニティでの施策や早期診断・発見のプログラムを計画するなどが必要と提言した。

 

■セミナー便り

3.認知症発症前の介入で社会的コストを削減
-MSD:ヤニー・ウェストハイゼン社長-

在日米国商工会議所(ACCJ)と欧州ビジネス協会(EBC)がACCJ-EBC医療政策白書2017年版を発行したことを受け、両会主催の記者説明会が9月12日都内で開催された。MSDのヤニー・ウェストハイゼン社長は「予防、早期発見・早期治療の重要性」と題してプレゼンテーションを行い、認知症発症前の診断と早期治療の推進に触れ、「認知症発症前に治療介入し、発症を5年遅らせることができれば、米国では25年後の社会的コストを33%削減できる」と述べた。厚労省調査(2015年認知症対策総合研究事業研究報告書)によると、日本では認知症患者は400万人を超え、25年には700万人にまで増加し、社会的コストは14年14.5兆円から25年には19.4兆円にまで増えると推計されている。

ACCJ-EBC医療政策白書では大規模臨床試験によりADの早期段階での介入による効果が検証され、新薬の誕生が間近になると、大規模臨床試験と実臨床との乖離(診断基準、バイオマーカー検査へのアクセスなど)が生じる可能性、さらには新薬が上市された場合、早期治療介入による保険医療財政への影響が大きな問題となる可能性があると指摘している。 ▼認知症発症以前の状態に関する新たな疾患概念、診断基準の確立および情報の普及 ▼ADによる軽度認知障害(MCI)、無症候期ADを対象とした薬剤開発に関する国際的なガイダンス整備 ▼早期発見のための画像・バイオマーカー検査および早期介入の薬物治療に対する費用の保険償還といった政策課題に対処する必要があると提言した。

また、ウェストハイゼン社長はHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンにも触れ「積極的な接種勧奨が差し控えとなり4年以上が経過した。この状態がずっと長く続くと、日本がグローバルのHPV戦略の進展に追いつくのが非常に困難となることが懸念されるし、子宮頸がんの発症が増えてしまうかもしれない」と語った。

ACCJ-EBC医療政策白書は政策提言として ▼国民健康保険法を改正し、20〜40歳までのすべての女性に定期健康診断の一部として子宮頸がん検診を2年ごとに必須項目として提供すべきである ▼早急に子宮頸がんの受診率50%の目標を達成するために、子宮頸がんの啓発活動に対する予算を増額すべきである ▼包括的な子宮頸がん予防を行うために、現在日本で活用できる子宮頸がんに関する3つの最新技術、HPVワクチン、HPV遺伝子検査、液状検体細胞診(LBC)がどのように作用するかについて女性に教育を行うための予算を増額すべきである ▼検査精度の向上と再検査の減少を目指し、子宮頸がんと戦うための3つの最新技術、HPVワクチン、HPV遺伝子検査、そして、最も重要なLBCを行うことを積極的に推進すべきである-などを挙げている。

ACCJ-EBC医療政策白書は2年に1度発行される。17年版では41の項目について約200の政策提言を行っている。

 

■セミナー便り

4.中和剤は適正な血栓塞栓症治療に貢献する
-国立病院機構九州医療センター:矢坂正弘部長-

CSLベーリングはビタミンK拮抗薬服用中の出血傾向を速やかに是正する静注用人プロトロンビン複合体製剤ケイセントラの発売(9月19日)を控え、このほどプレスセミナーを開催。国立病院機構九州医療センター脳血管センター部長兼臨床研究センター部長、脳血管・神経内科科長の矢坂正弘氏が、ワルファリン服用患者の出血リスク管理におけるケイセントラの位置づけについて講演した。

厚労省データによると現在、日本では約125万人が血栓の形成を抑えるためにビタミンK拮抗薬(ワルファリン等)を服用している。ワルファリンは血液凝固因子の生成に寄与するビタミンKを拮抗阻害することにより、4つの血液凝固因子(第Ⅱ、第Ⅶ、第Ⅸおよび第Ⅹ因子)とプロテインC、プロテインSの産生を抑えて、血栓の形成を抑制する。一方で、ワルファリンを服用している患者では、血が止まりにくくなる抗凝固状態にあるため、重篤出血時や緊急手術などの際の出血の管理が重要とされている。これまでは、ワルファリン療養中の患者には、休薬もしくはビタミンKや新鮮凍結血漿が投与されてきたが、血液の凝固能が正常化するまでに半日以上を要することから救急時に対処できず、また、「新鮮凍結血漿は800〜1000mLを投与しないといけないが、ワルファリン服用患者は心臓の悪い患者も多く心不全の恐れがあった」(矢坂氏)という。医療現場からは、こうした課題を解決する薬剤が待ち望まれていた。

ケイセントラは、ワルファリン服用中の患者において欠乏する血液凝固因子を高濃度に含むとともに、ビタミンK依存性の凝固阻害因子であるプロテインCとプロテインSを含んでおり、補充することにより、血液凝固検査値であるPT-INR(プロトロンビン時間国際標準比)を速やかに是正する。

急性重篤出血患者216人を対象に、乾燥濃縮人プロトロンビン複合体(PCC)+ビタミンK投与群と血漿+ビタミンK投与群とを比較した海外第3相試験(3002試験)では、主要評価項目である投与後24時間までの止血効果において、PCC群72.4%に対し、血漿群65.4%(95%CI:-5.8,19.9、δ-10%)で非劣性を証明。共主要評価項目であるPT-INRの速やかな低下(投与後30分以内に同値1.3以下へ低下)が認められた患者割合では、PCC群62.2%に対し、血漿群9.6%(95%CI:39.4,65.9)となっている。また、緊急の外科手術または侵襲的処置を要する患者181人を対象にした3003試験でも、PT-INRの速やかな低下が認められるとともに、投与開始から手術または処置開始までの時間(中央値)を比べると、PCC群3.6時間、血漿群8.5時間と優位性を示した。さらに、これらと同じ有効性評価項目で日本人患者11人(急性重篤出血群6人、手術・処置群5人)を対象に行った国内第3相試験(3004試験)でも効果・安全性を確認。投与後30分のPT-INR中央値は、ベースラインの3.13から1.15に低下。因果関係が否定できない重篤な有害事象は手術群で2例あり、心房血栓症と脾臓梗塞であった。これらの結果から矢坂氏は「ワルファリンの強力な是正効果があることが日本人でも確認されている」とした。

なお、ケイセントラは製造過程で、血漿の感染症抗体陰性検査の上、加熱処理、ナノフィルターによるウイルス除去をしており、安全面でも凍結血漿より利点がある。薬価は、凍結血漿が800mL3万5825円に対し、ケイセントラは静注用500が3万5004円、同1000は6万5225円。

現在、抗凝固薬で中和剤があるのはダビガトランのみ。今回、血栓塞栓症を適応に持つワルファリンに初めて中和剤が出たことによる他のDOACからの投与切り替えの可能性について矢坂氏は「そういう側面もあるが、頭蓋内出血でみるとDOACの方が少なく有利という面もある。ただ、ワルファリンは60年近く使われていて薬価も安く、幅広い患者に使えるので、今後も広く使われていくのでは」と語るとともに、中和剤が出たことでワルファリンに戻るかどうかはわからないが、「残るDOACも早く中和剤の開発を進めなさいというのが社会のニーズだと思う」とした。

さらに、中和剤が出た安心感により、出血性合併症を恐れて行っていた基準外減量をしないで使う動きが高まると指摘する。「一人でやっている開業医は自分の患者で出血を出したくない気持ちが強い。そのため、低め低めを狙ってPR-INR1.6(管理目標値は1.6〜3.0)を超えなくてはいけないのに1.3〜1.4で抑え、脳梗塞を起こしている現状もある。そこに対して、リバースできるとなると、そこのハードルが緩んで適正な治療に貢献する」。

ケイセントラは、欧州では90年代から標準的療法に位置付けられており、米国でも13年に承認され、国内では日本脳卒中学会から「国内外の医療環境の違い等を踏まえても国内における有用性が期待できると考えられる」製剤として、早期開発の要望が提出されていた。その後厚労省からの開発要請を受け、CSLベーリングは12年4月に開発に着手、今年3月30日に承認。希少疾病用医薬品に指定されている。

 

■セミナー便り

5.ロコモ認知度46.8%、調査開始以来初めて低下
-日本整形外科学会:山﨑正志理事長-

日本整形外科学会の山﨑正志理事長(筑波大学医学医療系整形外科教授)は9月7日、同会主催の記者会見でロコモティブシンドローム(運動器症候群、略称ロコモ)の認知度(言葉は聞いたことがある)が17年46.8%であったと報告した。これは運動器の10年・日本協会が実施した20〜60代以上の男女1万人を対象としたインターネット調査によるもの。調べによると調査開始以来、認知度が前年を下回ったのは初めて。山﨑理事長は22年までに「80%にしたい」と目標を語った。

山﨑理事長によると、ロコモティブシンドロームとは運動器の障害により移動能力の低下を来した状態。進行すると、要支援・要介護となるリスクが高くなる。日整会によると、ロコモの主な原因疾患としては変形性膝関節症、変形性腰椎症、骨粗鬆症があり、変形性膝関節症の国内罹患者数は2530万人、変形性腰椎症3790万人、骨粗鬆症(腰椎)640万人、骨粗鬆症(大腿骨頚部)1070万人と推計されている。一方、生化学工業など製薬企業によると、変形性膝関節症の年間受診患者数は700〜800万人と推計される。運動器疾患による要介護リスクの上昇やロコモティブシンドロームの概念が普及すれば、潜在患者の掘り起こしにもつながるだろう。

日整会の冨士武史広報・渉外委員会担当理事によると、ロコモ普及に当たっては青年期や壮年期への浸透が課題になっている。会見で冨士理事は「70歳以上の女性になると認知度は非常に高い(17年77.6%)。一部の方がロコモになっている年代に関してはかなり知られている。最初は私たちもそうした方々を対象にして、放っておくと悪くなるので運動しましょうとアプローチしていた。しかし、青壮年でも40cmの高さから片脚で立ち上がるテスト(Try!40cm)でロコモ予備軍は見つかるし、青壮年の年代から意識して予防していかなければならないのに、そこに認知されていない」と説明。メタボリックシンドロームの認知が広がり生活習慣病対策がなされるようになったことと同様、ロコモティブシンドロームの概念が広まり適切な運動や食事を通じた運動器疾患対策が行われるようになることが期待される。

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