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■行政トピックス
1.中医協費用対効果評価等合同部会 6月13日 本格実施へ検討再開、支払意思額調査「実施せず」で一致
■記者会見
1.売上高400億円計画「軌道に乗っている」-CSLベーリング:ジャン・マルク・モランジュ社長-
■セミナー便り
1.オシメルチニブ、1次治療での有用性に期待-四国がんセンター:野上尚之外来部長-
2.ヤーズフレックス連続投与のメリットを解説-聖路加国際病院:百枝幹雄副院長-

■行政トピックス

1.中医協費用対効果評価等合同部会 6月13日
本格実施へ検討再開、支払意思額調査「実施せず」で一致

中医協費用対効果評価専門部会等合同部会は6月13日、薬価や医療材料等の価格調整に費用対効果評価を用いることを制度化するための具体的な検討に着手した。この日は、実際に幾ら費用がかかったら費用対効果が悪いと判断され、価格調整を行うのか「価格調整にかかる基準値の設定」について検討を行い、現時点で国として基準値の設定を目的とした新たな「支払い意思額調査」は実施しないことが決まった。これにより当面、昨年度の試行的導入で設定した基準値<500万円(1000万円)/QALY>を引き続き用いる方向になった。

合同部会では、費用対効果評価を用いた薬価や医療材料等の価格調整の本格実施に向け、具体的内容を検討し、18年度中に結論を得ることになっている。基準値の設定をめぐっては、厚労省は昨年度、一般人を対象とした「支払い意思額調査」を実施しようと試みたが、正確性の観点やバイアスがかかるなど懸念する声が委員から続出したため、断念した。

このため、医薬品・医療機器13品目を選定して行った17年度の試行的導入では、過去(2010年)に行われた支払い意思額調査の結果や、英国の基準を参考に、500万円(1000万円)/QALYを基準値として価格調整を行うことを決めた。そして、新たな支払い意思額調査の実施については、18年度の制度化に向けた議論の中で改めて検討することになった。

この日の合同部会で、費用対効果評価専門部会の参考人を務める福田敬氏(国立保健医療科学院)は、厚労省が科学的事項を検討するために設けた12人の有識者で構成する検討チームが出した結論を報告。支払い意思額調査について「現時点で国として基準値の設定を目的とした新たな調査を実施する必要性は低いと考えている」と発言。

また、基準値については「試行的導入で設定した際の支払い意思額調査は07年のものだったが、07年と17年の名目GDPの変化やCPI(物価水準)、賃金水準を比較しても大きく変化していないことから、試行的導入時の基準値を使うことは妥当ではないかという結論になった」と述べた。

これに対し、委員からは支払い意思額調査の実施について「従来から反対していた。診療側としてこのような結論に達したことに異論はない」(松本純一日医常任理事)、「必要性が低いという点については同意する」(幸野庄司健保連理事)など、異論は出なかった。

また、基準値については、「諸外国の情勢を踏まえながら水準を定期的に検証し、妥当性、有効性の確認を行いつつ、制度の高度化を図っていく必要がある」(吉森俊和協会けんぽ理事)、「当面の対応として引き続き現行基準を用いることは、18年度中に制度に関する議論の結論を確実に得ることを優先する観点からも良いのではないか」(宮近清文経団連部会長代理)などの意見が出た。古元重和医療課企画官は「試行的導入で設定した基準値については正当化できる水準であることが確認された」と結論付けた。

 

■記者会見

1.売上高400億円計画「軌道に乗っている」
-CSLベーリング:ジャン・マルク・モランジュ社長-

CSLベーリングのジャン・マルク・モランジュ社長は6月14日の記者会見で21年6月期までに売上高400億円を達成する計画について「軌道に乗っている」と語り、年平均10%以上の成長が続く見通しを示した。

2018年6月期の売上高は前期比14%増となり、3年連続の2ケタ成長を示した。成長を牽引しているのは、16年11月発売の血友病B治療薬イデルビオン、17年9月発売のビタミンK拮抗薬(ワーファリンなど)投与下の出血傾向の抑制に適応を持つケイセントラ、17年12月発売の血友病A治療薬エイフスチラだ。

特にイデルビオンは17年12月に14日処方制限が解除されて以降、患者への処方が拡大し、現在は200人近くに処方されているという。モランジュ社長は「我々の想定をはるかに上回る形で受け入れられている。血友病B治療薬としては今年末までにマーケットリーダーになると考えている」と述べた。

2019年6月期はケイセントラとエイフスチラが通期で業績に寄与することからさらなる成長を見込む。ケイセントラについては「標準治療になる」と語ったほか、エイフスチラは競合品が登場する中でも「エイフスチラの治療によって大きなベネフィットを受ける患者がいる」と話した。中外製薬の血友病A治療薬ヘムライブラは18年5月にインヒビター保有患者に対する適応で発売された。インヒビターを保有していない患者に対しては18年4月に国内承認申請を行っている。21年6月期までの売上げ目標はヘムライブラの登場を織り込んだ上での計画という。

パイプラインでは、19年6月期に免疫グロブリン製剤ハイゼントラとブリビジェンについて、慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP、指定難病)の適応を取得する計画だ。両剤とも欧米でCIDPの承認を取得している。同社によると国内の患者数は5000~1万3000人と推計される。海外では急性冠症候群(ACS)を対象にCSL112の第3相を開始した。国内の開発に関しては検討中としている。

 

■セミナー便り

1.オシメルチニブ、1次治療での有用性に期待
-四国がんセンター:野上尚之外来部長-

アストラゼネカは6月14日、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんで最適な1次治療を考えると題してメディアセミナーを開催した。

近畿大学医学部の光冨徹哉教授によれば、Ⅳ期非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療は、まずドライバー変異の有無を確認し、EGFR遺伝子変異がある場合はEGFR チロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)を使う。EGFR遺伝子変異は、日本人の肺腺がん患者の約半分、肺がん全体では3分の1の患者が有している。現在1次治療で認められているEGFR-TKIには、第1世代のゲフィチニブ(イレッサ)、エルロチニブ(タルセバ)、第2世代のアファチニブ(ジオトリフ)がある。

EGFR遺伝子変異のほか、ALK転座、ROS1転座、BRAF変異といったドライバー変異がいずれも認められない場合は、PD-L1≧50%の患者にはPD-L1阻害剤ペムブロリズマブ、<50%ではプラチナ2剤の細胞傷害性抗がん剤が使われている。

EGFR-TKIの問題は、一旦は非常に高い奏効率を示すものの、ほぼすべての症例で獲得耐性を生じて病勢が進行してしまうことだ。獲得耐性のメカニズムは、「コドン790のスレオニンがメチオニンに置換する二次変異T790Mが50~60%と最も多い」(光冨氏)。四国がんセンターの野上尚之外来部長/呼吸器内科医長はこの割合につき「論文によって多少の数字は違うが、耐性獲得後に組織を調べると50~60%にT790Mという新たな変異が出現していることが繰り返し報告されている」と紹介した。アストラゼネカのオシメルチニブ(タグリッソ)は、このT790M耐性変異を阻害するよう設計された第3世代のEGFR-TKIで、現在国内では2次治療以降での使用が認められており、同社は昨年11月に、1次治療の適応追加を申請。厚労省から優先審査指定されている。欧米では1次治療の承認を取得済みだ。

このオシメルチニブの1次治療における有用性を検証しているのがFLAURA試験である。標準治療であるゲフィチニブあるいはエルロチニブと比較した結果、PFS中央値はオシメルチニブ群の18.9カ月に対して、標準治療群10.2カ月と2倍近い延長を示した(P<0.001)。OSは中間解析ではP=0.007で統計学的有意差は付かなかったが、光冨教授はPFS、TFST(2次治療開始までの期間)、PFS2(2次治療までのPFS)などの評価項目のデータを示しながら、「非常に有望と言えるかもしれない」と期待を込めて、19年に予定されている本解析の結果を待ちたいとした。

オシメルチニブを2次治療で使う場合はT790M変異の証明が必要となるが、野上氏は、EGFR-TKI治療中に病勢進行した症例におけるT790M変異検査の実態を調査したREMEDY試験の結果、T790Mを検出した症例は61/236、25.8%にしか満たなかったことを紹介した。つまり、50~60%の確率でいるはずのT790M変異陽性患者のうち、現在の検査ではおよそ半分以下しか検出できておらず、耐性獲得後にオシメルチニブを投与すればOS延長などの効果が期待できる患者にオシメルチニブを投与できていない可能性があるというのだ。今、1次治療でのEGFR-TKI投与は一般病院でもかなり普及している。そうして耐性が出た場合、「大学やがんセンターなどの施設では外科的手法を用いてでも再生検してT790M検出に努力するが、一般病院などでは再生検せずに、経験則で別のTKIに変えてみたりということが行われている」と野上氏は危惧する。「1次治療から使用可能となれば、こうした問題は考えなくても良くなる」(光冨氏)というのだ。

今年6月に開催されたASCO2018(米国臨床腫瘍学会)では、EGFR変異陽性進行NSCLC患者の1次治療としてゲフィチニブと化学療法2剤(カルボプラチン+ペメトレキセド)の併用療法はゲフィチニブ単剤に比べPFS、OSを有意に延長させるとの発表があった。これについて野上氏は、当面の臨床では役に立つかもしれないとしつつ、「オシメルチニブが1次治療で使えるようになればゲフィチニブと化学療法の併用が使われることは少ないだろう」との見通しを示した。「ゲフィチニブであのような結果が出せたのであれば、より毒性が軽いであろうオシメルチニブを化学療法と併用すればもっと併用しやすいであろうし、もっと良い結果が得られるかもしれない」との印象を持ったからだという。そしてオシメルチニブと化学療法の併用が次のテーマであり、その方向に向かっていくだろうと結んだ。

 

■セミナー便り

2.ヤーズフレックス連続投与のメリットを解説
-聖路加国際病院:百枝幹雄副院長-

聖路加国際病院の百枝幹雄副院長は5月31日、バイエル薬品主催の子宮内膜症に伴う疼痛改善剤および月経困難症治療剤ヤーズフレックスに関するメディアセミナーで「連続投与の何が良いかというと、不正出血が起こることもあるが、圧倒的に28日に1回月経を起こしているよりは、月経の回数が少ないので、一定期間に起こってくる痛みにはうってつけだし、術後の再発も原理的に月経が起きないほうが再発は少ないので、連続投与は周期的な投与に比べて、チョコレートのう胞(卵巣にできるのう胞)や月経痛・その他の痛みの再発が少ないことが示されている」と話した。

ヤーズフレックスは17年4月に発売。10年発売のヤーズと異なり、子宮内膜症に伴う疼痛の改善に対する適応がある。併せて最大120日間の連続投与が可能。子宮内膜症は子宮以外の場所(卵巣など)に子宮内膜組織ができる疾患で、子宮内膜組織が周辺組織と癒着して痛みや不妊の原因になる。バイエル薬品によると子宮内膜症の潜在患者数は国内で260万人と推計されている。

講演で百枝副院長はバイエル薬品が2月に実施した20~39歳の月経がある女性1035人を対象とした「子宮内膜症および月経マネジメントに関する意識・実態調査」についても解説。調査で子宮内膜症を発症するリスクが過去よりも上がっていると正しい答えを選んだのは585人(56.5%)。この585人に対し、発症リスクの増加の理由を尋ねたところ、一生を通して月経の回数が著しく増えたためと回答したのは15.0%にとどまった。百枝副院長は「月経の回数が増えているためだと理解している人は少ない。なんとなく食生活、やせ、ホルモンバランスと答えている人が多い。誤った認識を持っている」と注意を促した。

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