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■記者会見
1.薬価引き下げ「手頃な標的にされている」-PhRMA:パトリック・ジョンソン在日執行委員長-
■学会レポート
1.ポリファーマシー対策、「医師・薬剤師がセンターライン」-東大大学院:秋下雅弘教授-
■セミナー便り
1.RCTとRWE相補でより正確な医療提供-慶應義塾大学:香坂俊専任講師-
2.アトピー性皮膚炎に国内初の抗体薬-日本医科大学大学院:佐伯秀久教授-

■記者会見

1.薬価引き下げ「手頃な標的にされている」
-PhRMA:パトリック・ジョンソン在日執行委員長-

米国研究製薬工業協会(PhRMA)在日執行委員会のパトリック・ジョンソン委員長(日本イーライリリー社長)は5月16日の会見で研究開発型製薬産業ビジョンを発表した。(1)患者に革新的な医薬品を安全かつ速やかに届けるべく先進的な薬事規制の下でイノベーションを推進すること (2)持続可能な国民皆保険制度の下で患者の革新的医薬品へのタイムリーかつ適切な負担によるアクセスの確保を推進すること (3)エビデンスに基づく幅広い関係者の声を取り入れた政策決定を推進すること-の3本柱を通じて健康長寿社会の実現に貢献する。

ジョンソン委員長は会見で「医薬品があるからこそ健康長寿社会が実現する。それによって医療費が最終的に削減できる」と強調。(1)がん患者の81%が傷病休業後1年以内に復職していること(2)認知症治療薬が成功すると介護費用など社会的コストが軽減できること(3)糖尿病治療により将来の透析患者を減らすことができること-を例に挙げた。

にもかかわらず、医薬品は社会保障関係費の伸びを抑制するための「手頃な標的にされている」とジョンソン委員長は指摘する。16年度から18年度の3年間、社会保障関係費の伸びを毎年5000億円程度に抑制するために必要な削減額4400億円のうち、3711億円が薬価引き下げによるものだった。

会見では薬価制度抜本改革の見直しを求めた。抜本改革案は中医協の場で業界に意見表明の機会が与えられたが、案の最終段階の時期であった。ジョンソン委員長は「もっと早い段階で議論に参加できるようにしてほしい」と要望している。また新薬創出等加算の対象品目に関しては引き続き、新規性の乏しい品目(類似薬効比較方式2、配合剤、ラセミ体)を対象品目から除外するネガティブリスト化を求めている。

 

■学会レポート

1.ポリファーマシー対策、「医師・薬剤師がセンターライン」
-東大大学院:秋下雅弘教授-

東大大学院医学系研究科の秋下雅弘加齢医学教授(日本老年医学会副理事長)は5月13日、都内で開かれた第2回日本老年薬学会学術大会で、「ポリファーマシー対策の課題と展望」をテーマに特別講演し、「医師と薬剤師がセンターラインとしてワークしなければならない」と述べ、診療報酬改定による後押しや、研究開発代表者として参画したAMED研究班の「ポリファーマシー見直しのための医師・薬剤師連携ガイド」の活用により、さらに対策が進むことに期待を示した。

秋下教授は、18年度診療報酬改定で「薬剤総合評価調整加算(250点、退院時に1回)」の評価対象に、地域包括ケア病棟が追加されたことを「かなり大きい」と評価。同加算は、「入院患者に対する減薬」を評価するもので、16年度改定時に新設された。

具体的には、入院時に6種類以上の内服薬が処方されている患者に対して、処方内容を総合的に評価した上で調整し、退院時に2種類以上減少した場合に250点を退院時に算定できる。

16年度改定時には、地域包括ケア病棟については「在宅復帰支援機能を有するので、内服薬の管理、調整についても包括された機能と考えてよいのではないかと整理した」(17年12月1日、中医協総会で迫井正深医療課長)ことから、同加算の算定対象から外れた。

改定後に日本病院薬剤師会が実施した調査から、地域包括ケア病棟における減薬への積極的な取り組み実績が明らかになり、多剤投薬の適正化を一層推進する観点から、18年度改定で、同病棟を算定対象に含めることが決まった。

秋下教授は「少し長く入院できるところでこの問題に取り組めるということは、危険な減薬というものもあるが、時間をかけてゆっくりやっていくことができるようになることを意味する」と評価した。

また、18年度改定で新設された「服用薬剤調整支援料(125点、月1回)」については、「大切な点数」とコメント。これは、外来患者に対する減薬(6種類以上が2種類以上減少)を評価する「薬剤総合評価調整管理料(250点、月1回)」を算定する医療機関と連携して、医薬品の適正使用に取り組む保険薬局を評価するもの。

具体的には、6種類以上の内服薬が処方されていた外来患者について、処方医に対して、保険薬剤師が文書を用いて提案し、2種類以上減少した場合に125点を月1回算定できる。秋下教授は「医療機関側も250点を算定でき、両者にインセンティブが付く。やっと医師と薬剤師が普通にかかわりあっていける」と評価した。

こうした制度的後押しに加え、AMEDの研究班では「ポリファーマシー見直しのための医師・薬剤師連携ガイド」を作成したことを紹介。「外来、入院、介護施設、在宅医療の4シーンごとに、医師と薬剤師のそれぞれのアクションチャートを作ったのが一つの肝。これから何とかしなければならない診療所と保険薬局との関係を特に重視した内容だ」と説明した。薬局薬剤師に対しては「処方せんだけ見て考えるというスタイルでは駄目で、まず患者の方を見ていただきたい」などとアドバイスした。

 

■セミナー便り

1.RCTとRWE相補でより正確な医療提供
-慶應義塾大学:香坂俊専任講師-

アストラゼネカは5月15日に「リアルワールドデータから見える今後の糖尿病治療の可能性」と題するメディアセミナーを開催し、慶應義塾大学医学部循環器内科の香坂俊専任講師がリアルワールドエビデンス(RWE)研究であるCVD-REAL2の結果を解説した。

CVD-REAL2は日本を含む世界主要3地域(アジア太平洋、中東、北米)の40万例超の2型糖尿病患者を対象に、SGLT2阻害剤での治療による心血管イベント発生のリスクを、他の血糖降下薬との比較で評価する大規模なRWE試験である。SGLT2阻害剤の内訳は、ダパグリフロジン(フォシーガ)が最多の74.7%で、以下エンパグリフロジン(ジャディアンス)9.0%、イプラグリフロジン(スーグラ)8.3%、カナグリフロジン(カナグル)4.4%、トホグリフロジン(デベルザ)3.0%、ルセオグリフロジン(ルセフィ)1.0%となっていた。

このデータベース(DB)研究の大きな特徴は各国のアウトカムと同時に全体のアウトカムを示していることだ。

全体および日本の結果は、SGLT2阻害剤は他の血糖降下薬に比べてすべてのエンドポイントでリスクを低下させたというものだった:全死亡49%(日本人44%)、心不全による入院36%(25%)、全死亡または入院の複合解析40%(35%)、心筋梗塞19%(25%)、脳卒中32%(34%)。

ただし香坂氏はこのRWE研究について、「エンドポイントを心不全、死亡にしているが、SGLT2阻害剤の効能効果はあくまで2型糖尿病であり、心不全や死亡に対する適応はない。その適応を積極的に拡張しようとするものではない」と釘を刺した。

RWDでは未知の交絡因子が残存している可能性を否定できないし、稀な合併症や感染症などの安全性については検証していない。さらにCVD-REAL2の観察期間は平均約1年と比較的短く、それ以上のことは結論が出せないからだ。

こうした限界を踏まえた上で、「RCTで検証された結果が日本人を含むRWの患者で再現できたことは循環器領域では極めて珍しく、CVD-REAL2の結果は実臨床のより広い患者集団にも同様の効果が期待される可能性を示唆している」と述べ、「RCTとRWEが相補的な役割を果たすことでより早いペースでより正確な医療を行うことができる時代に入った」と評価した。

CVD-REAL2は単独で積極的な適応拡大を目指すものではないが、アストラゼネカはダパグリフロジンの育薬の一環としてダパケアプログラムと呼ぶ統合的なプログラムを推進している。CVD-REAL2を含むCVD-REAL2はDECLARE-TIMI58と並び同プログラムの中で重要なスタディとしての位置づけだ。DECLARE-TIMI58は1万7160人の2型糖尿病患者をダパグリフロジンとプラセボで1対1に割り付けた大規模な心血管アウトカム試験で、今年後半の結果発表が予定されている。さらに、心不全の悪化および心血管死の発生率を検討するアウトカム試験DAPA-HF試験、腎疾患および心血管による死亡率を検討するアウトカム試験DAPA-CKD試験も昨年2月に開始した。

いずれの試験も糖尿病非罹患者も対象患者として組み入れており、適応追加を目指したものだ。

 

■セミナー便り

2.アトピー性皮膚炎に国内初の抗体薬
-日本医科大学大学院:佐伯秀久教授-

日本医科大学大学院皮膚粘膜病態学の佐伯秀久教授は5月8日、サノフィ主催のアトピー性皮膚炎(AD)治療薬デュピクセントのメディアセミナーで「IL-4、IL-13というADの病態を考える上で重要なサイトカインをピンポイントで抑える薬」であることから「なかなか上手く治療できなかった重症・難治のAD患者に対して恩恵をもたらす可能性がある」と述べた。

ADはかゆみのある湿疹を主な病変とする疾患で、Th2細胞(ヘルパー2型T細胞)から放出されるIL-4、IL-13といったサイトカインが(1)皮膚バリアの低下・破壊 (2)炎症の促進 (3)痒みの誘発・増強-を引き起こすと考えられている。薬物療法+スキンケア+悪化因子への対策が標準治療となっており、(1)には外用の保湿剤 (2)にはステロイドやタクロリムスといった外用の抗炎症剤 (3)には抗ヒスタミン薬が使用されている。これらの治療で効果が不十分な場合は、シクロスポリン併用もしくは紫外線併用療法が行われるという。

佐伯教授は、シクロスポリン効果不十分・不耐用の成人AD患者を対象とした海外第3相CAFÉ試験でデュピクセント+ステロイド外用薬の併用療法がプラセボ+ステロイド外用薬に対して主要評価項目のEASI-75達成率で統計学的に有意な改善を示したことを紹介。EASIスコアとはADの評価指標で4つの身体部位(頭頸部、体幹、上肢、下肢)でそれぞれ皮膚症状の程度(重症度)と面積を掛け合わせてスコア化したもの。治療前よりEASIスコアが75%以上低下したことをEASIスコア-75達成とする。

この結果から佐伯教授は「私が個人的にまずデュピクセントを使ってみたいと思っているのは、重症・難治の患者でシクロスポリンを使ってもなかなかうまくいかない、あるいはうまく使えない方だ」と話した。

デュピクセントはADに対する国内初の抗体薬。他社ではIL-31受容体抗体ネモリズマブ、IL-13抗体トラロキヌマブ、IL-13抗体レブリキズマブなどの研究開発が進められている。皮膚科領域では乾癬治療薬として抗体薬が次々と登場し、患者のQOL向上に寄与してきた。ADでも同様に患者のアンメットニーズを満たすことが期待される。

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