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■記者会見
1.iPS細胞由来の心不全治療「20年に臨床研究開始予定」-ハートシード:福田恵一社長-
2.オンコロジー領域「強い資産と戦略がある」 -ベーリンガーインゲルハイム:ミシェル・ペレイノベーションユニット担当取締役-
■セミナー便り
1.肺がん治療薬「就労にも貢献」-米メルク:ケネス・C・フレージャーCEO-
2.慢性リンパ性白血病の分子標的薬「治癒も視野に」-九州大学大学院医学研究院病態修復内科:赤司浩一教授-
3.脊髄性筋萎縮症(SMA)治療は「新時代に」 -東京女子医科大学臨床ゲノムセンター:齋藤加代子所長-

■記者会見
1.iPS細胞由来の心不全治療「20年に臨床研究開始予定」-ハートシード:福田恵一社長-
2.オンコロジー領域「強い資産と戦略がある」-ベーリンガーインゲルハイム:ミシェル・ペレイノベーションユニット担当取締役-
■セミナー便り
1.肺がん治療薬「就労にも貢献」-米メルク:ケネス・C・フレージャーCEO-
2.慢性リンパ性白血病の分子標的薬「治癒も視野に」-九州大学大学院医学研究院病態修復内科:赤司浩一教授-
3.脊髄性筋萎縮症(SMA)治療は「新時代に」-東京女子医科大学臨床ゲノムセンター:齋藤加代子所長-

 

■記者会見

1.iPS細胞由来の心不全治療「20年に臨床研究開始予定」
-ハートシード:福田恵一社長-

慶応大学医学部発再生医療ベンチャーのハートシードの福田恵一社長(慶応大学医学部循環器内科教授)は11月22日、都内で開催した記者会見で重症心不全に対する再生医療等製品HS-001(他家iPS細胞由来純化心室筋特異的心筋細胞)について、「2020年中にはファースト・イン・ヒューマンが行われるだろう」と見通しを示した。

HS-001は免疫不全マウスやサルなどを用いた前臨床試験を実施。この結果に基づき、19年5月に慶応大学の特定認定再生医療等委員会に臨床研究の提供計画を提出し、現在、審査中になっている。この委員会を通過した後、厚生科学審査会の審査を経て、臨床研究が開始される予定だ。

目標とする開発タイムラインについて、福田社長は20年中にヒトへの初めての投与となる医師主導臨床研究(3例)を開始し、引き続き20~21年に企業治験を開始する予定とした。治験用心筋細胞の製造はニコン・セル・イノベーションが行う。

また、会見で約28億円のシリーズB資金調達を実施したことを報告。既存投資家のアステラス・ベンチャー・マネジメントLLCの他、新規投資家としてSBIインベストメント、JMDC、ジーンテクノサイエンス、ニッセイ・キャピタル、SMBCベンチャーキャピタルが出資した。資金はHS-001の企業治験の実施費用、海外展開費用、人材採用費などに充てる。

HS-001は、日本人で最も頻度が高いHLAタイプ(白血球の型)を持つiPS細胞を、心室筋特異的な心筋細胞に分化誘導した後、未分化iPS細胞や心筋以外の細胞を除去し、高度に純化精製したもの。心筋細胞の生着率を高めるために、1000個程度の塊(心筋球)にした。心臓に直接移植し、移植心筋の収縮が作用し、重症心不全、特に収縮不全の重症心不全の改善が期待される。

他社では大阪大学発のベンチャー企業クオリプス社と第一三共がiPS細胞由来心筋シートの商業化を目指している。ハートシードがシートではなく心筋球を選んだ理由について、福田社長はヒトの心臓の周囲には大量の脂肪が付着していることを挙げ、「私は心臓の筋肉の中に移植しなければならないと考えた。外側に貼るという考えもあるが、私はこれがベストだと考えた」と語った。

福田社長によると、ステージDの難治性心不全の患者は日本に数万人と推定されるが、現行では60歳以下の一部の症例に心臓移植(年間50例)や補助人工心臓(年間200例)が実施され、大多数の症例に有効な治療法はない。米国ではステージDの難治性心不全の患者は20万人と推定されている。

 

■記者会見

2.オンコロジー領域「強い資産と戦略がある」
-ベーリンガーインゲルハイム:ミシェル・ペレイノベーションユニット担当取締役-

ベーリンガーインゲルハイムのミシェル・ペレイノベーションユニット担当取締役は11月28日、都内で開催した来日記者会見で、オンコロジー領域について「製品をたくさん出している会社とは言えないかもしれないが、強い資産と戦略がある」と語った。同社が上市している抗がん剤はEGFR-チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)ジオトリフ(アファチニブ)やTKIオフェブ(ニンテダニブ)の2製品にとどまるが、第1相試験にはがん細胞標的療法とがん免疫療法の製品が複数ある。

がん細胞標的療法では、がんと関連が深いβ-カテニン、MYC、KRAS、p53を標的として研究開発を進めている。会見でペレ取締役はその一例としてPAN-KRAS阻害剤BI-3406を紹介。BI-3406はKRAS変異の中でもG12D、G12V、G12C、G13DなどG12変異かG13変異かに関わらず感受性が高いことが特長。毎年160万人以上の肺がん、消化器がん患者にKRAS変異が見つかる。

がん免疫療法では、抗PD-1抗体が第1相試験を実施中で、18年に買収したオーストリアのViraTherapeutics社の腫瘍溶解性ウイルスや19年に買収したスイスのAMAL Therapeutics社のがんワクチンを組み合わせる。ペレ取締役は「(免疫細胞が浸潤していない)コールドチューモアーをホットチューモアーにしたい」と狙いを解説。「全てのがん種においてホットチューモアーは20%しかない。残りの80%に効く治療薬を目指している」と語った。

 

■セミナー便り

1.肺がん治療薬「就労にも貢献」
-米メルク:ケネス・C・フレージャーCEO-

米メルクのケネス・C・フレージャーCEOは11月6日、MSDとEIU(英エコノミスト誌調査部門)共催のメディアセミナー「日本における肺がんアウトカムの更なる向上を目指して」で「我々の義務として、肺がん患者の現在の生活の状況を更に向上させるとともに、今後も新薬が必要な患者に応えていく必要がある」と語った。

フレージャーCEOは肺がん治療において分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤が登場し、世界的に患者や家族に「大きなインパクトが出てきている」と強調。「がんサバイバーや介護者が仕事を続ける上での支援にもなっている」とした。

その上で「我々は幅広いディスカッションや医療政策のアジェンダについても貢献し、さらにより緊密なコラボレーションを政府やその他の関係者との間で進め、その中で貢献することを希望している」と述べた。

セミナーでは近畿大学医学部外科学教室呼吸器外科部門の光冨徹哉主任教授が肺がん治療の現状について「分子標的薬やがん免疫療法が大きなトピックスになっている。肺がんになった方も治るような時代が来ることを目指して頑張っているところだ」と説明。アウトカムの更なる向上に関しては、兵庫県立がんセンターの里内美弥子副院長が治療の進歩だけでなく「医師によってガイドラインに基づく治療ができていないということがあるかもしれないので、均てん化されていくことが大事だ」と話した。

 

■セミナー便り

2.慢性リンパ性白血病の分子標的薬「治癒も視野に」
-九州大学大学院医学研究院病態修復内科:赤司浩一教授-

九州大学大学院医学研究院病態修復内科の赤司浩一教授は11月27日、アッヴィ合同会社主催の再発/難治性の慢性リンパ性白血病(CLL)および小リンパ球性リンパ腫(SLL)に対するBCL-2阻害剤ベネクレクスタ(一般名ベネトクラクス)に関するメディアセミナーで、相次ぐ分子標的薬の登場により、「完全にCLLを治すことも視野に入ってきつつある点が私たちにとって面白いところだ」と語った。

アルキル化薬(シクロホスファミド)やプリン拮抗薬(フルダラビン)の時代を経て、2010年ころに化学免疫療法(化学療法+抗CD20抗体)が登場し治療の主流になった。その後、BTK阻害剤イムブルビカ(イブルチニブ)、ベネトクラクスが承認され、米国ではPI3K阻害剤も承認されている。こうした中、赤司教授は、化学免疫療法から分子標的薬の時代へと変化しつつあると指摘。分子標的薬の併用療法の開発にも期待を示した。分子標的薬の使い分けに関しては「症例の積み重ねと研究次第」と語った。

CLLは成熟した形態を持つCD5陽性の小型B細胞が増殖し、末梢血、骨髄、リンパ節、脾臓などに浸潤するリンパ系腫瘍(成熟B細胞性腫瘍)。60歳以上の男性に多く、男女比は2対1、発症年齢中央値は67歳。経過は緩やかで、欧米では成人白血病の20~30%を占める最多の白血病。日本では3%以下と稀。年間発症者数は日本で300~400人、米国では2万人以上となっている。

セミナーには九州大学大学院医学研究院応用病態修復学の菊繁吉謙助教も登壇し、ベネトクラクスの承認の基になった海外第3相MURANO試験を解説した。主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)は、ベンダムスチン+リツキシマブ(BR)群に対しベネトクラクス(VenR)群の優越性が示された。また、探索的評価項目の末梢血微小残存病変(MRD)陰性率において、12 カ月時点でVenR群60.3%、BR群10.3%だったことを示し「ベネトクラクスの方が深く奏功している」と語った。MRDは、一定の治療効果が確認された後でも体内にわずかに残存している腫瘍病変(細胞)で、MRDのレベルが低いほど予後良好になるという。

 

■セミナー便り

3.脊髄性筋萎縮症(SMA)治療は「新時代に」
-東京女子医科大学臨床ゲノムセンター:齋藤加代子所長-

東京女子医科大学臨床ゲノムセンターの齋藤加代子所長は11月29日、中外製薬主催のメディアセミナー「神経筋疾患と就労、改善への取り組み」で、脊髄性筋萎縮症(SMA)治療に関して「今まさに新しい時代に入り始めている」と語り、「医療の進歩と並行して、治療を受ける側も素晴らしい人生が送れるような社会をつくっていくことが重要だ」とした。

SMAは脊髄における運動神経細胞の変性による筋萎縮と進行性の筋力低下を特徴とする遺伝性の下位運動ニューロン病。運動障害であることから、SMA患者の就学や就労には環境整備が不可欠。ただ、現状は学校にエレベーターが無いことや特に地方の公共交通機関でバリアフリーが進んでいないことなどさまざまな課題があると齋藤所長は指摘した。

セミナーにはSMA患者で11年にホームページや名刺の作成を請け負う会社「仙拓」を立ち上げた佐藤仙務社長、障害を持つ人の就労支援を行う社会福祉法人プロップ・ステーションの竹中ナミ理事長、SMA家族の会大山有子会長も登壇した。

竹中氏、大山氏からは、仕事中、通勤や通学でのヘルパー利用が基本的には認められていないことを問題視する発言があった。しかし介助があれば障害者も社会に参画し、収入を得、納税という形で支える側に回ることができるとして、そのような社会システムの構築を目指すべきだとの訴えだ。

SMA治療薬を巡っては17年7月にバイオジェンのアンチセンス核酸医薬品スピンラザが承認され、18年11月にノバルティスファーマの遺伝子治療薬AVXS-101(米国製品名ゾルゲンスマ)が承認申請を行った。そして、中外製薬は、ロシュと米PTCセラピューティクス社が創製したSMA治療薬リスジプラム(一般名)を開発中だ。同剤は1日1回の経口投与が想定され、ロシュは11月25日付でFDAにSMA(1型、2型、3型)の適応で承認申請を行い、優先審査に指定されたと発表した。こうした医薬品の発展とともに就学や就労を含む生活の環境整備が求められている。

なお、齋藤所長が立ち上げた患者登録システムSMARTによると、19年10月時点でSMA患者266人が登録している。内訳は男性142人(53%)、女性124人(47%)。1型は111人(42%)、20型は104人(39%)、3型は38人(14%)、4型は9人(4%)。患者の登録時年齢は2~5歳が76人で最も多い。

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