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■記者会見
1.アデュカヌマブ、2020年に国内承認申請へ-バイオジェン・ジャパン:松田尚人臨床開発部長-
■セミナー便り
1.多発性骨髄腫治療は治癒を目指す時代に-日本赤十字社医療センター:鈴木憲史 骨髄腫アミロイドーシスセンター長-
2.ネットワークメタアナリシスとRWDの利活用は慎重に-製薬協/計算機統計学会シンポジウム-

■記者会見
1.アデュカヌマブ、2020年に国内承認申請へ-バイオジェン・ジャパン:松田尚人臨床開発部長-
■セミナー便り
1.多発性骨髄腫治療は治癒を目指す時代に-日本赤十字社医療センター:鈴木憲史 骨髄腫アミロイドーシスセンター長-
2.ネットワークメタアナリシスとRWDの利活用は慎重に-製薬協/計算機統計学会シンポジウム-

 

■記者会見

1.アデュカヌマブ、2020年に国内承認申請へ
-バイオジェン・ジャパン:松田尚人臨床開発部長-

バイオジェン・ジャパンの松田尚人臨床開発部長は12月18日、同社主催のメディアラウンドテーブルで、抗Aβ抗体アデュカヌマブ(一般名)について「日本でも2020年の申請を予定している」と語った。現在、PMDA と協議中。第1相PRIME試験や第3相EMERGE/ENGAGE試験の結果に基づく申請に向けた準備を進めている。

メディアラウンドテーブルではアデュカヌマブの第3相ENGAGE試験(n=1647)および第3相EMERGE試験(n=1638)の経緯について解説。18年7月に両試験の患者全員の登録が完了し、18年12月26日時点で18カ月の投与を完了した1748人(EMERGEは803人、ENGAGEは945人)のデータに基づき、無益性解析を実施した結果、試験完了時の主要評価項目を達成する可能性が低いと判断され、中止になった。

その後、新たに利用可能となったデータを追加し、18カ月の投与期間を完了した2066人を含む合計3285人のデータ(大規模データセット)を解析した結果、EMERGE試験でアデュカヌマブの高用量投与群は、主要評価項目のCDR-SB(認知機能を含むADの症状を総合的に見る指標)を達成。ENGAGE試験では主要評価項目を達成しなかったが、アデュカヌマブの高用量投与群のサブセットにおいてEMERGE試験と一貫した傾向を示した。

この結果を受けて、米国では20年の早い段階で承認申請を行う予定。日本でも20年に承認申請を行う予定。松田臨床開発部長は「FDAとの協議に基づき、これらのデータに基づいてアデュカヌマブの承認申請を提出することは科学的に合理的だ」と語った他、大規模データセットと無益性解析の結果の違いおよびEMERGE試験とENGAGE試験の結果の違いは高用量投与群の患者数の違いによるとした。

また、第1相PRIME試験、第2相EVOLVE試験、第3相EMERGE/ENGAGE試験に参加した患者に対する再投与試験を実施するとした。再投与試験のプロトコールは決定していないが、松田臨床開発部長は「無益性解析の結果、中断になったということで、その患者にもう一度、投与する機会を持っていただくことが一番大きなところ」と再投与試験の意義を説明。第1相PRIME試験、第2相EVOLVE 試験、第3相EMERGE / ENGAGE試験に参加した患者を対象に最高用量投与の10mgを投与し臨床経過やバイオマーカー等のデータを取る試験になるという。

 

■セミナー便り

1.多発性骨髄腫治療は治癒を目指す時代に
-日本赤十字社医療センター:鈴木憲史 骨髄腫アミロイドーシスセンター長-

日本赤十字社医療センターの鈴木憲史骨髄腫アミロイドーシスセンター長は12月13日、ブリストル・マイヤーズスクイブ(BMS)が開催した「再発・難治性の多発性骨髄腫の最新治療-多発性骨髄腫の3剤併用療法について-」と題するプレスセミナーに登壇、相次ぐ新薬を上手く使い分けることで多発性骨髄腫(MM)は「治癒の可能性が十分にある」状況になってきたと語った。

MMは骨髄にある血液細胞の1つである形質細胞ががん化して起こる血液がんの一種である。初期には自覚症状はほとんどなく、病気が進行すると次第に骨折、骨や関節の痛みなどの症状が現れる。

治療の変遷をたどると、MP療法(メルファラン+プレドニゾン)、自家移植併用大量化学療法等を経て、2006年のボルテゾミブ(ベルケイド)を皮切りに新薬承認が続いている。2000年代後半以降に登場した各薬剤について鈴木氏は、プロテアソーム阻害剤のダラツムマブ(ダラザレックス)、カルフィルゾミブ(カイプロリス)は「効果が現れるのも早いが引くのも早い」、抗SLAMF7抗体エロツズマブ(エムプリシティ)は「ゆっくりと効いて、ずっと抑える」と評し、これら特徴を踏まえて、再発・難治性MMの場合は、腫瘍細胞数が急速に増えているケースではまず治療強度の高いダラツムマブ(+レナリドミド+デキサメタゾン、D-Rd)、カルフィルゾミブ(+レナリドミド+デキサメタゾン、K-Rd)を切り込み隊として使い、腫瘍細胞数がある程度減少して状態を安定させた後に、エロツズマブ(+ポマリドミド+デキサメタゾン、E-Pd)に移行して維持する、イキサゾミブ(ニンラーロ)はD-Rd、K-RdとE-Pdの中間に使う、という治療戦略を示した。そしてこれにより微小残存病変(MRD)が陰性の状態を2年間継続できた場合には、治療中止の検討も可能になり、臨床的治癒も目指せるだろうとの期待感を明らかにした。

再発・難治性MMに対するE-Pdは19年11月に承認を取得した3剤併用療法である。承認の基になった第2相ELOQUENT-3試験では、Pd療法に対するE-Pd療法の有効性が確認されたほか、E-Pd群でグレード3~4の感染症が対照群と比較して少ないことが確認された(13%対22%)。一般に2次治療、3次治療と進むと肺炎などの感染症が多く見られるようになることから、鈴木氏は「これは免疫系が保たれているということだろう。将来の戦略として、E-Pd療法の後にCAR-T細胞療法という流れも考えられる」との見解を述べている。

再発・難治性MMに対するCAR-T細胞療法としては、BMS/ブルーバードバイオのide-cel(bb2121)がピボタル第2相KarMMa試験で主要評価項目および主な副次評価項目を達成したとするトップライン結果が19年12月に発表された。

 

■セミナー便り

2.ネットワークメタアナリシスとRWDの利活用は慎重に
-製薬協/計算機統計学会シンポジウム-

日本製薬工業協会主催の『ネットワークメタアナリシスを基礎から学ぶ:概説・事例から留意事項まで』と題したシンポジウムが11月28日に開催された。ネットワークメタアナリシス(Network Meta-Analysis:〔NMA〕)については、ISPOR(国際医薬経済・アウトカム研究学会)のタスクフォース(TF)でレポートが公表され、英国の費用対効果評価機関であるNICE では7つのTechnical Support Documents(TSD)を発行しており、2010年ごろからNMAに関する論文の数は年々増加している。NMAは比較試験を統合する通常のメタアナリシスに加え、間接比較により未実施の臨床試験の比較の評価も可能となる。例えば、治療Aと治療Bとの比較、および治療Bと治療Cを比較する2つの比較試験があるとき、治療Bの結果を介して、異なる試験の治療Aと治療Cとの間接比較を可能とするものである。この比較法によって、有効な併用療法の探索、薬剤の改良、新薬開発のための情報を得ることができ、安全性情報をより豊富なものとすることも期待される。

本邦においては今年4月より費用対効果評価が制度化されて、公表された分析ガイドラインの中でもNMAについて「2治療間の比較のみでなく、複数治療の比較におけるエビデンスを統合する。異なる試験での治療の比較を含む。」として言及されており、NMAは製薬業界では大きな関心事となっている。

シンポジウムでは「最近のNMAのhot topics」の演題で東京大学大学院准教授の大庭幸治氏が現在取り組んでいるアカデミア主導の国際プロジェクトを紹介した。このプロジェクトはGASTRICと名付けられて、胃がんの化学療法の有効性に関するメタアナリシスを評価するものである。第一段階では真のエンドポイントに対する代替エンドポイントの評価を行って専門誌に投稿し、次の段階ではS-1、カペシタビン、5FUの比較試験で非劣性についてNMAを用い検討しており、来年早々に論文化されるとした。NMAはRCT(無作為化比較試験)より容易ではなく、解析の目的を明確にしておく必要があると強調した。

「ISPORレポート」と「NMAの事例」の演題では、製薬協TF委員であるファイザーの藤井陽介氏がNMAにおける異質性、一致性、類似性について具体例で解説し、盲検化RCTは本当に盲検性が確保されていたかの確認とさらに服薬率の評価が必要であり、何よりも得られた結果についての批判的吟味が重要とした。

「NMAのデモンストレーション」の演題では、製薬協TF委員である東レの渥美淳氏が、まずNMAを実施する上でのソフトウェアとして、MCMC(Markov chain Monte Carlo)専用ソフトではWinBUGSとStanの2つがあり、汎用の統計解析ソフトとしてはR、SAS、STATA、Pythonの4つがあると説明した上で、それら公開されているプログラム等を用いて比較的簡単に多くの解析結果が得られることについて、パソコン操作を交えながら示した。利活用においては誤用を防ぐためにも統計の知識に加え、臨床現場やデータマネジメントの知識も必要であるとし、まずは頻度論解析から始め、次にベイズ流に進むべきと語った。

NMAシンポジウムの2日後の11月30日から2日間、『計算機統計学会第33回シンポジウム』が開催され、12月1日にNMA実施のためのソフトウェアとリアルワールドデータ(RWD)の利活用について報告があった。「リアルワールドデータの医薬品開発への活用」の演題では、ファイザーの東郷香苗氏が開発戦略と承認申請に対する2つの活用策を示した。開発戦略では、すでに試験計画書作成、被験者リクルートなどの開発効率化にRWDが活用されているとした。承認申請での活用においては、RWDの外部対照群と単群試験を比較することが挙げられ、比較試験でなくとも可とする適応拡大の承認条件とも合致する。またこの手段は公知申請に用いることも可能であり、RCTの困難な希少疾病・難病の医薬品試験において有用とした。外部対照群の利用では、層別解析、被験者マッチング、重み付けなどで背景を調整できるが、観察されていないデータは調整不可能であることも強調した。さらにRWDを開発戦略と承認申請のいずれに利活用するにしても、RWDの限界を考慮して意思決定すべきとした。

NMAとRWDの利活用

両シンポジウムでは、最近話題となっているNMAとRWDについての利活用や課題が報告された。NMAは医薬品・医療機器の評価で有用な方法となり得るがその課題も多い。NMAの各シンポジストは異口同音にRCTより容易で安価な方法であるとの考えは厳に慎むべきであり、一致性の確認等を含め批判的吟味・評価の必要性を強く訴えた。そのような吟味・評価を経て、有益と思われるエビデンスが得られたとしても、それを自社品の宣伝資材とすることは現在の臨床研究法の下では、ほとんど不可能である。むしろ現時点では、開発戦略・戦術において自社開発品の対照薬の選定、被験者選択と評価基準の策定等の研究計画立案に活用する方が賢明であろう。また計算機統計学会のシンポジウムにおいて東郷氏はRWDの活用には開発戦略と承認申請の2つがあるとしたが、承認申請においては希少疾病・難病に限定されることを考慮すれば、開発戦略の方がより有効であろう。NMAもRWDも共にそこから得られた結果の一般化には限界があり、今すぐRCTやDBT(二重盲検試験)にとって替わり得るものではない。まずはNMAやRWDの解析から得られた結果を仮説として、自らの治験や臨床研究で検証することが有効な活用方法と考える。

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