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■セミナー便り
1.適切な治療方法で、喘息症状を改善へ -日本喘息学会:東田有智理事長-
2.NMOSD治療薬の使い分け、投与方法などを考慮-福島県立医科大学医学部:藤原一男教授-
3.潰瘍性大腸炎、患者ニーズもくみ治療選択-東邦大学佐倉病院・鈴木康夫IBDセンター長-
■行政トピックス
1.薬剤師養成・資質向上検討会 9月11日 薬剤師の業務・需給・教育テーマに議論深める

■セミナー便り
1.適切な治療方法で、喘息症状を改善へ-日本喘息学会:東田有智理事長-
2.NMOSD治療薬の使い分け、投与方法などを考慮-福島県立医科大学医学部:藤原一男教授-
3.潰瘍性大腸炎、患者ニーズもくみ治療選択-東邦大学佐倉病院・鈴木康夫IBDセンター長-
■行政トピックス
1.薬剤師養成・資質向上検討会 9月11日 薬剤師の業務・需給・教育テーマに議論深める

■セミナー便り

1.適切な治療方法で、喘息症状を改善へ
-日本喘息学会:東田有智理事長-

ノバルティスファーマは9月10日、気管支喘息に関するメディアセミナーを開催。「世界初の喘息吸入治療薬と今後の展望」と題した講演を行い、8月26日発売で国内初のLABA/LAMA/ICS配合喘息治療剤となる「エナジア」を紹介した。

登壇した日本喘息学会の東田有智理事長は、始めに喘息患者の現状を説明。世界に約2億4000万人、日本でも約1000万人がいるとされており、そのうち5~10%が重症であると推測されている。しかし、厚生労働省の調査によると、2017年の国内患者数は111万7000人。「これは、きちんと通院している人の人数です。つまり、喘息患者でも多くの方は、症状が落ち着いてくるなど調子が良くなってきたら、通院を止めてしまっている」(東田理事長)。

また、2008年までは患者数は減少傾向にあったが、近年は増加傾向に転じている。その主な要因として挙げられるのが、食事内容の変化による多種類の食品添加物の摂取や、ストレスの多い社会環境、黄砂やPM2.5といった大気汚染など。そして、住宅環境が変化し、気密性の高い住宅では喘息の原因となるアレルゲンが多く発生し、平均的な一般家庭のホコリ1gの中には、ダニ1000匹やカビ13万個、細菌3000万個が潜んでいるという。

一方、喘息患者の死亡総数は1万6233人だった1950年以降は右肩下がりとなり、2018年は1617人と、約70年間で10分の1まで減少。ただし、近年は約1500人で頭打ち状態になっていることから、東田理事長は「これを何とか半分以下にしたい。喘息は治すことが難しくても、ちゃんと治療すれば、良くすることができる。厚労省が『喘息死ゼロ作戦』を進めているが、そこまで持っていけるだろう」と語った。

そして、喘息の重症化をもたらす危険因子となる「コントロールが不良な喘息症状」と「不適切な喘息治療」への対策の必要性を説明。現状の課題として、(1)多くの喘息治療薬が承認されているが、喘息コントロールが不十分の患者がいまだに多い(2)コントロールが不十分な状態は、個人、健康、経済的に重大な負担を引き起こす可能性があり、死に至ることもある(3)1日複数回の吸入や異なる吸入器の使用等、投与の煩雑さが服薬アドヒアランスの低下につながり、コントロール不十分の要因の一つと考えられる(4)経口ステロイド薬の安全性、生物学的製剤の不適応など未解決の課題はまだ多く、アンメットメディカルニーズは残されている-を挙げていた。

そこで、これらの課題の解決につながることが期待される新たな治療選択肢として、「エナジア」の特徴を紹介した。喘息治療薬としては、日本で初めて、LABA(長時間作用性β2刺激剤)、LAMA(長時間作用性抗コリン剤)、ICS(吸入ステロイド剤)の3つの成分を配合。専用吸入器具「ブリーズヘラー」を採用し、「見る」(透明なカプセル)「聞く」(吸入時のカプセルの回転音)「感じる」(吸入時は口内に微かな甘み)ことで、薬剤の全量を吸入できたかどうか確認することができる。

「これまでICS/LABAによる治療を行っていても、息切れや咳などの喘息症状がある患者に対して、確実な治療ステップアップをもたらす。また、1日1回なので、吸入を忘れる可能性も低い。きちんと継続して使えることも考えて、これからの喘息治療では、おそらくアドヒアランスが一番の問題になってくる。本来、喘息だからといって、何かを制限することは間違っている。ちゃんと治療すれば、普通に動けるのが喘息という病気なのです」(東田理事長)

セミナーの後半では、「『孤独の旅』から、より良いコミュニケーションへ~医師と話し、一緒に治療をしていくためには~」をテーマに、パネルディスカッションを実施した。帝京大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー学の長瀬洋之教授は「病院では、わずかな変化など、どんな症状でもいいので、医師に伝えていただきたい。今は治療のレベルが上がっているので、喘息を忘れるぐらいに大活躍できるように、そのお手伝いをしたい」と、患者のバックアップを約束した。

喘息の症状を抱えながらも、第一線の声優として活躍している森川智之氏は「子供の頃は小児喘息だったけれども、いつの間にか治っていて、過去の病気だと思っていた。しかし、40歳の時に、1カ月ぐらい風邪のような症状が続いていたので病院へ行ったら、喘息が再発していた」と自身の経験を語り、一人で悩みを抱えがちな喘息患者に対して「本当に信頼できる先生としっかりとコミュニケーションをとりながら、一歩前に出て、自分らしい、楽しい人生を送っていただきたい」と力強いエールを送った。

 

■セミナー便り

2.NMOSD治療薬の使い分け、投与方法などを考慮
-福島県立医科大学医学部:藤原一男教授-

福島県立医科大学医学部多発性硬化症治療学講座の藤原一男教授は9月14日、中外製薬主催の視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)治療薬エンスプリング(一般名サトラリズマブ)の説明会で講演し、承認の基になった国際共同第3相SAkuraSky試験と海外第3相SAkuraStar試験の結果を解説した。その上で、同剤への期待として(1)2つの第3相国際共同治験において証明された、抗AQP4抗体陽性患者への再発抑制効果と安全性プロファイル(2)4週1回の皮下投与による利便性(3)少数例だが青少年への成績も含まれ小児患者にも使用可能-であることを挙げた。

藤原教授によると、NMOSDは自己免疫疾患の1つで、日本全国での患者数は約4300人。現在解析中の最新の疫学調査では5000人以上と推定されている。抗AQP4抗体陽性の患者はそのうち6~9割を占めるという。抗AQP4抗体陽性の場合、男女比が1対9で女性が圧倒的に多い。発症年齢は40歳前後が多いが、10歳以下から90歳まで発症年齢の幅は広い。NMOSDの治療は急性期治療、再発予防治療、対症療法の3つから成り、エンスプリングは再発予防治療に当たる。藤原教授は再発予防治療に関して「これまでステロイドや種々の免疫抑制剤が使われてきたが、エンスプリングをはじめ特定の分子を標的にした治療薬が出てきたことが非常に大きい」と評価した。

NMOSD治療薬を巡っては19年11月にアレクシオンファーマの抗C5抗体ソリリス(エクリズマブ)が承認されている。また、田辺三菱製薬の抗CD19抗体イネビリズマブ(一般名)が国内承認申請中だ。こうした薬剤とエンスプリングの使い分けに関して、藤原教授は「この方は補体が特に重要、この方はIL-6が重要、この方はB細胞が他の方よりも重要というのが分かって、メカニズムに基づいて、この方はこの薬が一番良いというふうなことがあれば、それに基づくのが理論的かと思う。しかし、投与方法と間隔が非常に異なっている。患者さんの仕事が非常に忙しいとか、子供さんがいるとか、今後、妊娠・出産を考えているとか、そういう方に投与方法・投与間隔も決して無視できないということがあり、薬を決定する際に考慮されるべきことであろうと思う」と語った。

 

■セミナー便り

3.潰瘍性大腸炎、患者ニーズもくみ治療選択
-東邦大学佐倉病院・鈴木康夫IBDセンター長-

東邦大学医療センター佐倉病院IBD(炎症性腸疾患)センターの鈴木康夫センター長は9月16日、ヤンセンファーマ主催のオンラインプレスセミナーで講演し、新薬の投入が続く潰瘍性大腸炎について、「5-ASA製剤とステロイドしかなかった頃と比べると治療選択の幅が大きく広がったが、どの患者にどの治療を適切に選ぶか、悩ましいことがある」との感触を示した。最近は、選択肢が幾つかあってどれも有効であると考えられれば、患者の生活スタイルやニーズも組み入れて選択しているとした。

潰瘍性大腸炎の国内患者数は22万人で、この20年で10倍に増加したという。その理由について鈴木センター長は「高カロリー・高脂肪・低食物繊維などといった食生活の変化と、夜型の生活、睡眠時間の短縮、さまざまなストレスなどライフスタイルの変化が相まって、腸内環境を変化させている」との考えを述べた。

薬物治療は、基本の5-ASA製剤、中等症以上に用いるステロイド、寛解維持に用いる免疫調節剤に加え、近年は種々の標的の生物学的製剤(バイオ製剤)、JAK阻害薬が相次いで承認され、既存治療で効果不十分な中等症から重症例に用いられている。

鈴木センター長はこれらの中から、患者の年齢・性別、病歴や患者背景、現在の活動性、重症度、病変範囲、合併症の有無、臨床検査値などによって選択するとした。最近は、幾つかの選択肢があってどれも有効と考えられる場合は、患者の生活スタイルやニーズを考慮し、意向を聞きながら選択しているとした。

とりわけ、患者の3割弱を占める中等症の治療に触れ、「見た目は元気でも、陰ではつらい思いをしている。専門医が最も頭をひねるところ」だとして、医師向けの講演でも注意喚起しているとした。

バイオ製剤については、抗TNFα抗体ゴリムマブを例に挙げて、「(粘膜が)ほぼ正常なくらいまで改善する。2年後にもよい状態を保っている」と評価。バイオ製剤の選択にあたっても、重症度、投与法(皮下注、点滴静注)と維持期の投与間隔(2週、4週、8週、12週)の違い、自己注射の管理などを踏まえて、患者の思いをくんでいるとした。

また、重症度に応じたバイオ製剤の使い分けに関して直接言及することはなかったが、既存の治療ピラミッドに「個人的な見解として位置づけした」スライドでは、重症寄りの方から順に抗TNFα抗体、抗IL-12/23p40抗体ウステキヌマブ、抗α4β7インテグリン抗体ベドリズマブを配置した。

潰瘍性大腸炎患者における大腸がん発生リスクが健康な人の8倍以上にも上ることに絡み、バイオ製剤による免疫抑制と発がんとの関連についての質問が及ぶと、「炎症の慢性的な持続が発がんリスクなのであって、抗体製剤を中心とした新規治療薬が大腸がんを増やすことはない」と説明した。むしろ、バイオ製剤の治療で炎症を抑えることは大腸がんのリスクを下げるとの見方を示していた。

鈴木センター長はまた、今後は患者数が30万人に近づくことが見込まれるとして、規模の大きい専門病院だけで診療するのではなく、改善後は地域の医療機関へ逆に紹介する体制の構築を提唱した。特に、IBD専門クリニックが非専門医からの相談に乗ったり、患者の紹介を受けたりする重要性を指摘しており、クリニックレベルで連携を広げる組織「IBDフォーラム」を設立する計画を披露した。

 

■行政トピックス

1.薬剤師養成・資質向上検討会 9月11日
薬剤師の業務・需給・教育テーマに議論深める

厚労省医薬・生活衛生局は9月11日、「薬剤師の養成および資質向上等に関する検討会」の2回目の会合を開き、初会合に続いて「薬剤師の業務(薬局、医療機関等)」「薬剤師の需給」「薬学教育」-を主要テーマにフリーディスカッションを行った。

また、厚労省が提示した「薬剤師の需給調査」の具体的な実施方法案を了承した。需給調査は9月にスタートし20年度内に結果を得る。

今後、同検討会は、月1回程度の頻度で開催。議論のテーマは▼ 薬学教育▼ 薬学共用試験(CBT、OSCE)▼実務実習▼薬剤師国家試験▼免許取得後の卒後研修▼従事先別の薬剤師業務(薬局薬剤師、病院薬剤師、製薬企業等)-とし、各回に2テーマ程度を取り上げる。21年度以降、需給調査の結果を踏まえ、今後の薬剤師のあり方について報告書の取りまとめ作業に入る。

前回の初会合では、「薬剤師の業務(薬局、医療機関等)」に関して、「薬剤師には医療人としての覚悟が不足しているのではないか」「薬剤師の役割が国民に理解されていないのではないか」などの意見が出されたが、この日の会合では、医師など他職種の中に「薬剤師とほぼ関わることがない」「薬剤部が何をやっているか全然知らない」との声があるといった、多職種連携に関する課題の存在が指摘された。

「薬剤師の需給」では、初会合で「地方の中核病院は薬剤師の数が全く足りない」「病院の薬剤師が足りない。病院、薬局等の地域偏在が著しいのではないか」「地方では薬局でも薬剤師が不足している」ことが問題提起された。

ただ、初会合で厚労省が提示した「薬剤師に関する基礎資料」の「薬剤師数(対人口比)の国際比較(2016年)」によれば、日本は人口1000人当たり1.81人と、2位のベルギー(1.22人)を大きく引き離し断トツ。OECD加盟国の大半は1.00人以下となっている。

この日の会合では、「米国では薬剤師を中心として多くのテクニシャンとチームを組んでやっているのが現状」とし、日本でもテクニシャン制度の導入を求める意見が出た。前回会合では「薬学部を卒業したが、国家試験に合格できなかった人に対しても、薬剤師以外の者ができる調剤業務に関わらせていいのではないか」といった指摘が出ていた。

また、「薬剤師に関する基礎資料」の「薬学教育6年制課程卒業生の就職状況」によると、2017年~19年にかけて、薬局が3070人→3475人→4455人と大幅に増加しているのに対し、▼病院・診療所▼その他(試験・研究機関、大学、行政、高校・中学の教職、研究生、その他の職業、進学、就職せず、未定の合計)▼企業▼医薬品販売業―は横ばいか、減少となっている。

この日の会合では「職種別の偏在と地方の偏在が問題となっている。なぜ薬局に人材が流れていくのかを見定めていけば問題点が明確化するのではないか」との意見が出た。

「薬学教育」に関しては、「薬剤師に関する基礎資料」によると、第105回薬剤師国家試験(20年3月合格発表)の私立大学の新卒の合格率は84.1%だが、新卒のうち6年間で卒業・合格した14年度入学者で見ると、14年度の入学者全体に占める割合は57.8%と推計されている。

今回の会合では「薬学部を出たにもかかわらず、薬剤師になれないことの問題は、入り口のところを広げ過ぎているからではないか」との指摘が出された。

卒後研修に関しては、前回会合で「最低2年ぐらい病院勤務の実習を卒後研修として義務付けることも重要ではないか。薬剤師が地域の病院で勤務するので、薬剤師の偏在問題も解決するのではないか」との意見があったが、今回の会合では「医師の臨床研修と同じように薬剤師も臨床研修をやれば、一緒になってその段階でお互いの仕事を知ることができるのではないか」との意見が出された。

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