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■セミナー便り
1.ATPを利用したスイッチ抗体、20年に臨床入り-中外ファーマボディ・リサーチ CEO兼リサーチヘッド 井川 智之-
2.世界初の経口ファブリー病治療薬を解説-東京都医学総合研究所:鈴木義之特別客員研究員-
■行政トピックス
1.厚労省医薬・生活衛生局 12月9日 -海外メトホルミン含有製剤からNDMA検出で対応策-

■セミナー便り
1.ATPを利用したスイッチ抗体、20年に臨床入り-中外ファーマボディ・リサーチ CEO兼リサーチヘッド 井川 智之-
2.世界初の経口ファブリー病治療薬を解説-東京都医学総合研究所:鈴木義之特別客員研究員-
■行政トピックス
1.厚労省医薬・生活衛生局 12月9日 -海外メトホルミン含有製剤からNDMA検出で対応策-

 

■セミナー便り

1.ATPを利用したスイッチ抗体、20年に臨床入り
-中外ファーマボディ・リサーチ CEO兼リサーチヘッド 井川智之-

最新の抗体エンジニア技術を紹介

中外製薬が12月9日に開催した抗体技術説明会で、中外ファーマボディ・リサーチCEO兼リサーチヘッドの井川智之氏は同社が開発を進める新しい抗体エンジニアリング技術について解説、これら新技術によって「抗体創薬の幅がますます広がっていくと考えている」と自信を示した。

最初に紹介されたのは、中外製薬の抗体医薬品創製を支えるプラットフォームだ。

まずはリード抗体分子を取得するウサギB細胞クローニング法と抗体ファージライブラリーである。いずれも自動化されたハイスループットシステムで、特に抗体ファージライブラリーは動物免疫手法では取得不可能な機能を有する抗体を取得できる。続くリード最適化プロセスでは、多面的な抗体分子最適化システム(COSMO)によって1週間に約3000種類の抗体を作成し評価することが可能だ。さらに、免疫原性低減プラットフォームにより、抗体エンジニアリングにおける大きな不安要素である免疫増大のリスクを最小化して臨床開発に進めることができるようになった。こうしたプラットフォームが現在約20の標的に対して展開する創薬活動を支えている。

このように確立されたシステムの上で、中外製薬はより競争優位性の高い抗体エンジニアリング技術の開発を進化させている。井川氏からは同社が持つ抗体技術として、リサイクリング抗体、スイーピング抗体、バイスペシフィック抗体について紹介がなされた。

リサイクリング抗体とは、抗体が抗原に繰り返し結合することを可能にする抗体改変技術で、この技術を用いたサトラリズマブは視神経脊髄炎スペクトラムを対象に日米欧3極で申請中だ。発作性夜間ヘモグロビン尿症を対象に第1/2相段階にあるcrovalimab、子宮内膜症を対象に第1相試験中のAMY109にもリサイクリング抗体技術が使われている。

スイーピング抗体技術は可溶型抗原を血しょう中から除去する技術である。単に結合するだけの通常の抗体に対して、抗原抗体複合体を細胞内に取り込み、エンドソーム内で解離させ分解させることができるというpH依存的な新作用機序を持つ技術である。コンセプトは2010年頃から考えられてきており、12年の抗体技術説明会でもマウスを使った実験データが示されていたが、ここで用いられていた第1世代スイーピング抗体は、ヒトに外挿できるカニクイザルで評価したところスイーピング効果が不十分であったため、細胞内への取り込みに利用していた受容体をFcRnからFcγRⅡbに変更、Fc領域を正電荷に荷電する技術などを組み合わせることでカニクイザルでも強いスイーピング効果を達成した。

スイーピング抗体を初めて適用したプロジェクトが、抗潜在型ミオスタチンスイーピング抗体GYM329である。筋抑制因子であるミオスタチンを阻害することで神経筋疾患の筋力低下の進行抑制を目指している。ミオスタチンをターゲットにする開発は他社でも行われているが、GYM329の特徴は潜在型(非活性型)ミオスタチンをターゲットにしている点だ。ミオスタチンは活性型になると直ぐに受容体に結合し筋力低下作用を示すため、活性型をターゲットにするのは非常に難しい。GYM329そのものではないが、カニクイザルでのin vivo試験において、スイーピング抗体は従来型抗体と同じような血中濃度推移を示しながら、血しょう中の抗原(ミオスタチン)濃度は投与1日後には検出限界値以下となり、1000倍以上の低下を示した。現在は第1相段階に進んでいる。

リサイクリング抗体、スイーピング抗体を適用したプロジェクトは前述のほか、2つが創薬フェーズにある。

抗体医薬品にとって避けられない毒性と考えられていたオンターゲット毒性の克服を目指して開発されたスイッチ抗体技術は、病態特異的に存在する低分子代謝物をスイッチとして、このスイッチ分子が高濃度で存在する場合においてのみ、抗原に結合するようにする技術である。これにより、従来は副作用の発生によって狙うことができなかった標的に対して創薬が可能になると期待されている。中外製薬が最初にスイッチ分子として選択したのは細胞外ATPである。細胞外ATPは、固形腫瘍の微小環境下では正常組織と比べて非常に高濃度になることが報告されている。

スイッチ抗体技術を適用したプロジェクトとしては、ATPをスイッチ分子にしたプロジェクト1本が20年に臨床開発フェーズに進む予定であるほか、6プロジェクトが創薬フェーズにあり、これらはATPをスイッチ分子にしたもの、ATP以外をスイッチ分子にしたものが含まれている。

ヘムライブラに適用されているバイスペシフィック抗体技術は、共通L鎖を使用することで重鎖と軽鎖の組み合わせ数を低減し、工業生産を容易にしてきた半面、抗体エンジニアリングには制限があった。共通L鎖の制限をなくした第2世代バイスペシフィック抗体では、2種類のL鎖(非共通L鎖)それぞれにエンジニアリングすることが可能になり、より複雑な作用機序を持たせることが可能になった。第2世代には、次世代エミシズマブのポジションを期待されているNXT007がある。NXT007には、非共通L鎖抗体の工業生産性を高めるFAST-Ig技術と、半減期を延長させ薬物動態を向上させるACT-Fc技術が使われている。カニクイザルを用いた薬物動態試験では、エミシズマブにACT-Fc技術を用いることで、エミシズマブと比較して半減期を19.4日から54.5日に延長させた。19年第2四半期に第1相試験を開始している。第2世代としてはこのほか、創薬フェーズで4プロジェクトが進められている。

第1世代、第2世代とは異なる作用機序で開発を進めるのが、最新の第3世代バイスペシフィック抗体である。第3世代は、第1世代、第2世代と同様に2種類の抗原に結合するが、その結合が競合的であるという特徴を持つ。すなわち抗原Aにも抗原Bにも結合するが、Aに結合しているときにはBには結合せず、Bに結合しているときはAには結合しないというものだ。具体例は示されなかったが、同時に結合すると副作用が発現してしまう等の理由で競合的な結合を実現しなければ標的にできないようなケースはがん、免疫、中枢などさまざまな疾患で確認されているといい、5プロジェクトが創薬フェーズにある。

中外製薬が最初に抗体医薬品の上市に成功したのは1990年(エポジン)だった。かつての創薬ストラテジーは標的分子に対する医薬品の価値最大化(ベストインクラスの抗体創製のための技術)だったが、現在は「医薬品にすることが困難な標的分子および作用機序に対する創薬」を掲げる。井川氏は「新しい抗体エンジニアリング技術によって狙うことができる標的分子の範囲が拡張されるとともに、これまでにない作用機序を実現でき、これにより抗体創薬の幅がますます広がっていくと考えている」と語り、「抗体が機能する場を広げる技術」として「細胞内や脳など、抗体が行けないところに行けるようにする技術開発」を行っていることも明かした。

 

■セミナー便り

2.世界初の経口ファブリー病治療薬を解説
-東京都医学総合研究所:鈴木義之特別客員研究員-

タンパク質の折り畳みの異常を矯正するシャペロン療法の生みの親である東京都医学総合研究所の鈴木義之特別客員研究員は12月12日、アミカス・セラピューティクス主催のファブリー病治療薬ガラフォルド(一般名ミガーラスタット)に関するメディアセミナーで講演し、自らの研究の軌跡や同剤の特長、シャペロン療法に関する今後の展望について語った。

ファブリー病は指定難病のライソゾーム病に含まれる遺伝性の希少疾患。GL-3などの糖脂質を代謝するのに必要な酵素α-ガラクトシダーゼA(α-GalA)をコードするGLA遺伝子の変異が原因で、α-GalAが作られにくくなり、GL-3が細胞内に過剰蓄積し、脳血管障害、心症状、腎症状、眼科症状、皮膚症状、四肢疼痛などさまざまな症状が現れる。

治療法には点滴でα-GalAを補充する酵素補充療法がある他、世界初の経口剤としてアミカス・セラピューティクスのガラフォルドが登場した。同剤は日本で18年5月にミガーラスタットに反応性のあるGLA遺伝子変異を伴うファブリー病を効能・効果として発売された。同剤は鈴木氏が考案したシャペロン療法の原理が使われている。鈴木氏は同剤の特長に関して左心室肥大に対する効果を指摘。「酵素補充では心臓に対して効くように見える例もあるが、必ずしもはっきりしない。それに比べるとシャペロンは心臓肥大が小さくなる」と解説した。

今後の展望に関しては、鳥取大学の神経型ゴーシェ病患者に対するアンブロキソールを用いたシャペロン療法の有効性と安全性を評価する医師主導治験への期待を語った。また、「タンパク質の折り畳みの異常を矯正するということでは、ライソゾーム病だけでなく、神経変性疾患、感染症、悪性腫瘍などさまざまな疾患に対し理論的に可能性のあるアプローチだ」とした。

セミナーには鳥取大学研究推進機構研究戦略室の難波栄二教授も登壇し、シャペロン療法に関して「新しい画期的な治療法として知っていただきたい。日本も創薬に力を入れているが、原理を日本で開発したものがほとんどない。その中で極めて貴重な原理だと思うので、今後もこの分野を支援していただきたい」と語った。

同社のリージョナル・メディカル・アドバイザーの土屋実央氏は「主要臓器のイベントに関してはファブリー病に特異的な症状ばかりではないので、一般的に症状から診断に至るまで時間がかかっている。実際に症状が発現してから確定診断に至るまで10年以上かかっているデータもあるので、疾患啓発活動に引き続き注力していきたい」と語った。

ガラフォルドを使用できるかは患者の遺伝子変異のタイプにより決定されており、GLA遺伝子の変異に関しては1000以上の変異の数が報告されており、そのうち3~4割の遺伝子の変異のタイプにガラフォルドが使えるという。

 

■行政トピックス

1.厚労省医薬・生活衛生局 12月9日
-海外メトホルミン含有製剤からNDMA検出で対応策-

シンガポール保健科学庁(HAS)において、糖尿病治療薬メトホルミン含有製剤から発がん性物質NDMAが検出され、一部の事業者が自主回収したとの発表があったことを受け、厚労省医薬・生活衛生局医薬安全対策課と監視指導・麻薬対策課は12月9日、国内メーカー15社に対しメトホルミンの原薬および含有製剤の分析を指示した。

15社は次の通り。▼大日本住友製薬▼第一三共エスファ▼トーアエイヨー▼東和薬品▼ニプロ▼日本ジェネリック▼日医工▼辰巳化学▼三和化学研究所▼ファイザー▼日本新薬▼シオノケミカル▼ノバルティスファーマ▼武田薬品▼武田テバ薬品-。

バルサルタン製剤に端を発したNDMAなど発がん性物質検出問題は、ラニチジン製剤やニザチジン製剤に拡大、さらにメトホルミン含有製剤に及んだ。

厚労省が公表している第4回NDBオープンデータによれば、糖尿病用剤(内服、外来/院外)の17年度の処方量上位20品目の中に、メトホルミン含有製剤は10品目が入るほど、糖尿病治療によく用いられている。

厚労省は「メトホルミンは血糖降下薬の中でも重要な薬剤の一つであり、服用の中止によりさまざまな併発症のリスクを生じる可能性がある。現時点において、日本国内のメトホルミン含有製剤からNDMAは検出されていない」などとして、医療機関等に対しては、▼従来どおり処方を行っても問題ないこと▼患者から相談を受けた場合、糖尿病に対する治療の必要性を改めて説明するとともに、服用を中止しないように回答してもらうこと-を周知徹底した。

厚労省では、米国FDAや欧州EMAなど海外規制当局と協力して調査を進めている。

 

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