■セミナー便り
1.地域連携薬局「多くの薬局・薬剤師が目指す姿にしたい」-厚生労働省:森和彦大臣官房審議官(医薬担当)-
■カンファレンス
1.薬剤師による現場で役立つ研究報告に脚光-アインホールディングス-
■セミナー便り
1.帯状疱疹診療は「治療から予防へ」-東京女子医科大学:川島眞名誉教授-
■セミナー便り
1.地域連携薬局「多くの薬局・薬剤師が目指す姿にしたい」
-厚生労働省:森和彦大臣官房審議官(医薬担当)-
厚生労働省の森和彦大臣官房審議官(医薬担当)は8月3日、日本学術会議薬学委員会薬剤師職能とキャリアパス分科会および日本薬学会が共同で主催した公開シンポジウム「薬剤師が担う日本の医療と薬学教育」で、薬機法改正案について解説した。
改正案では、「住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができるようにするための薬剤師・薬局のあり方の見直し」として、患者自身が自分に適した薬局を選択できるよう、機能別の薬局の知事認定制度(名称独占)を導入する。その中で、(1)入退院時や在宅医療に他医療提供施設と連携して対応できる薬局(地域連携薬局)(2)がん等の専門的な薬学管理に他医療提供施設と連携して対応できる薬局(専門医療機関連携薬局)が挙げられている。
森大臣官房審議官によると、患者のための薬局ビジョンとの関係については、かかりつけ薬剤師・薬局の機能が地域連携薬局に該当し、高度薬学管理機能が専門医療機関連携薬局に該当する。健康サポート機能については引き続き議論するとした。その上で森大臣官房審議官は「地域医療で頼られる存在としてかかりつけ薬剤師・薬局を位置付けたい。名前は地域連携薬局。これはマジョリティの薬局・薬剤師がこれから目指す姿にしていきたい」と語った。
専門医療機関連携薬局では主にがん患者を想定した。厚労省の患者調査では、がん患者は入院よりも外来の患者数のほうが多くなっている。森大臣官房審議官は「乳がんや前立腺がんは経口剤で通院で治療している例がたくさんある。その患者の面倒を見るのは薬局薬剤師だ」と語った。
また、現在は、処方箋に基づき調剤された薬剤(処方箋薬剤)は、その適正な使用のため、薬剤師による交付時の対面服薬指導が義務付けられているものの、薬機法改正案では、服薬指導について、対面義務の例外として一定のルールの下でテレビ電話等による服薬指導を規定するとしている。
森大臣官房審議官は「いまやドクターのオンライン診療を推進しようという動きがある。そのオンライン診療の中で対面原則が残っていると、薬だけ取りに薬局に行かないといけない」と指摘。今回の法改正は、オンライン服薬指導の仕組みが確立される第一歩になるとした。
■カンファレンス
1.薬剤師による現場で役立つ研究報告に脚光
-アインホールディングス-
アインホールディングスは9月1日、グループに所属する薬剤師の研究活動報告会として、AINイノベーティブカンファレンスを初めて開催した。高度薬学管理やかかりつけ薬剤師など、薬剤師に求められる役割が変化している中で、「薬剤師の考える力、分析する力を高め、薬剤師の患者に貢献できる能力・可能性を浮き彫りにする」(大石美也アインファーマシーズ社長)ことを開催目的としている。
当日は、過去1年間にグループの薬剤師によって各種学会で発表された研究(口頭発表6演題、ポスター発表40セッション)が紹介された。
「高齢者の味覚異常におけるリスク因子」に関する研究では、QOLの低下原因ともなる味覚異常のリスク因子と服用薬剤の関連を調査。グループの薬局46店舗に来局した60歳以上の患者を対象にしたアンケート調査から、有効回答300人のうち86人に味覚異常があり、味覚異常の有無を目的変数に、BMIやその他の調査項目(食事の楽しさ、口渇、嚥下障害、咽せなど)を説明変数としてロジスティック回帰分析を行った結果、味覚異常に対して口渇(p<0.001)と嚥下障害(p=0.031)が有意に影響していることが判明。また、味覚異常群の62.8%が消化性潰瘍用剤を、52.8%が催眠鎮静剤、抗不安剤を服用していたが、非味覚異常群でのそれぞれの薬剤を服用していた割合は36.9%と24.8%であった。発表者の井上幹雄氏は、口渇や嚥下障害を生じる可能性がある薬剤を服用する患者に対して味覚障害の注意喚起を実施し、トレーシングレポート等で処方医と情報共有することで早期発見、早期治療に貢献できるとした。
そのほか、「ダビガトランの服薬コンプライアンスの現状と保険薬剤師の役割」に関する研究では、ダビガトランの服薬コンプライアンスの低下は脳梗塞などの致死的状況に直結することから、服用状況を調査。グループの薬局37店舗のダビガトラン処方患者137人(平均年齢72.3歳)に対して、飲み忘れ経験、服用意識、不便を感じる程度をアンケート調査した結果、飲み忘れ経験がある患者は47.4%で、飲み忘れ経験がない患者(52.6%)と平均年齢や服用規格に群間差がないことが判明した。また、飲み忘れは夜に多く(61.5%)、朝は少なかった(4.6%)。
「かかりつけ薬剤師の普及が時間外対応に及ぼす影響」の研究では、新たに国が策定した「かかりつけ薬剤師」の2016年4月の普及開始以降、薬剤師の時間外対応がどのように変化したかを調査。かかりつけ薬剤師の普及開始前(15年8月~16年1月)と普及開始後1年以上が経過した時期(17年8月~18年1月)に、近畿2府5県にあるグループ薬局55店舗の薬剤師の時間外対応について、対応時間と問い合わせ内容(体調変化、飲み合わせ、処方受付可否、服用方法、その他)を調査。その結果、時間外対応の件数と対応時間は、普及前は105件、1件当たり12分9秒であったが、普及後は247件、1件当たり14分50秒であった。問い合わせ内容は、普及前は「処方受付可否」(21.9%)が最も多く、次いで「体調変化」(19.1%)であったが、普及後は「体調変化」が30.4%と最も多くなり、「服用方法」が19.4%と2番目となっている。
■セミナー便り
1.帯状疱疹診療は「治療から予防へ」
-東京女子医科大学:川島眞名誉教授-
東京女子医科大学の川島眞名誉教授は8月27日、武田薬品主催のメディアセミナーで帯状疱疹診療の近未来について講演し、「よい治療薬は確かにあるが、私はだんだんと治療から予防へと時代が移ってきているのではないかと考えている」と語った。
帯状疱疹ワクチンの普及に関しては、帯状疱疹や帯状疱疹後神経痛(PHN)の疾患啓発が必要だとした。
帯状疱疹は、主に小児期に水痘(水ぼうそう)に罹患し潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化により引き起こされる。水痘・帯状疱疹ウイルスは、水痘治癒後も長期間、脊髄後根神経節などに潜伏し、宿主の細胞性免疫が低下すると、帯状疱疹を引き起こす。
日本の帯状疱疹に関する大規模疫学調査である宮崎スタディによると、帯状疱疹の発症率は50歳代から上昇し、70歳代でピークを迎える。小豆島における前向き疫学研究SHEZ Studyによると、帯状疱疹に罹患した50歳以上の患者の19.7%がPHNに移行したと報告されている。こうした中で、川島名誉教授はPHNの移行率に関して「ここを何とか減らしたいというのが我々の願いだ」とした。
また、14年10月に水痘ワクチンの小児への定期接種が開始されたことを受け、水痘患者は減少する一方、周囲の人々が細胞性免疫を高めるブースター効果を得る機会が減ることから、今後、帯状疱疹患者のさらなる増加が予想されると指摘した。
ワクチン接種を通じた細胞性免疫増強により帯状疱疹およびPHNの発症が予防されることに期待を示した。
なお、武田薬品は乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」を販売している。同ワクチンは16年3月に「50歳以上の者に対する帯状疱疹の予防」の適応を追加している。一方、GSKの乾燥組換え帯状疱疹ワクチン「シングリックス」は18年3月に国内製造販売承認を取得している。GSK広報によると、確定はしていないが、20年初めに発売する計画だ。