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■記者会見
1.社長交代「グローバルヘルスケア企業へ変革」-田辺三菱製薬:上野裕明取締役-
■セミナー便り
1.ゾレア投与は花粉症患者の1~3%の見通し-日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科:大久保公裕教授-
■行政トピックス
1.中医協総会1月15日 「使用ガイド付きの医薬品集」の診療報酬上の評価は見送り
■学会レポート
1.「AROの目指す方向を示すKAICA Trial」-第40回日本臨床薬理学会学術総会-

■記者会見
1.社長交代「グローバルヘルスケア企業へ変革」-田辺三菱製薬:上野裕明取締役
■セミナー便り
1.ゾレア投与は花粉症患者の1~3%の見通し-日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科:大久保公裕教授-
■行政トピックス
1.中医協総会1月15日 「使用ガイド付きの医薬品集」の診療報酬上の評価は見送り
■学会レポート
1.「AROの目指す方向を示すKAICA Trial」-第40回日本臨床薬理学会学術総会-

 

■記者会見

1.社長交代「グローバルヘルスケア企業へ変革」
-田辺三菱製薬:上野裕明取締役-

田辺三菱製薬の社長に就任する上野裕明取締役は1月14日、記者会見し、さまざまな経営課題を克服しながら「グローバルヘルスケア企業への変革を遂げる」と方針を示した。三津家正之社長は取締役となる。4月1日付。

上野取締役は(1)薬剤費抑制の圧力が増している(2)低分子化合物や抗体医薬だけでなく核酸医薬や遺伝子治療といった新しいモダリティの可能性が広がっている(3)治療だけでなく予防や治療後の予後までビジネスの幅が広がっている―といった医薬品産業を取り巻く環境変化に対応し、(1)医薬品とテクノロジーの融合(2)ビジネスの裾野拡大(3)グローバル化―の実現に意欲を示した。

田辺三菱製薬発足以来の目標であるグローバル展開に関して「米国市場にラジカヴァで参入し、その拡大を第一義に考えている」とした上で、将来的には「米国以外の地域をどのようなリージョンに分け、そのリージョンなりの性質や将来性を考え、地域軸と製品軸あるいは領域軸を掛け合わせた戦略を練ることが重要と考え、今後、新しいチャレンジとして取り組みたい」と語った。

三菱ケミカルHDの完全子会社となったことで、HD傘下の各事業会社が持つ素材、デバイス、デジタルなどの技術と自社の医薬品を組み合わせやすくなったとした他、親会社のグローバルなネットワークを自社の海外展開に生かすことにも期待を示した。

組織・人員計画に関しては、20年度末までに国内連結5000人体制とする目標を進めているとした上で「田辺三菱製薬としてさらなる要員体制については次期の中期経営計画の中で検討していくことになろうかと考えている」と語った。

一方、三津家社長は18年末ごろから社長交代を考え、19年4月以降、具体的に後継者の選定作業に入ったと説明。三菱ケミカルHDから完全子会社化に関する正式提案書を受け取ったのは19年8月のことであり、「(TOBが)引き金になって交代したというよりは以前からここに向けて私自身は動いてきて、途中で完全子会社化の話が生じた」と説明した。上野取締役を後任に選んだ理由に関しては長期的視野と概念的思考力、研究開発の社内外の人脈が非常に広いことを挙げた。

 

■セミナー便り

1.ゾレア投与は花粉症患者の1~3%の見通し
-日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科:大久保公裕教授-

日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科の大久保公裕教授は1月17日、ノバルティスファーマが開催した重症花粉症の最新治療に関するメデイアセミナーで、重症花粉症の適応を取得した抗IgE抗体ゾレアの投与対象について、最適使用ガイドライン(GL)に施設要件が設定されたことで「開業医では困難だがある程度の基幹病院では可能だろう」と述べ、投与患者数はスギ花粉症患者2000万人の1~3%程度になるとの見通しを示した。一方ノバルティスファーマでは、年間投与患者数は最大でも1万人程度と推定している。

日本におけるスギ花粉症の有病率は、1998年に16.2%だったのが、2008年には26.5%と、10年間で約10ポイントも上昇した。大久保教授によれば、19年の調査では30%台にまで増加の一途をたどっており、国民病ともいわれるほど患者数は多い。

主な症状はくしゃみ発作、鼻汁(鼻水)、鼻閉(鼻詰まり)、眼のかゆみで、鼻アレルギー診療GL2016年版によると、▼くしゃみ発作が1日11回以上▼鼻水が1日11回以上▼鼻詰まりが非常に強く、口呼吸が1日のうちでかなりの時間ある―のどれか1つでも当てはまれば、重症の可能性がある。また、同GLでは、重症の場合の治療は、くしゃみ・鼻水型にはくしゃみ・鼻水用の薬(抗ヒスタミン薬)と鼻噴霧用ステロイド薬の2種併用が、鼻詰まり型にはくしゃみ・鼻水用の薬と鼻詰まりの薬(抗ロイコトリエン薬や抗ヒスタミン薬と血管収縮薬配合剤など)、鼻噴霧用ステロイド薬の3種併用が標準治療とされる。

2019年12月に「季節性アレルギー性鼻炎(既存治療で効果不十分な重症または最重症患者に限る)」の適応追加承認を取得したゾレアは、花粉症に対する世界初の抗体医薬品である。従来の低分子医薬品の多くがマスト細胞から放出されたヒスタミンやロイコトリエンなどの炎症化学物質にアプローチするのに対し、ゾレアはIgE抗体がマスト細胞上の受容体に結合するのを防ぐことで炎症化学物質の放出そのものを抑制するという、異なるアプローチを取る。

国内第3相試験では、前記の鼻アレルギー診療GLで推奨される既存治療でコントロール不十分な重症スギ花粉症患者に対し、経口抗ヒスタミン薬と鼻噴霧用ステロイド薬という標準治療にゾレアを上乗せした場合の優越性が示された。

さらに今回、大久保教授からは、探索的評価項目として検証された労働/学習生産性や日常生活に及ぼす影響において、対照群に対して、悪化率を3分の1から2分の1に改善したことも紹介された。

同日公表され、本セミナーでも紹介された、ノバルティスファーマが実施した花粉症患者9400人(うち、最重症患者26%、重症患者23%)に対するアンケート調査では、▼花粉症の症状により勉強や仕事、家事等生活への支障があると回答した患者は58.2%(重症以上の患者では67.2%)▼花粉症の症状があるときに仕事のパフォーマンスが落ちる57.3%(重症以上65.9%)▼花粉症の症状により集中力の低下を感じる58.8%(重症以上67.4%)―との結果が出ており、多くの花粉症患者が、勉学や仕事の生産性につながる項目で負の影響を感じており、特に重症(以上)の患者ではそれが顕著であった。

大久保教授はこうしたアンケート調査結果も踏まえ、花粉症のような致死的ではない疾患(治療)で重要なのは患者のQOL(改善)であるとして、ゾレアの労働/学習生産性低下等の改善効果を評価した。また、臨床試験における副作用では、ゾレア群161例のうち、肝機能を見る数値であるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加が2例、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加が1例に現れたのみで、いずれも軽度であったことから、副作用が少ないことも特長の一つに挙げた。

花粉症に対する治療としては、近年、舌下免疫療法が注目を集めてきた。大久保教授は、「舌下免疫療法は3~5年という長期的なスパンで(根本から)治すことを目的としているのに対し、ゾレアは瞬間的にIgEを消去することを目的としており、治すことを目的にはしていない」と両者の違いを解説し、人生のスパンで見て、どの段階でどういう治療をするべきかを考えるべきだと述べた。その上で、受験などの大事なシーンでゾレアを使う、という選択も出てくるだろうと例示した。

ゾレアの花粉症での用法・用量は、1回75mg~600mgを2週または4週ごとに皮下注射するとなっており、1回当たりの投与量は体重と総IgE濃度に基づいて細かく定められている。抗体製剤であるゾレアの現在の薬価は、皮下注150mgシリンジが4万6490円。仮に(1)体重65kg、IgE200であれば、300mgを4週間ごとに投与され、(2)体重65㎏、IgE700であれば、450mgを2週間ごとに投与されることになる。1カ月の薬剤費は、(1)の場合9万2980円、(2)の場合27万8940円となり、高額だ。

日本では承認と同時に最適使用推進GLも発出され、施設要件および患者要件が課されたが、11月の中医協総会では、このGLをもってしても国民病ともいえる花粉症で1人当たりの薬剤費が100万円を超えるケースが出てくることへの懸念が示された。

なお、2020年度の薬価制度改革では、ゾレアの花粉症への適応拡大を念頭に置いた効能変化再算定の特例(変更後の効能・効果に係る薬理作用類似薬がなくても、治療上の位置付けが類似する参照薬と比較して著しく1日薬価が高く、市場規模が著しく拡大すると考えられる場合)が導入され、薬価が引き下げられることが決まっている。

 

■行政トピックス

1.中医協総会1月15日
「使用ガイド付きの医薬品集」の診療報酬上の評価は見送り

中医協は1月15日の総会で「20年度診療報酬改定に係るこれまでの議論の整理」を取りまとめた。支払側の幸野庄司委員(健保連理事)が「今回改定のポイント」と位置付けていた、特定機能病院における「使用ガイド付きの医薬品集(フォーミュラリー)」の作成・維持を行う体制の評価は盛り込まれなかった。薬剤の適正使用への貢献や経済性を踏まえた後発品の使用推進などのメリットが考えられたが、診療側は診療報酬での評価に反対。支払側の一部にも「時期尚早」との意見があった。

2020年度診療報酬改定に向けた中医協の議論で、最初にフォーミュラリーが俎上に載ったのが、「医薬品・医療機器の効率的かつ有効・安全な使用等について」がテーマとなった19年6月26日。厚労省は、フォーミュラリーについて「厳密な定義はないが、一般的には、医療機関等において医学的妥当性や経済性等を踏まえて作成された医薬品の使用方針を意味するものとして用いられる」と説明。その上で、浜松医大や聖マリアンナ医大の院内フォーミュラリー、日本海ヘルスケアネットの地域フォーミュラリーの検討・運用体制や実績などを紹介した。

これに対し、委員からは「医療機関レベル、地域レベルで採用薬の検討の場があることはよいが、報酬の議論とは別ではないか」「地域で厳格化していく場合には、患者の個別性を制約するのではないか」「後発品の推進の観点からも進めていくべき」「院内や地域で着実に推進していくためには、何らかの算定要件に盛り込むというような診療報酬上の対応については必要」などの意見が出た。

12 月13 日の中医協総会において、厚労省は「フォーミュラリー」から「使用ガイド付きの医薬品集」に呼称を変更。医療機関等において医学的妥当性や経済性等を踏まえて作成された使用指針を含む医薬品集と定義した。

また、▼特定機能病院(n=80)のうち、21.3%(17病院)に「使用ガイド付きの医薬品集」が有る▼17病院において「使用ガイド付きの医薬品集」を作成している薬効群は、消化性潰瘍治療薬(64.7%)が最も多く、次いで糖尿病治療薬(35.3%)、高血圧治療薬(29.4%)、脂質異常症治療薬(同)、抗菌薬(17.6%)、不眠症治療薬(5.9%)の順▼17病院における導入効果は、後発品・バイオ後続品の使用促進(82.4%)が最も多く、病院の経営に貢献(70.6%)、患者の経済的負担の軽減(58.8%)、処方の統一化により医師・薬剤師の負担が軽減(23.5%)の順―などのデータを提示した。

その上で、「使用ガイド付きの医薬品集を試行的に推進する観点から、高度の医療の提供、高度の医療技術の開発等を実施する能力を有し、地域の拠点となる特定機能病院において、使用ガイド付きの医薬品集の作成・維持を行う体制を評価することについて検討することとしてはどうか」と提案した。

診療側は「医療機関レベルで検討の場があることは良いと思う。しかし、例えばある大学病院で大量に採用している医薬品で、万が一メーカーによる回収や急な市場撤退があった場合、果たして卸が速やかに納入できるのか。薬価基準に収載された医薬品について実質的な使用制限が設けられるのと同じことになるのではないか。高度な医療の提供等が求められる特定機能病院において経済性を重視した医薬品の選択が期待されているのか」(松本吉郎日医常任理事)と現時点で診療報酬に結びつけることに反対を表明。

支払側からは「作成・維持を行う体制を評価する前に、策定プロセスや策定委員会等の体制整備、使用ガイド付きの医薬品集の運用について一定の標準的な在り方をしっかり検討する必要がある」(吉森俊和協会けんぽ理事)との意見も示された。

 

■学会レポート

1.「AROの目指す方向を示すKAICA Trial」
-第40回日本臨床薬理学会学術総会-

第40回日本臨床薬理学会学術総会では、12月6日に『アカデミア発の医薬品等の開発において、AROで何が可能か』のテーマでシンポジウムがあり、東京女子医科大学八千代医療センター小児科の濱田洋通教授は「医師主導のハードルは下がったか?KAICA trialより」の演題で、ARO(Academic Research Organization)が主体的に実施する医師主導治験支援の課題と可能性について述べた。

このKAICA Trial は免疫グロブリン療法(IVIG)不応例の川崎病患者を対象にした医師主導治験。IVIG療法の単独群とIVIG療法+シクロスポリン(CsA)の併用群をPROBE法により比較する非盲検無作為化比較試験である。PMDA対面助言、治験研究費獲得、モニタリングやデータマネジメント等は千葉大学医学部附属病院臨床治験部が主導し、2年6カ月間に全国22病院で175例を集積した。その成績は19年3月7日発行のLancetオンライン版に掲載された。12週中の冠動脈異常発生率は単独群31%に対して併用群は14%であり、p=0.01という結果であった。良好な結果を受けて、製造販売承認申請を審査中である。本治験実施の前提として、和歌山県立医科大学の武内崇氏らの遺伝子解析により2つの遺伝子が川崎病の発症遺伝子であり、両遺伝子が関与する炎症活性経路をCsAが特異的に抑制することが明らかにされており、また、CsAは開発されて25年以上経過し小児の長期投与に実績があり、安全性情報は豊富であったことが挙げられる。

小児の急性疾患であることから保護者の承諾を得るハードルは高いが、ホームページなどを利用して治験広告を行ったなどで目標例数を達成し、同意取得率は74%に上った。治験成功は▼自ら治験責任者となる小児科医の熱意▼新規開発根拠の明確な説明▼治験を支えるアカデミアの若きCRC、スタッフの熱意によるものであると語った。シンポジウムの座長である千葉大学医学部の花岡英紀教授はAROには種々の可能性はあるものの人材育成など課題も多いとした。さらに花岡氏は「臨床研究に関わる支援人材の育成とキャリアパス」の演題において、本年2月に全国の国立大学病院を対象に行った調査研究を報告した。▼若手人材の活用は進んでいるが企業OBの中途採用が多い現状にある▼雇用身分が2つに限定されており、昇格制限、民間との給与格差がある▼専門職業務の人材育成は不可欠であると課題を挙げ、解決策として、千葉大学医学部では医療技術専門職の導入、定期的な評価とキャリアプランの策定、OJT研修と専門研修、メンター制度などの取り組みを実施しているとした。

多くの場合、製薬企業はその採算性からドラッグリポジショニングの治験に対して積極的ではない。リポジショニング薬のARO支援による医師主導治験は多くの課題を抱えつつも、難病・希少疾患患者に手を差し伸べるものとなる可能性が大きいであろう。

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