特ダネ+
特ダネ情報を独自のアンテナでお届け
製薬企業の記者会見やセミナー情報、行政関連情報などを国際医薬品情報からの提供記事として配信。
提供:国際医薬品情報 編集部

facebook facebook

■行政トピックス
1.中医協薬価専門部会 10月5日 厚労省、オプジーボ最適使用推進GL素案を提示
■セミナー便り
1.免疫学の復権を語る-先端医療振興財団:本庶佑理事長-
2.最新の革新しか保険償還されない-武田薬品:クリストフ・ウェバー社長-
■記者会見
1.薬価でなく価値と財源の議論を求める-EFPIA Japan:カーステンブルン会長-
■セミナー便り
1.理想の治療ができる基盤が整ってきた-東大大学院医学系研究科:門脇孝・糖尿病代謝内科教授-
2.関節症性乾癬を知って、関節炎の症状を伝えて-信州大学医学部皮膚科学教室:奥山隆平教授-

■行政トピックス

1.中医協薬価専門部会 10月5日
厚労省、オプジーボ最適使用推進GL素案を提示

厚生労働省は10月5日、中医協薬価専門部会に高額薬剤問題への対応策の柱の一つとして、「オプジーボ(非小細胞肺がん)最適使用推進ガイドライン素案」を提示し、年内に最終案を作成する方針を示した。併せて、同GLの内容を盛り込んだ保険適用上の留意事項通知を今年度内に発出する方針も示した。

同GLは、オプジーボ薬価の期中改定とともに、薬剤費抑制策の柱となるもの。厚労省が示したオプジーボのGL素案は、「施設要件のイメージ」および「患者要件等のイメージ」で構成。このうち施設要件のイメージでは、呼吸器やがん薬物療法の専門性のほか、副作用の診断や対応、承認条件(全例調査)への対応などについて検討しているとした。一方、患者要件等のイメージでは、投与対象患者のほか、間質性肺疾患や免疫反応に関連した副作用のマネジメント、病勢進行後の治療継続について検討しているとした。

また、厚労省は、GLに基づき作成する保険適用上の留意事項通知について、1.GLの実効性の確保2.経済性や医薬品の特性を踏まえた保険適用の在り方3.実臨床における医師の判断によって柔軟性を持たせる-の各観点から検討を加えると説明した。

これを受け、吉森俊和委員(協会けんぽ理事)は、「医師の裁量に十分配慮しつつも、GLの実効性をどのように担保するかが最大のポイント」と指摘し、医師の判断によってGLの定量的な事項と異なる処方をする場合には、その理由を診療報酬明細書摘要欄に記入することを励行すべきとした。

中川俊男委員(日医副会長)は「中医協で薬事承認審査と並行してGLを検討するとなっていたが、オプジーボの腎細胞がんの効能追加(8月26日付)とキイトルーダの悪性黒色腫の薬事承認(9月28日付)に関して検討は進んでいるのか。スピード感のない進捗状況だから、所管でない他の省庁の審議会から口を出されることになる」と厚労省を批判。山田雅信医薬品審査管理課長は「肝に銘じて取り組んでいく」と答えた。

松原謙二委員(日医副会長)は「ルールを作ったらそのままではないということ、ルールにはフレキシビリティがないと駄目だということ、保険者の立場からするとGLが担保されていることの3点が重要である」と指摘した。

 

■セミナー便り

1.免疫学の復権を語る
-先端医療振興財団:本庶佑理事長-

本庶佑先端医療振興財団理事長は10月12日、バイオ産業の展示会バイオ・ジャパン2016で「免疫学の復権」と題して講演。「従来、免疫力は感染症に対するディフェンスシステムと考えられてきましたが、それだけにとどまらず、非常に多くの病気、がん、神経疾患、糖尿病、動脈硬化、自己免疫疾患、再生医療と、免疫を使った新しい治療が望まれる時代に入ってきた」と語った。

その中で、免疫チェックポイント分子であるPD-1の発見、ニボルマブの研究開発を振り返り、「多分これからは抗PD-1抗体の治療はファーストラインで行われるのが最も有効であろうと考えられます。メラノーマについて最初からやると70%のサバイバルが見られます(未治療患者を対象としたCheckmate-066試験)。また、ケモセラピー(化学療法)やラジエーション(放射線療法)はホストの免疫系にダメージを与えるので、その前に免疫療法を開始すべきです。さらに結局効かないものをやるよりは最初から効くことをやる方がコストセービングになります」と述べた。

ニボルマブは高額薬剤問題の渦中にあるが、本庶理事長は「いま一番の課題はノンレスポンダーという一群の患者さんです。メラノーマでも初期からやっても30%の患者さんに効かない。この効く人と効かない人を見分ける有効なマーカーがまだ見つかっていません」とした上で、「このような課題を最も有効に解決する方法はマーカーを見つけるというよりは残りの30%に効くようにしてあげればいいわけでマーカーを探す必要はありません」とし、ミトコンドリアの代謝を制御するPGC-1αの活性化剤と抗PD-1抗体を併用することで抗腫瘍活性が伸びる可能性を示唆。実用化されれば「より多くの患者に効くようになり、抗体の量も減らせるのでコストセービングになる」と話した。

 

■セミナー便り

2.最新の革新しか保険償還されない
-武田薬品:クリストフ・ウェバー社長-

武田薬品のクリストフ・ウェバー社長は10月12日、バイオ・ジャパン2016で講演。「時価総額は世界で20位だったが、10年たってかなり下がった。競争が激しくなる中、何かしないといけない。世界的に競争力ある会社になるにはどうするか」と問題意識を語り、その上で重点領域を絞った背景を説明した。「最新の革新にしか保険償還されない。ならどうすれば最先端でいられるか。今までおよそ10の領域で研究してきたが、消化器(GI)、オンコロジー、中枢の3つの領域とワクチンに絞った。絞ることで最先端を走ることができる」と言う。他方、アカデミアやベンチャーとのコラボレーションの重要性を指摘。「領域を特化したので強力なパートナーシップを持ちたい」とし「ベンチャーやアカデミアを引き付けるために魅力的でありたい」と述べた。

マーケティング活動面では、世界の医薬品市場に占める国内市場の割合が減少していることから「グローバルでなければならない」と強調。「新興国には60億人の人口があって適切な医療を受けていない。そこに届ける」とし、「新興国でのアクセス戦略を策定している。10年、20年先に重要になる」と語った。

国内市場の現況は「大変革の時期。25年間、この業界で働いてきたが、このような急速な変化は見たことがない。ジェネリックへの移行がとても速い」とし、「新薬はジェネリックに比べてバリューがあるのか。プレミアムの価格が付くだけのイノベーションを生んでいるのか。イノベーションへの圧力が強い」と言う。ただ「強い研究、技術を日本は持っている」とし「新薬の将来に対しては楽観的である」と話した。

 

■記者会見

1.薬価でなく価値と財源の議論を求める
-EFPIA Japan:カーステン・ブルン会長-

欧州製薬団体連合会(EFPIA)は10月5日、記者会見を開催し、EFPIA Japanのカーステン・ブルン会長は特例拡大再算定、HTA(医療技術評価)、最適使用推進ガイドライン、保険適用上の留意事項通知、薬価の期中改定について「部分的なアプローチや臨時的な対応は、ある特定の高額医薬品が上市されたことへの対応策だとみられるが、ここから何とか市場の安定性と予見性を取り戻す道を切り開いてゆかないといけない。それに向けて重要視するのが対話だ」と語った。

ブルン会長は9月に開かれた革新的医薬品創出の官民対話ワーキンググループにEFPIAも参加できたことを前向きに評価。ただ、「対話は最初の一歩。対話から真のパートナーシップを求める」と続けた。これまでは政府案に産業界が反応するところにとどまっていたが、一緒にアイデアを出すところに移っていきたいという。

国内の薬価制度については「パッチワーク的なポリシーは長期的にリスクを生んでしまう。長期的にはすべてのステークホルダーが合意していると思うが、価値に基づいた制度にしなければならない。そこで我々のアイデアを出していきたい」とした上で「現在は完全に薬価の議論になっているが、価値の議論をしなければならないし、財源の問題を話し合う必要がある。例えば、C型肝炎治療薬は1年間の予算の枠組みで話をしていたが、10年で医療費抑制効果が出てくるので、財源のモデルとイノベーションの価値のところに議論を移してゆかないといけない。年度の予算があるのは分かるが、大きな視野で見てゆかないといけない」と述べた。

会見に同席したEFPIAのリカルト・ベルクシュトローム理事長は「抗がん剤でもイノベーションが爆発的に進んでいる。すべての国で起こっていることはHTAがまったく意味を持っていないことだ。お互い併用して使っていくことがあるわけで単剤で治療することがない。オンコロジーにおいても新しいプライシングモデルが必要になってくる。欧州では様々な国で話し合っている」と話した。

 

■セミナー便り

1.理想の治療ができる基盤が整ってきた
-東大大学院医学系研究科:門脇孝・糖尿病代謝内科教授-

ノボノルディスクファーマが10月13日、メディアセミナーを開催し、東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科の門脇孝教授が「トレシーバ注の新しい臨床的エビデンスと投与タイミングの柔軟性がもたらす臨床的な意義」と題して講演を行った。トレシーバ(インスリンデグルデク)は9月28日、用法・用量の変更の承認を厚生労働省から取得し、「注射時刻は毎日一定とする」から「注射時刻は原則として毎日一定とするが、必要な場合は注射時刻を変更できる」へと記載が変わった。

門脇教授は2型糖尿病患者を対象とした国内4060試験の結果を示しながら、トレシーバのフレキシブル投与群(合意した投与時刻から±8時間の範囲で投与することが可能)は、HbA1cを指標とした26週にわたる血糖コントロールの改善において固定した投与法に対して非劣性を示したことを紹介。また、試験では2型糖尿病患者の投与時刻に対するアドヒアランスは高かったが、フレキシブル投与群の患者のうち72.9%が2~4時間、47.6%が4~8時間、投与時刻を1回以上変更していた。やむを得ない事情で注射時刻を変更しなければならない時もあり、フレキシブルに投与タイミングを変更できる注射剤の登場について門脇教授は「患者中心の医療に向けた意味ある一歩になった」と評価した。

持効型インスリンにはサノフィのランタス(インスリングラルギン)とイーライリリーのインスリングラルギンBSがあるが、「インスリングラルギンは市販後の臨床試験がいくつか行われていて、その有効性、安全性は一定のエビデンスが得られて受け入れられていると思う。トレシーバはずっと後に出てきたので、その意味でのエビデンスは少ない。一方、トレシーバは治験で夜間低血糖が少ないことが示されていると思う。今回はそれに加えて、8時間ずらすことが可能になって患者さんの不安を和らげることができることになった。その意味での新しいエビデンスが付け加わった」と解説。

インスリン治療の今後の課題について「実際にインスリン導入は遅れるということがよく知られていて、なぜ遅れるかというと、注射を導入する際の支援の問題だ。支援スタッフの育成を行っているのはそのためで、支援スタッフなどに対する保険診療上の手当てを付けていただけるとますますインスリン治療が導入しやすくなると思う」とした上で、「いまの持効型インスリンは理想に近づいてきたが、まだ理想ではない。経口投与のインスリンを含めて開発していると伺っているので進歩を待ちたい。GLP-1受容体作動薬とインスリンはそれぞれ重要で使い分けされるもので、以前に比べると糖尿病の患者さんに理想の治療ができる基盤が整ってきた。さらに努力していきたい」と続けた。

 

■セミナー便り

2.関節症性乾癬を知って、関節炎の症状を伝えて
-信州大学医学部皮膚科学教室:奥山隆平教授-

10月5日、日本乾癬学会、日本乾癬患者連合会、協和発酵キリン、田辺三菱製薬、鳥居薬品、日本イーライリリー、ノバルティスファーマ、マルホ、ヤンセンファーマ共催でメディアセミナー「皮膚症状と関節症状を合わせ持つ疾患『関節症性乾癬』」が開催され、信州大学医学部皮膚科学教室の奥山隆平教授と聖路加国際病院リウマチ膠原病センターの岸本暢将医長が講演した。

奥山教授によると、2002年に刊行された中山書店の最新皮膚科学体系では乾癬のうち関節症性乾癬が占める割合は1.2%とされていたが、日本乾癬学会の疫学調査では12年に7%と報告されている。国内の関節症性乾癬の患者が増えているのではなく、医療者側の診断能力が高まり、見落とされていた患者に診断が付くようになったためという。

関節症性乾癬は多くの場合、皮膚症状が先行し、関節症状が遅れて発症する。皮膚症状から10年以上経過して関節症状が出ることもある。奥山教授は医師にとって「課題は乾癬のうちどれが関節症性乾癬になるのか、それを判断するためのマーカーがないこと」と指摘。「乾癬の患者さんに関節症性乾癬の場合、関節のどこが傷みやすいかお伝えして、注意してもらいながら診療を進めていくしかない」と続けた。

関節症性乾癬の関節炎は手や足の指の関節に起こりやすい。その他、脊髄や四肢に現れる場合もある。奥山教授は乾癬患者に対して「関節症性乾癬もあるのだと知っていただき、関節炎が起こってきた時に医師にその症状を訴えていただきたい」と強調。「医師も伝えていただくことで適切な対処ができるようになる」と話した。

岸本医長も関節症性乾癬のうち皮膚症状が先行する場合が多く、「多くの患者さんが皮膚科に通われている。ただ、患者さんは関節が痛くても皮膚科の先生に言わない。なので、整形外科に行っていたりする。ただ、整形外科では皮膚のことを言っていない」といったケースを指摘し、皮膚科とリウマチ科(整形外科)のコラボレーションの重要性を強調した。

セミナーでは日本乾癬患者連合会の木戸薫氏も講演。生物学的製剤の登場で患者の症状は軽減しQOLは向上したが、高額なため経済的に負担が大きいと指摘。高額療養費制度を利用しても月々の支払いが負担になるケースもあるという。

そのためバイオ製剤の使用に関して患者がためらう場合もあるが、その場合、岸本医長は「3カ月やってみて効果を見ましょうと言う」、奥山教授は「私は6カ月やってみましょうと言う。バイオ製剤はおしなべて効果が高いなという実感を医療現場は持っているので、特に関節症性乾癬の場合は、関節の変形が出る前にやってみてはどうかと提案している」と話した。なお、日本イーライリリーのトルツの発売が遅れているが、奥山教授は「すでに4剤(レミケード、ヒュミラ、ステラーラ、コセンティクス)あって、5剤目(ルミセフ)が出た。トルツが止まってしまったのは残念だが、待つ余裕はあるので待つ。トルツが効く患者さんもたくさんいるので使えるようになると非常に良い」と語った。

関連記事-こちらもどうぞ

TOP ↑