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■日医トピックス
1.高額医薬品への懸念相次ぐ-日本医師会代議員会-
■セミナー便り
1.LEADER試験の好結果で「GLP1再考を」-関西電力病院:清野裕総長-
2.HCV感染透析患者にダクラ/アスナ併用療法 -広島大学大学院:茶山一彰教授-
3.高齢者へ肺炎球菌ワクチン啓蒙が必要-国立国際医療研究センター:杉山温人呼吸器内科医長-
4.低用量をプラセボと想定した対照群の設定は慎重に -PMDA:安藤友紀スペシャリスト(生物統計担当)-

■日医トピックス

1.高額医薬品への懸念相次ぐ
-日本医師会代議員会-

日本医師会定例代議員会が6月25、26の両日、文京区の日医会館で開催された。この中で代議員から再三質問が出たのが、オプジーボ(ニボルマブ)などの高額医薬品が公的医療保険財政に与える影響。役員選挙で3期目の当選を果たした横倉義武会長は、所信表明の中で、保険収載の在り方において、「中医協の判断」を高めていく一方で、「新たなルールやガイドラインを作り、費用対効果にも見合った適切な処方に努めていく必要がある」と訴えた。

執行部に対する質疑では、オプジーボを例に「高額療養費制度が適用されることで対象患者の激増も予想される。同時に財政破綻も現実味を帯びてくるのではないか」、「医師会のみならず、広く国民的な議論が必要な時が来ているのではないか」などの意見が出された。

これに対し中川俊男副会長は、中医協の判断機能を飛躍的に強化し、薬事承認から薬価収載までの期間や、効能追加した医薬品の薬価の在り方など、薬価収載ルールの見直すよう厚労省に働き掛けていくと表明。

併せて、適正使用ガイドラインなどを整備して、「高い専門性を持った医師が適切な処方をすることが不可欠である」と述べ、医師側の対応も求められると強調した。

また、「薬価を下げるのか、薬の適応を絞るのか、あるいは保険の適用外とするのか」との質問に対して、中川副会長は「薬価を下げることはもちろん、医薬品によっては適応も絞るべきだと考えているが、医薬品を保険外にすることは考えていない。保険財政を揺るがす可能性は十分にあるが、保険財政を立て直す手段はまだまだある。公費を増やし、保険料率を公平化するなどの手段で兆円単位の財源が確保できる。これらをやり尽くしても財政がもたないという時に、初めて保険外という可能性が出てくる。まだ打つ手がある段階で、日医としては薬を保険外にすることは全く考えていない」と、明言した。

さらに中川副会長は、医薬品のイノベーションを評価しつつ、費用対効果評価等も取り入れ、医療保険財政の持続性を担保できる合理的なルールを作って行く必要があるとした。高額医薬品をひとくくりにするのではなく、薬の種類や目的によって分類すべきとの考えも示した。例えば、ソバルディやハーボニーなど、重篤な疾患の治癒を目指す薬については、従来の治療による生涯医療費との比較を含めて議論すべきとし、オプジーボのように延命効果を期待する薬は、終末期医療の在り方も含め国民と共に丁寧な議論を行うことが必要だとした。一方、レパーサのような生活習慣病治療薬については、従来の医薬品では対応できない範囲に限定すべきといった議論を詳細に尽くすべきと述べた。

 

■セミナー便り

1.LEADER試験の好結果で「GLP1再考を」
-関西電力病院:清野裕総長-

広く糖尿病治療薬で行われている心血管アウトカム試験で、ノボ ノルディスク ファーマのGLP1製剤ビクトーザが、プラセボに対する優越性を示した。優越性を示したのはSGLT2阻害剤ジャディアンスに続き2剤目。関西電力病院の清野裕総長は6月27日、ノボ社主催のプレスセミナーで、国内では、あまり普及していないGLP1製剤の位置付けを再考する必要性を示し、「早期に患者を見極めて、非常に適した症例には早めに導入してはどうか」との考えを示した。

糖尿病治療薬で心血管アウトカム試験が行われるようになったのは、ロシグリタゾン(アバンディア)使用による心筋梗塞の有意な上昇と、心血管死リスクの上昇との関連を示した論文発表を受けて、糖尿病治療薬によって心血管イベントを抑制しているはずが、逆にリスクが上昇しているのではないかとの懸念が高まり、FDAが2008年にガイダンスを発行したのがきっかけ。

これを受け糖尿病治療薬メーカー各社は、心血管リスクを有する2型糖尿病患者(2次予防)を対象に、主要複合心血管イベントの初回発現までの期間を指標として、プラセボと比較して心血管イベントが増えない(非劣性)ことを証明するための大規模試験に取り組んでいる。標準的な治療を受けているハイリスク患者に、治療薬またはプラセボを上乗せし、血糖値については、両群とも最善の治療が行われている。

すでにいくつかの試験結果が論文発表されており、DPP 4 阻害剤オングリザ(試験名= SAVOR-TIMI 53)、ネシーナ(EXAMINE)、ジャヌビア/グラクティブ(TECOS)の3剤では、プラセボに対する非劣性が証明されている。そんな中、15年11月にSGLT2阻害剤ジャディアンスのEMPA-REG OUTCOME試験の結果が論文発表され、初めてプラセボに対する優越性が示されたことが注目を集めた。

EMPA-REG試験には、約7000人が参加、日本人を含むアジア人が22%含まれている。糖尿病罹病歴10年以上が全体の57%を占めた。試験結果によると、主要評価項目(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)では、プラセボに対して有意に14%低下させた。このうち非致死性心筋梗塞では有意な低下は見られず、非致死性脳卒中は増加しているにもかかわらず、心血管死が有意に38%低下した。また、副次的評価項目の心不全による入院も有意に35%低下した(表参照)。

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ジャディアンスに続いて主要評価項目でプラセボに対する優越性を示したのがビクトーザであり、LEADER試験の結果が今年6月末に論文発表された。LEADER試験には、約6000人が参加、うちアジア人が8%を占めるが、日本人は用量の違いから参加していない。糖尿病罹病歴は9.3年。

試験結果によると、主要評価項目(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)では、プラセボに対して有意に13%低下させた。このうち非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中では有意差は出なかったものの低下傾向が見られ、心血管死は有意に22%低下した(表参照)。

2つの試験を比較して清野総長は、SGLT2阻害剤、GLP1製剤という作用機序の違いから、プラセボとの差が付き始めるまでの期間に違いがあることや、イベントごとに効果に違いがあることを指摘。「ジャディアンスは3カ月くらいから非常に差が付いており、薬剤を投与することで非常に改善する可能性があるグループが居るのではないか。ビクトーザは明らかに差が付くのが1年半くらいからで、その後、時間の経過とともに差が開いていくのは、血管に対する好影響が少しずつ現れてくるからではないか」と推測。

「ジャディアンスで心不全による入院、心血管死が非常に抑えられているのは、血行動態に対して非常に好影響を及ぼし、ビクトーザは動脈硬化に対して抑制的に働いたのではないかという推論が成り立つ」と続けた。

両剤の使い分けについては「心不全があればジャディアンスの適応になるのではと思う。ただし、SGLT2阻害剤では、きっちり水分を補給することが必要だが、心不全では取り過ぎてもいけないので、そうした生活指導を十分できる人に自信を持って使われるべき」との見解を示した。

一方、心血管アウトカム試験で、非劣性の証明にとどまったDPP4阻害剤の3剤については「かなり重症例を対象としているので、もっと軽症例を対象にやってみるとか、いろいろなことをやってみないと(優越性を示すのは)難しいと思う」と述べた。

 

■セミナー便り

2.HCV感染透析患者にダクラ/アスナ併用療法
-広島大学大学院:茶山一彰教授-

日本肝臓学会の「C型肝炎治療ガイドライン」改訂を受け、ブリストル・マイヤーズスクイブは6月27日、プレスセミナーを開いた。この中で、下落合クリニックの菊地勘院長は「HCV感染透析患者での抗ウイルス療法の施行率は、一般人と比べて非常に低率で、未治療で経過している人が多い」、広島大学大学院消化器・代謝内科学の茶山一彰教授は「HCV感染透析患者においてダクラタスビル/アスナプレビル(ダクルインザ/スンベプラ)併用療法は腎機能正常者と同等の効果と安全性が確認された」と指摘。HCV感染透析患者におけるダクルインザ/スンベプラ併用療法の普及に期待を示した。

今年5月に改訂された「C型肝炎治療ガイドライン」には、「腎機能障害・透析例」など、いわゆるスペシャル・ポピュレーションについての記載が新たに盛り込まれた。国内で使用できる遺伝子1型HCVに対する3つのIFNフリー療法のうち、ハーボニーは、重度の腎機能障害(eGFR<30ml/分/1.73m2=CKDステージ4、5)または透析を必要とする腎不全(ステージ5D)患者が禁忌。

ヴィキラックスは、腎機能障害・透析患者における使用は制限されていないが(5月改訂時)、国内第3相試験ではeGFR<50ml/分/1.73m2未満の腎障害患者を対象から外しており、ステージ4以上でのエビデンスがない。

一方、HCV感染透析患者におけるダクルインザ/スンベプラ併用療法では、良好なウイルス学的効果を得られることが、日本人を対象とした2つの検討により示されており、これを根拠に改訂ガイドラインでは、ステージ4以上の症例にダクルインザ/スンベプラ併用療法を推奨している。

菊地院長によると、透析患者数は32万人。うち透析導入時のHCV抗体陽性率は約7%で3万人程度、HCVのRNAウイルス陽性者は2万人程度という。合併症などを勘案して2万人全員ではなく、1万~1万5000人がダクルインザ/スンベプラ併用療法の対象になるといい、1.肝硬変、肝がんへの進展予防と生命予後の改善 2.腎臓移植時の生着率の上昇 3.移植後の生命予後の上昇 4.透析施設における新規感染、有病率の低下-などが期待できるとした。

茶山教授は「まだ論文発表していないが、我々の検討の成績でも、透析の人の方が早くウイルスが消えるし、皆さん治っており、今後HCV感染透析患者は、どんどん治療をして、治してゆきましょうという時代が来ている」と述べた。

 

■セミナー便り

3.高齢者へ肺炎球菌ワクチン啓蒙が必要
-国立国際医療研究センター:杉山温人呼吸器内科医長-

肺炎死亡者を減少させるためには高齢者におけるワクチン接種の重要性について一層の啓蒙が必要と訴えるのは、国立国際医療研究センターの杉山温人呼吸器内科医長。ファイザーが6月30日開催したプレスセミナーで講演した。

杉山氏は、肺炎球菌ワクチン接種率が、米国では約65%(12年)、英国で約70%(14年)に対し、日本では28%(14年、日本臨床内科医会調査)にすぎないことや、14年11月に実施したファイザーのインターネット(14年)調査(n=600)では、健康寿命を損う疾患のトップはがんで53%、認知症が51%などに比べ、肺炎は8%と極端に少ないことを指摘。

同調査で、肺炎球菌ワクチンを接種したことがある65歳高齢者は3%、70歳では14%にすぎなかった。また、肺炎にかかる可能性は、65歳および70歳の全体では、「感じている」が7%、「あまり感じていない」が48%、「感じていない」が45%となり、肺炎やワクチンへの意識が希薄なことが浮き彫りにされ、杉山氏は、啓蒙の必要性を強調した。

現在、国内では、13価結合型ワクチンのプレベナー13(ファイザー)の高齢者用の定期接種について厚生科学審議会予防接種ワクチン分科会で検討中。一方、23価多糖体ワクチンのニューモバックス(MSD)は、14年10月から高齢者用に定期接種の対象となった。

杉山氏は、重複しない血清型も多いので、両ワクチンの接種を推奨するとし、特に基礎疾患を持つ高齢者は、定期接種年齢まで待たずに接種することを推奨。接種したことがあっても、再接種を検討するのも良いとした。

 

■セミナー便り

4.低用量をプラセボと想定した対照群の設定は慎重に
-PMDA:安藤友紀スペシャリスト(生物統計担当)-

6月9日に慶応大学医学部において「医師主導臨床試験における生物統計学」と題するセミナーが開催された。PMDAの安藤友紀スペシャリストは、経験に基づく個人的見解とした上で、1.医薬品の審査と生物統計2.薬事戦略相談でのポイント-を軸に説明した。

1.については、「臨床試験のための統計的原則」(E9)の主要事項について解説。「例数設計において、企業がリスクを負うという理由で検出力を65%などとする試験実施計画書を見ることがあるが、参加する被験者を考慮して、検出力は慣例の80~90%とすべし」とした。

一般に目標例数は、期待される効果、期間内に集積できる例数などを考慮して開発戦略の中で総合的に決められるものである。β=0.2(検出力=80%、〔第一種の過誤=α、第二種の過誤=β、検出力=1-β])とすることで、期間内の目標例数確保が困難となり期間延長の結果、期待した成績が得られないリスクが発生することもある。

E9では慣例として第一種の過誤は5%(α=0.05)以下、第二種の過誤は10~20%(β =0.1~0.2、検出力=80~90%)に設定されるとしているが、第一種、第二種の過誤とも慣例とは異なる値を用いることも許容される場合があり、むしろ好ましい場合もあり得るとも記している。

開発戦略として、緊急性が高く、かつ有効性が高い医薬品と位置付けて、例数設計ではα=0.1、β=0.35とするのも一つの方策であろうか。

2.の薬事戦略相談でのポイントとしては、「低用量をプラセボと想定した対照群の設定は慎重にすべし」との考え方を示した。「低用量をプラセボ扱いとすると差が出ないことが案外多く、失敗が多い」とした。

医師主導臨床試験には、既存治療のない領域も多く、また患者の期待が大きいだけに、効くかもしれないプラセボ扱いの低用量群を対照として試験への参加意識を高めようとする意図は理解できるが、強い「プラセボ効果」によって有意差が得られないリスクも高くなる。特に自覚症状を主要評価項目とする場合には留意すべきである。なお、プラセボ効果とは、ある程度の効果が知られている治療であれ、全く効く要素のない治療であれ、治療を受けていることに正の反応をする効果をいう。

また、安藤氏はPMDAの最近の取り組みとして、E 9 の補遺とCDISC(Clinical Data Interchange Standards Consortium)について説明。E9の補遺については、現在検討中で、今年中にもドラフトを示したいとした。補遺のポイントは、Estimandと感度解析であり、製薬協データサイエンス部会などで検討されてきた。

2020年4月の本格導入に向け、今年10月1日からはほとんどの臨床試験でCDISC標準に準拠した電子データの受け付けが開始される。経過措置期間中の申請様式については製薬企業に委ねられており、既に製薬企業とCROは、これまでに集積してきた臨床試験データのCDISC対応が急務として、データ変換作業を進めている。PMDAにおいても審査体制の強化とデータ解析技術の向上が求められており、安藤氏はCDISC対応へ強い決意を示した。

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