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■行政トピックス
1.中医協薬価専門部会 5月31日 長期収載品、後発品と同額化に慎重意見
■記者会見
1.延命効果による経済価値等も薬価で評価を-製薬協:畑中好彦会長-
2.新薬創出加算の廃止「制度を気安く弄んではいけない」-EFPIA Japan オーレ・ムルスコウ・ベック会長-
■セミナー便り
1.クローン病3剤目の抗体薬「効果減弱例に」-東邦大学医療センター佐倉病院:鈴木康夫教授-

■行政トピックス

1.中医協薬価専門部会 5月31日
長期収載品、後発品と同額化に慎重意見

中医協薬価専門部会は5月31日、薬価制度抜本改革に向け、「長期収載品の薬価の在り方」をテーマに議論した。先発品と後発品との薬価の差額を患者負担とする案、いわゆる参照価格制度には両側そろって反対。また、先発品の薬価を後発品まで引き下げる案には、「同額」とすることに慎重意見が大勢を占めた。一方、支払側からは、後発品への置換率に応じた追加引き下げルール(Z2)の適用について、後発品上市から5年の猶予期間が設けられていることを疑問視する意見が出た。

5月17日の社会保障審議会医療保険部会に続き改めて薬価専門部会でも「先発品価格のうち後発品に係る保険給付額を超える部分の負担の在り方」がテーマとなった。

参照価格制に対して、中川俊男委員(日医副会長)は「論外」、幸野庄司委員(健保連理事)は「排除すべき」と切り捨てた。先発品の薬価を後発品まで引き下げる案に対して、中川委員は「全く価格を同じにするのではなく、両方とも次第に下げていくべき」と指摘。松原謙二委員(日医副会長)は「先発品企業は副作用の情報収集など、さまざまな義務を負っているので、例えば同じ価格ではなく後発品薬価の10~20%増しに設定するなど、後発品の価格を基に義務を負っている部分を給付し、安定供給に資するようにしてはどうか」と提案した。

吉森俊和委員(協会けんぽ理事)も「後発品の最大の強みである価格面での差がなくなると、患者の中には先発品を優先して使う人が相当程度いるだろう」と述べた。これを踏まえ、同省保険局の中山智紀薬剤管理官は「ある程度段階的な措置を含めて検討していく必要があるだろう」との見解を示した。

このほか厚労省は、後発品が上市されてから5年以上経過した後の置換率に応じて特例引き下げ分(1.5~2%)を設けるZ2を検討課題に挙げ、「後発品の数量シェア80%目標の達成を目指すことも踏まえて、引き下げ等の適用期間も含め、その在り方についてどう考えるか」と提起。

吉森委員は「置き換えを加速させる意味で5年という経過措置の妥当性、もう少し早くできないか、必要に応じて見直していくことも検討課題」と指摘。幸野委員も「新薬創出等加算を残す方向なら、長期収載品の薬価の切り込みを強化してZ2を見直していくべき。5年間猶予するのではなく、後発品が上市されたらその時点で適用するというようにメリハリをつけてはどうか」と提案した。

後発品数量シェア80%目標に関して、中川委員は「バイオ医薬品とバイオシミラーを除外して計算する見方もあるのではないか」としたほか、「長期収載品とオーソライズドジェネリックに違いはあるのか。先発品企業大手が長期収載品を手放す動きが加速している中で、後発品数量シェア目標をどう考えればいいか迷う。目標設定の考え方も変更する必要があるように思う。長期収載品とほぼ近い後発品がどんどん出てくるようなメーカーとしての目標があってもいいのではないか」との認識を示した。

 

■記者会見

1.延命効果による経済価値等も薬価で評価を
-製薬協:畑中好彦会長-

日本製薬工業協会の畑中好彦会長(アステラス製薬社長)は5月25日の定例記者会見で、新薬の薬価を決定する際に、新薬がもたらす社会・経済的価値の拡大など「社会的便益」を評価項目に追加すべきだと強調した。製薬協として、従来からイノベーションが適切に評価される仕組みを訴えてきたが、その具体的な内容に踏み込んだもの。将来こうした考え方を反映した薬価算定方式案を提案したい考えだ。

畑中会長は、新薬がもたらすイノベーションには、医療的便益(新効能、効果増強、安全性向上、利便性向上、QOL改善)と、社会的便益(社会保障費削減、健康寿命延伸、社会・経済的価値の拡大)の2つの側面があり、現行、薬価算定の際には、医療的便益のうちQOL改善や、社会的便益の各項目が評価されていないと指摘。「すべての項目がイノベーションであり、現在よりも幅広い視点からイノベーションが評価されるべきだと考えている」と訴えた。

社会的便益の具体例としては、1995年~08年に革新的医薬品によって国民1人当たり約0.5年の延命効果がもたらされ、その労働生産性などを計算すると、日本全体で9.8兆円の経済価値が創出されたとの製薬協・医薬品産業政策研究所の試算結果を紹介。「本来は評価されるべき項目だ」と述べた。

昨年末に政府が取りまとめた薬価制度抜本改革基本方針に基づき、現在、中医協で個別ルールの議論が行われているが、製薬協の新たな薬価算定方式案の提示時期について畑中会長は「現時点でこのような方式で算定すべきというところまで製薬協として案を持っていない。今後、内部で検討を進めながら提案していきたい」と述べるにとどめた。

現行の薬価算定方式のベースとなっている類似薬効比較方式については、「現在有る標準治療あるいは幅広く使われている治療に対する便益を測る手段としては極めて有効な考え方」との見方を示した。一方、原価計算方式については「特に比較する医薬品がないという本来の意味でのイノベーションを起こしたような薬剤にはふさわしくないのではないか」とし、△その疾患に対して行われている他の治療手段の技術コスト△類似の疾患にある薬剤の評価の方式-などを使いながら評価するのが妥当ではないかとの考えを示した。

 

■記者会見

2.新薬創出加算の廃止「制度を気安く弄んではいけない」
-EFPIA Japan オーレ・ムルスコウ・ベック会長-

EFPIA Japan(欧州製薬団体連合会)のオーレ・ムルスコウ・ベック会長は5月31日、クインタイルズIMSと共同で実施した国内医薬品市場の成長予測を発表する会見で、新薬創出・適応外薬解消等促進加算(以下、新薬創出加算)の撤廃案について「制度を気安く弄んではいけない」と話した。新薬創出加算が2010年に導入されて以降、ドラッグラグ解消に役立ち、EFPIAやPhRMA(米国研究製薬工業協会)加盟企業の国内における臨床試験や臨床試験実施施設数の増加につながった実績に触れ「短期的に数年間の予算だけを考えて制度をやめ、3年後にまた開始すると言っても、一度壊れたものはなかなか元に戻らない。非常に健全な医薬品開発の環境が日本では出来ていると思う。開発環境を損なってはいけない」とした。

EFPIAの推計によると、国内医薬品市場は 1.新薬創出加算対象品目の拡大(18年以降100%) 2.新薬上市成分数が年間50成分 3.やや遅い後発品80%の達成 4.乖離率が大きい長期収載品や後発品に対する毎年改定 5.ピーク時売上高5000億円の画期的新薬の上市-を前提にした楽観的なシナリオでさえ15年から26年の年平均成長率はマイナス0.31%となる。基本シナリオではマイナス1.50%、新薬創出加算が撤廃される縮小シナリオではマイナス2.54%である。ベック会長は「市場におけるプラス成長が新薬開発企業の投資のために非常に重要だ」と述べ、他の先進国の年平均成長率が2~5%となる見通しの中、国内の成長率が低いままであれば、日本への投資順位が下がってしまうと懸念した。

加えて、新薬創出加算の恩恵は「外資だけではない」と指摘。同加算の加算額は内資系515億円、外資系545億円、対象企業は内資系52社、外資系38社、品目数は内資系378品目、外資系450品目となってしていることを示した。

なお、会見では原邦之EFPIA Japan薬価経済委員会委員長が「イノベーションを評価する余地はまだある」として、後発品浸透策による薬剤費へのインパクトを発表。新薬創出加算による薬剤費の増分は年間4380億円。一方、後発品浸透施策による薬剤費の削減分は1兆3480億円と推計される。イノベーションを評価する増加分と後発品浸透策による削減分の間に1兆円のアンバランスがあるとした。

 

■セミナー便り

1.クローン病3剤目の抗体薬「効果減弱例に」
-東邦大学医療センター佐倉病院:鈴木康夫教授-

東邦大学医療センター佐倉病院消化器内科の鈴木康夫教授は5月29日、ヤンセンファーマ主催のメディアセミナーでクローン病を適応症とする3剤目の抗体薬ステラーラ(一般名ウステキヌマブ)の位置付けについて「インフリキシマブ(製品名レミケード)やアダリムマブ(ヒュミラ)を継続的に使用している中で治療に満足している人でも2年から3年すると40%の効果の減弱例が出てくる。そうした患者の対応法としてこの治療法を導入する可能性がある」と述べた。

クローン病は炎症性腸疾患の一種で、口腔から肛門まで消化管のすべての部位に炎症や潰瘍が起こる可能性がある。症状は下痢、腹痛、体重減少、発熱などがある。国内の患者数は鈴木教授によると6万9000人と推計され、15歳から35歳の間に発症する人が多い。

現在のところ、完治はせず、治療により症状が治まった状態である寛解を目指すが、寛解しても再発・再燃を繰り返すことから鈴木教授は「患者は先々に不安感を持っている」と指摘。「できるだけ自分が受けている治療で長期的な良い状態がしっかり維持できることを求めている」とした。治療法には栄養療法、薬物療法、外科治療があり、薬物療法は重症度に応じて選択され、大まかに言うと、軽症は5-ASA(例えばメサラジン製剤)、軽症から中等症はステロイドやメサラジン製剤などの既存治療で効果不十分な場合、生物学的製剤の使用が考慮される。

国内においてはクローン病を適応症とした生物学的製剤として02年にレミケード、10年にヒュミラ、17年にステラーラが承認された。開発品では武田薬品のエンティビオ(べドリズマブ、国内第3相)などがある。

ステラーラの審査報告書では機構から生物学的製剤の中で第1選択薬として積極的に推奨する根拠はないが、抗TNF製剤と作用機序が異なることから治療選択肢の1つとなり得るとされているが、鈴木教授は「この治療法が最初から選択されるか従来の抗体製剤を選択するかに関することもこれから数年かけて使い方の順位まで見極めていく」と言う。

なお、講演ではクローン病患者の名良之繭子氏も登壇し、10代の頃に発症していたが、診断がつくまでに数年かかった経験を語った。鈴木教授は「親にも言いにくいとか年齢が自分の身体的な異常に関して明らかにすることが難しい年頃だから、その辺がクローン病の診断にたどりつくまでに時間がかかり病気が進んでしまう大きな要因」とした上で「本当はクローン病も高校生くらいには学校で教えてもいいかもしれない。いまの状況だと保健室の先生さえクローン病のことを分かっていないので、そういう環境づくりは大事」と語った。

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