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■行政トピックス
1.中医協総会 3月29日 調剤報酬改定、目玉のかかりつけ指導料見直しへ
2.偽造品流通防止のための検討会 3月29日 GDP、省令での対応を念頭に検討
3.がん検診のあり方検討会 3月27日 高濃度乳房問題への対応で議論
■セミナー便り
1.4月から日本初の「減酒」外来を開始-久里浜医療センター:樋口進院長-

■行政トピックス

1.中医協総会 3月29日
調剤報酬改定、目玉のかかりつけ指導料見直しへ

中医協は3月29日の総会で、次回18年度調剤報酬改定に向けた議論を開始した。支払側委員から、前回16年度改定の目玉となった「かかりつけ薬剤師指導料」について、早くも要件見直しを求める意見が飛び出したほか、診療側の医師の委員からは、院外と院内処方の調剤報酬に開きがあることを問題視する意見が続出した。日本薬剤師会は守勢に立たされる場面が目立ち、厳しい改定を予感させる幕開けとなった。

16年度改定では、「薬剤服用歴管理指導料」(1回につき41点、お薬手帳なし34点)を見直し、かかりつけ薬剤師の関与で「かかりつけ薬剤師指導料」として70点(1回につき)、それ以外の薬剤師では「薬剤服用歴管理指導料」として38点(2回目以降、お薬手帳持参)および50点(初回)に改めた。初回より2回目以降を低い点数設定にしたのは、お薬手帳の内容を確認することで、患者の状態を速やかに把握でき、効率的な業務を進めることができる点を考慮したため。

新設されたばかりの「かかりつけ薬剤師指導料」について、幸野庄司委員(健保連理事)は、「現場では、かかりつけ薬剤師を取りにいく感覚になっており、これは違う。やはり患者からあなたにかかりつけ薬剤師になってほしいという人がなるべきで、その点から要件を見直していくべき。例えば、多剤服用している人、頻回に薬局を訪れる人、高齢者、認知症の疑いのある人などの要件を付けるべき」と、従来の要件に追加して、算定対象患者層を絞り込む必要性を訴えた。

安部好弘委員(日薬常務理事)は「幸野委員の意見に賛同する。あまり罹患しない人などに対してどんどんかかりつけ指導料を算定することに歯止めをかける必要がある」と同調した。

また幸野委員は、50点(初回)/38点(2回目以降、お薬手帳持参)と点数差を設けたことについて、「薬局側からすれば、患者がお薬手帳を持ってこなければ、高い調剤報酬になる。性善説に立てば、お薬手帳を持ってくることを勧めるのが筋だが、うがった見方をすれば、お薬手帳を持ってこなかったから点数が取れるという仕組みになっており、気になっている」と述べ、実態を調査するよう要請した。

一方、これまでも診療側の医師委員が問題視してきた院外と院内処方の調剤報酬の開きについて厚労省は、「かかりつけ薬剤師・薬局での調剤」の方が、「院内調剤」よりも、「服薬情報の一元的・継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導」「多剤重複・相互作用の防止、残薬への対応」「副作用のフォローアップ」「薬について相談できる顔の見える関係」「多職種と連携した対応(かかりつけ医等へのフィードバックなど)」の点で、患者メリットが大きいと指摘した上で、「かかりつけ薬剤師・薬局での調剤」の算定点数は、「院内調剤」より6.6倍高いとの比較結果を例示。

これに対し、診療側の医師からは、「患者メリットの項目を一つ一つ見ても(両者にメリットの)差がないように見える。6.6倍の差は、患者に向き合って、ていねいな医療を行っている、かかりつけ医のモチベーションを削ぐ」(松本純一日医常任理事)、「(患者メリットの項目のうち)副作用のフォローアップや、薬について相談できる顔の見える関係は、むしろ院内調剤の方ができるのではないか。あまりにも医薬分業がすごいと見せようとしている気がする」(中川俊男日医副会長)、「あまりにも点数に差がある。むしろ医師と薬剤師が一体となってきちんとみていく方が患者の健康を守れるのではないか」(松原謙二日医副会長)など、相変わらず問題視する声が相次いだ。

保険薬局の構造規制の見直しで昨年10月から可能になった、いわゆる同一敷地内薬局について安部委員は「(病院が)入礼で公募して高額な賃貸費用が発生するようなビジネスモデルもある。中には処方せん枚数が多ければ賃貸費用が多く請求されるケースも見受けられ、非常に遺憾」と述べ、敷地内薬局について調剤報酬の考え方の中で議論を求めた。

 

2.偽造品流通防止のための検討会 3月29日
GDP、省令での対応を念頭に検討

厚生労働省は3月29日、第1回医療用医薬品の偽造品流通防止のための施策のあり方に関する検討会を開催した。C型肝炎治療薬ハーボニーの偽造品が、卸売販売業者や薬局を通じて患者に提供されたことを踏まえて、偽造品の流通を防止する観点から、医薬品製造から患者に至る一貫した施策のあり方を検討する。具体的には、医薬品流通にかかわるGDP(グッド・ディストリビューション・プラクティス、医薬品の適正流通基準)の省令化など再発防止に必要な対策を議論する。第1回検討会後、厚労省は「偽造にかかわるGDP的なルールを施行規則などの省令で対応していくことも念頭に検討すべき」と話した。

第1回は厚労省からハーボニー事案や販売規制に関する取り組み状況が述べられた後、金沢大学医薬保健研究域薬学系国際保健薬学教授の木村和子構成員から海外の偽造医薬品の事例が報告された。議論ではトレーサビリティ(製品の流通経路を製造段階から最終消費段階まで追跡できる状態のこと)が論点に挙がった。第2回は4月中旬をめどに開催。数回の会合で取引相手の適格性の確認など直ちに対応すべき事項を優先的に議論し、夏頃に中間的な取りまとめを行う。

第1回の議論では、まず日本医師会の羽鳥裕構成員が「現金問屋というものがあっていいものか。今回の卸や関わった薬剤師に対しても罰則が必要」と提起。「医療機関や薬局、患者から余った薬を買う商習慣があることが間違い。買い取りをなくす仕組みが必要」とした。その後、日本医薬品卸売業連合会の一條宏構成員が「出所不明の医薬品を扱うところに対応が必要と思う。我々はトレーサビリティの完全性を確保する意味で製薬企業と情報を共有している。それは有害事象や異物混入の問題で製品を回収することがあるからだ。トレーサビリティが確保できないということを本当に日本の流通から無くしていくことが重要ではないか」と問題提起。

それを受けて日本保険薬局協会の原靖明構成員が「薬局からさかのぼることができない。さかのぼれるような事例は海外にあるか」と木村構成員に質問。木村構成員は「アメリカは電子的にすべてたどれるように取り組んでいる。ヨーロッパは全部ではない」と回答した。

厚労省は検討会後、現金問屋について「ちゃんと検討すべき話だが、現金問屋のカテゴリーでくくられる事業者が必ずしも明確に定義できない。現金問屋の排除が制度として可能かどうか考えなくてはいけない」として、「出所が不明、さかのぼりの確認ができないということは一つの議論のきっかけになるのかなと思う。もともと適正に管理されていたことが分からないまま流れていくことの危険性。これは2月の通知の中でも考えていて、薬剤師が見た時に何かあやしいなと思った時に上流でどう管理されていたのか、誰から入手したのかということを確認してくださいとすでに通知で書いている。そういったことも絡めながら検討していく」と話した。厚労省はハーボニー偽造品が流通した問題について再発防止策として2月16日に都道府県などを通じ、卸売販売業者や薬局に対して、医薬品の譲渡人の本人確認、医薬品の容器包装の確認などを行うことを求める通知を発出している。

 

3.がん検診のあり方検討会 3月27日
高濃度乳房問題への対応で議論

厚生労働省は3月27日、第21回がん検診のあり方に関する検討会を開催した。対策型乳がん検診における高濃度乳房に関する問題への対応が話し合われた。乳房は、乳腺内のほとんどが脂肪に置き換わった「脂肪性」、乳腺内の脂肪が70~90%程度の「乳腺散在」、乳腺内の脂肪が40~50%程度の「不均一高濃度」、乳腺内の脂肪が10~20%程度の「極めて高濃度」の4つのタイプに分類することができる。このうち不均一高濃度と極めて高濃度を合わせて高濃度乳房(デンスブレスト)と呼ぶ。これまでの検討会では、高濃度乳房について、国が対策型乳がん検診として実施しているマンモグラフィ(乳房X線検査)の感度が低いという問題が指摘されていた。

一方で、07年からがん対策のための戦略研究「超音波検査による乳がん検診の有効性を検証する比較試験(J-START)」が実施されている。この試験で40歳代のマンモグラフィ検診に乳房超音波検査を加えることで、感度およびがん発見率が向上したことが示されている。ただ、対策型検診として行うためには死亡率減少効果を示す必要があり、J-STARTが死亡率減少効果の結論を得るのは数年以上先になる。

こうした事情を踏まえて、第21回以降の検討会では「事実としてある高濃度乳房の問題について国としてどう対応するか提言をまとめる」(大内憲明座長)という。

第21回では、そもそも検診を受けた人に高濃度乳房であることやそのことを知った後での行動(追加検査を受けるべきか)などをどう伝えるかが議論された。

まず、厚労省健康局がん・疾病対策課が17年3月、16年度の乳がん検診について市町村(特別区を含む、n=1741)に対して実施した実態調査の結果が示された。

それによると、「マンモグラフィの乳房の構成を対象者に通知しているかどうか」について、回答市町村数1700のうち「通知している」のは13.5%にとどまった。「通知していない」86.5%の中で7.8%がマンモグラフィの乳房の構成を対象者に「通知する予定がある」と答えた。また、乳房の構成を対象者に通知している場合、高濃度乳房の方に対する通知の際に「その後受診者が取るべき対応について推奨していることはあるか」という問いについては、回答市町村数230のうち50%が「推奨していることがある」と答えた。推奨している内容については回答市町村数115のうち「超音波検査の受診」が95、「精密検査の受診」が18、「定期的な乳がん検診の受診」が5などであった。高濃度乳房を伝えてもその後の対応は自治体により様々といえる。

実態調査の報告後、実際に伝えている自治体の一例として、聖マリアンナ医科大学附属研究所ブレスト&イメージング先端医療センター附属クリニックの福田護参考人から川崎市の乳がん検診における乳房の構成に関する通知の現状が報告された。川崎市では16年4月から視触診を無くしマンモグラフィ単独検診を導入することを決定。この単独検診において疾患があるのに検査で陰性となる偽陰性があることを説明する中で、偽陰性の要因として撮影・読影技術の問題、病変の位置・大きさ・形状、高濃度乳房があることを伝えているとした。高濃度乳房に関する説明を受けた市民の反応に関しては、16年4月から始まったばかりの取り組みであるため高濃度乳房のお知らせの影響に関するデータはないとした。

その後、日本乳癌検診学会全国集計委員長の笠原善郎参考人が、日本乳癌検診学会・日本乳癌学会・日本乳がん検診精度管理中央機構の連名で3月21日に発表した対策型乳がん検診における高濃度乳房問題の対応に関する提言を示しながら「対策型検診において受診者に乳房の構成を一律に通知することは現時点では時期尚早である」とした上で乳房の構成の通知は今後、検討が進み、対象者の対応が明示できる体制が整った上で実施されることが望ましいと述べた。

 

■セミナー便り

1.4月から日本初の「減酒」外来を開始
-久里浜医療センター:樋口進院長-

国立病院機構久里浜医療センターの樋口進院長は3月29日、日本新薬主催のアルコール依存症に関するプレスセミナーで「4月第2週から減酒外来を我々の医療機関で開始する」と述べた。国内のアルコール依存症治療は酒を断つ断酒の継続が原則だが、酒を減らす減酒を治療アウトカムに取り入れることで受診率を向上させることが狙い。減酒外来はわが国初の試みで、久里浜医療センターでは医師2人とコメディカルという体制からスタートする。

減酒外来の対象者は、飲酒の習慣が気になっている、飲酒をやめたくないが量を減らしたい、酒に関する健康チェックがしたい、酒とうまく付き合いたいなど、飲み方が気になっているすべての人だという。ハーム・リダクション(害を減らす)という考え方を重視し、ひとまずアルコールで起こっている目先の害を減らすことを目的とする。

診察はアルコール治療の専門医が担当し、飲酒問題のレベルを診断基準(DSM-5、ICD-10)を用いて評価する。患者は飲酒日記を付け、次回受診で1日ごとの飲酒量や回数の振り返り、飲酒の習慣を変えた方法や感想を医師と話し合う。

樋口院長は「初めての試みなので、実際にどのような問題が出てくるか分からないが、一つ一つ解決しながらモデルを作っていき、日本中に広める」と抱負を述べた。

樋口院長によると、アルコール依存症の国内の有病者数は約107万人と推計されているが、実際に受診しているのは4万人にとどまる。受診率が4%と低い背景には、自分がアルコール依存症ではないと否認する疾患であること、世間からアル中と偏見の目で見られる恐れがあること、治療は断酒が原則であることなどが挙げられる。

「外来では私は減らしたいのだという患者が多くやってくるが、そういう方々に断酒を押し付けることでドロップアウトしてしまう」と樋口院長はアルコール依存症治療の現状を紹介。「減酒という選択肢を設けることで、彼らを受け入れ、一緒に寄り添って治療ができる。よしんば減酒できればそのまま続けるし、もしできなければ断酒する。治療選択肢を広げる意味で大きな意義がある」と減酒外来の重要性を指摘した。

なお、日本新薬では断酒補助薬のレグテクト(一般名アカンプロサート)を13年に上市した。樋口院長は「飲みたいという気持ちを抑制してくれる本来の求められていた薬ができたという意味でインパクトがあった。私の印象だが、そういう薬が出ることによって使ってくれる患者が増えると予測していたが、意外に爆発的に使用される状況ではない」と語った。

レグテクトの売上高は16年3月期で8億7900万円。17年3月期は上期で4億7800万円、第3四半期までで7億5500万円となっている。日本新薬は「全国のアルコール依存症の治療を実施している医療機関のほとんどに採用になっている。これから(使用が)増えていくところだと思う」とした上で「(アルコール依存症で)医療にかかっていない約100万人のうち83%が精神科以外の科にかかっている。糖尿病、肝臓、高血圧などそうした方々を何とかということで、市民公開講座を開催したり、精神科以外の科(内科や婦人科など)に配れるパンフレットをいま作成中だ」と話した。このパンフレットは夏頃に完成する。

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