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■記者会見
1.カルテ無断閲覧問題、再発防止に「企業文化の変革を実感」-バイエル薬品:ハイケ・プリンツ社長-
■セミナー便り
1.リムパーザ「福音になるのは間違いない」-東京慈恵会医科大学:岡本愛光教授-
2.GLで初「大腸がんの左右差」に言及-国立がん研究センター東病院消化管内科:吉野孝之科長-
3.HPVワクチン接種勧奨「しっかり説明できる材料が大事」-大阪市立大学大学院医学研究科:福島若葉教授-
4.ハーボニー 適応拡大のメリット-東京医科歯科大学:朝比奈靖浩教授-
5.費用対効果評価の制度化に向けた課題-国立保健医療科学院:福田敬部長-

■記者会見

1.カルテ無断閲覧問題、再発防止に「企業文化の変革を実感」
-バイエル薬品:ハイケ・プリンツ社長-

バイエル薬品は3月27日、抗凝固薬イグザレルト販促活動に絡む不適切カルテ閲覧など一連の問題に対する再発防止策などの取り組みについて報告した。問題の発端となったのは2012年から13年にかけて行われた「血栓症領域製剤の服薬における患者様の嗜好に関するアンケート調査」。同社宮崎営業所の社員3人が最大298人分の患者情報を患者の同意取得の有無を明確にすることなく不適切に取得していたことなどが社員MRの内部告発をきっかけに明らかとなった。この調査過程で副作用症例の報告遅延が判明し、昨年9月には厚生労働省が副作用報告義務違反に対して文書での改善指導を行った。この社員が社内のコンプライアンス室に相談したところ退職勧奨を受けたと訴えるなど会社側の対応も問題となった。

会見したハイケ・プリンツ社長は再発防止の取り組みの一例として、昨年11月に全社員を対象とした5日間にわたるトレーニングを実施したと説明。▼個人情報保護 ▼コンプライアンス ▼学術、営業のガバナンス ▼ビジネスコンプライアンス上のベストプラクティス ▼企業文化―の5分野で包括的改善に向けて取り組んでいるとした。そして今年2月に実施した半日のフォローアップトレーニングに対する社員のフィードバックや質問を通じて、「企業文化の変革が起こっていると実感した」とその効果に自信を見せた。

5日間トレーニングでは、外部専門家による今回の問題の説明があり、具体的な汚職防止ルール、公取協や製薬協のプロモーションコード等のコンプライアンスに対する規制、求められているメディカルガバナンスについて、座学、テスト、グループディスカッションなどを行い、スマホツールを使って双方向のコミュニケーション機会を持ったという。

相徳泰子マーケットアクセス本部長は「患者へのアンケート調査が研究の枠組みではないところで行われたことが問題だった」と認め、市場調査を含むありとあらゆる調査を本社が管轄し、研究に該当するかを事前にチェックする仕組みを導入したと報告した。調査企画はすべて本社が行い、営業の現場では新規の調査を企画できないことになり、営業で実施できるのはテンプレート化された参加者への満足度調査のみに限定された。さらにコンプライアンス違反の報告チャネルにも、匿名でできるホットラインが設置された。

プリンツ社長は告発した社員の処遇について、「現在も同社社員であり、誠意を持って対応している」と回答したが、詳細は開示しなかった。また、自身の進退に質問が及ぶと、企業文化を変える取り組みはまだ第一歩にすぎないとの認識を示し、自らコミットして再発防止に努めると答えた。

 

■セミナー便り

1.リムパーザ「福音になるのは間違いない」
-東京慈恵会医科大学:岡本愛光教授-

東京慈恵会医科大学産婦人科学講座の岡本愛光主任教授は3月29日、アストラゼネカ主催のメディアセミナーで白金系抗悪性腫瘍剤(プラチナ)感受性の再発卵巣がんの維持療法で1月に国内承認を取得したPARP阻害剤リムパーザについて「手術してから化学療法を行って腫瘍をなくした状態にし、その状態をいかに維持するか。再発してからも、いかにこれ(良い状態)を維持してあげるかが重要になる。卵巣がんは5年生存率は低いが、卵巣がん患者にとって新しい薬が福音になることは間違いない」と語った。同社はリムパーザの発売により卵巣がん領域に参入する。4月の薬価収載を見込む。なお、1月の承認取得から薬価収載まで倫理的無償提供が行われている。

講演で岡本主任教授は、海外第2相Study19の安全性解析対象集団において5年以上投与を継続した割合がリムパーザ群で13.2%、プラセボ群で0.8%であったことを紹介し、「13.2%の患者が再発を起こさず5年以上治療継続できた。13%以上の患者で良い状態が保たれているのはすごいことだ」とした。国際共同第3相SOLO2試験では主要評価項目の無増悪生存期間(PFS)の中央値がリムパーザ群19.1カ月でプラセボ群5.5カ月に比較して統計学的に有意に延長したことを強調。安全性では「貧血は注意しなければならないが、いままでの分子標的薬や抗がん剤に比べると重篤な有害事象は少ない印象だ」とした。

維持療法で使用されるアバスチン(ベバシズマブ)との使い分けについて岡本主任教授は「BRCA遺伝子検査で異常が見つかった症例はリムパーザを使うだろうとしていたが、(遺伝子変異によらず)プラチナ感受性再発卵巣がんの維持療法と対象が広がったので、それに関しては施設によって使い方が違うところがある。リムパーザを早期に導入するのがいいと考えている」と述べた。なお、リムパーザはBRCA遺伝子変異陽性の手術不能または再発乳がんの効能追加を申請中。リムパーザの乳がん患者への適応を判定するために使用するBRACAnalysis診断システムは3月29日にミリアド・ジェネティック・ラボラトリーズが国内承認を取得した。

 

■セミナー便り

2.GLで初「大腸がんの左右差」に言及
-国立がん研究センター東病院消化管内科:吉野孝之科長-

日本臨床腫瘍学会(JSMO)と欧州臨床腫瘍学会(ESMO)が主導し、他にアジア5カ国が協力して作成したアジア版大腸がん治療ガイドライン(GL)が今年1月、Annals of Oncologyに掲載された(昨年11月にオンライン版に先行掲載)。アジア人が著者の論文が全体の7割弱を占めるなど、アジア人のエビデンスに基づいて進行再発例の診療を推奨している。また、大腸がんの原発部位が右側(盲腸~横行結腸)か左側(下行結腸~直腸)かで、異なる薬物治療を推奨した。

アジア版の作成に中心的な役割を果たした吉野孝之氏(国立がん研究センター東病院消化管内科長)と室圭氏(愛知県がんセンター中央病院薬物療法部長)が、3月22日のメディアセミナー(武田薬品工業主催)で作成の経緯や概要を説明した。

大腸がんのGLはすでに日米欧それぞれに存在する。両氏によると、日本(大腸癌研究会)と米国(NCCN)のGLは、施行可能な治療を網羅的に記載している。これに対して欧州(ESMO)のGLは「より踏み込んで、最もいいものを推奨するというスタンス」だ。

ただいずれにせよ、「欧米のGLは欧米人の患者を対象としたエビデンスに基づいて作成されている」と吉野氏は指摘。「欧米人とアジア人には民族差、人種差があり、アジア人が最適な治療を受けるためのGLが必要だ」と、作成の背景を述べた。また、薬剤の承認と保険償還が連動せず、科学に基づいた最適な治療を受けられない国があることを挙げ、「アジア各国の規制当局に対する政策提言としても、アジア共通のGLが必要だ」と説明した。

そこで吉野氏がESMOに働き掛け、ESMOの大腸がんGLをベースにアジア版を作成したという。

原発部位の左右差について説明した室氏によると、患者数は3対7で左側の方が多い。予後は左側の方が良い。左右で予後が異なる理由は、予後不良とされる遺伝子変異が右側の方に多く分布していることが考えられるという。

2016年以降は、左側原発例の方が抗EGFR抗体薬の生存期間延長効果を得られるとも報告されるようになった。従来からRAS遺伝子野生型が抗EGFR抗体薬の有効性の予測因子として知られているが、原発部位でさらに絞り込むことが現実となりつつある。

そこでアジア版では、「GLとして世界で初めて」(吉野氏)、原発部位で薬剤を使い分けることを提唱。RAS野生型で左側の場合は化学療法に抗EGFR 抗体薬を、右側の場合は化学療法に抗VEGF抗体薬ベバシズマブを併用することを推奨した。RAS変異型については左右差に言及せず、化学療法+ベバシズマブを推奨した。

一方で室氏は、原発部位を考慮した治療選択は「支持するかどうか、(日本の実臨床では)見解が統一されていない」との認識を示した。浸透させるには国内のGLに盛り込まれることが重要だとして、19年1月の次期改訂では、原発部位の左右差に基づく治療選択に触れるとした。

 

■セミナー便り

3.HPVワクチン接種勧奨「しっかり説明できる材料が大事」
-大阪市立大学大学院医学研究科:福島若葉教授-

大阪市立大学大学院医学研究科公衆衛生学の福島若葉教授は3月26日、製薬協主催のメディアセミナーでHPVワクチンの接種に関して「しっかり説明できる材料があるのが大事だと思う。まったく接種していない状況でも一定程度同じような症状(運動障害や疼痛など)の方がいる。いままでの国民の理解は、ワクチン導入前に全然なかった症状がワクチン接種によって出てきた、自分の娘にワクチンを接種すると一定程度の割合で起こるので怖いというものだった」とした上で疫学調査の情報が入ることで「コミュニケーションの度合いも違ってくると思う。それはおそらくタミフルの異常行動と同じだと思う。いまではお母さん方もタミフルを飲んでいなくてもインフルエンザで起こるという理解になってきている」と述べた。

HPVワクチンは13年4月に改正予防接種法が施行され定期接種に位置付けられたが、運動障害など多様な症状が副反応疑いとして報告され、現在は積極的な接種勧奨が差し控えられている。一方、子宮頸がんワクチンの有効性と安全性の評価に関する疫学研究(祖父江友孝班)の青少年における疼痛または運動障害を中心とする多様な症状の受療状況に関する全国疫学調査の結果、HPVワクチン接種歴のない者においてもHPVワクチン接種後に報告されている症状と同様の多様な症状を有する者が一定数存在したと報告されている。

福島教授によると、米国では90年にワクチン接種後のシグナルを評価するためのワクチンセーフティデータリンク(VSD)が設立されており、このデータベースの整備によってワクチン接種前の自然発生率と比べたワクチン接種後のリスク上昇が計算できる。日本国内ではその都度、厚生労働省が研究班を立ち上げ自然発生率の調査を行っているという。福島教授は「事象の自然発生率は記述疫学ながらワクチンの安全性を見るのに極めて重要だ。今後、国でも一定の質で常に把握できる体制の整備が望ましい」と語った。

 

■セミナー便り

4.ハーボニー 適応拡大のメリット
-東京医科歯科大学:朝比奈靖浩教授-

東京医科歯科大学の朝比奈靖浩教授は3月27日、ギリアド・サイエンシズのC型肝炎治療薬ハーボニーが「ジェノタイプ2のC型慢性肝炎またはC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善」に適応拡大したことを受け、アジア太平洋肝臓病学会議(APASL)での発表データを紹介するなどした。従来、ジェノタイプ2のC型肝炎患者にはDAA(直接作用型抗ウイルス剤)において少ない治療選択肢のなかでリバビリンとの併用が必要なオプションがあったが、今回の適応拡大により、リバビリンとの併用が不必要となった。そのためリバビリンの副作用である溶血性貧血発現の恐れがある、輸血を必要とする患者や心疾患のある患者への慎重投与、また、腎疾患や腎障害患者への慎重投与あるいは透析中の腎不全患者といったリバビリンを使えない患者への治療法の提供としてのメリットが生まれた。

同教授は、今年3月にインドのニューデリーで開催されたAPASLにおいて発表した「C型慢性肝炎ジェノタイプ2型患者に対する全経口薬レジメンLedipasvir/Sofosbuvirの12週治療成績:3つの臨床研究の統合分析について」の概要を報告した。

各々ニュージーランド、台湾および日本人を対象とした3本の第2相および3相試験における合計200人の試験結果について、ハーボニーの12週間の安全性・有効性を評価した。同教授は、同試験実施の背景として、ジェノタイプ2型が東アジア共通の遺伝子型であることを挙げた。結果は、ジェノタイプ2型の慢性肝炎患者が100%近いSVR12(12週投与の持続的ウイルス学的著効=治療終了後12週時点でウイルス量が検出限界未満)を達成した。SVR12は肝線維症の状態、治療歴またはベースライン時の耐性変異には影響されなかった。安全性・忍容性は良好で、同剤の12週投与は、1日1回1錠投与で高い有効性を示した。

朝比奈教授は、C型肝炎患者はウイルス排除後も健常者に比べ肝の発がんリスクの高い状態が長期間残存するため、定期的な肝がんリスクのスクリーニングを継続することを推奨した。

 

■セミナー便り

5.費用対効果評価の制度化に向けた課題
-国立保健医療科学院:福田敬部長-

『わが国における費用対効果評価の試行的導入と今後の展開』をテーマとしたセミナーが3月10日に新潟医療福祉大学で開催された。3月7日に中医協費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会において試行的導入対象13品目に対する評価結果が示された直後であり、専門部会の参考人である国立保健医療科学院医療・福祉サービス研究部部長の福田敬氏が、特別講演した。今回は医薬品ではオプジーボとカドサイラの2品目が価格の引き下げとなったが、カドサイラは企業分析と再分析ともICERが1000万円以上のために収載時補正加算部分に限定した形で90%引き下げられた(最終的な薬価改定率は▲1.5%)。価格調整により価格引き上げもあり得ることが話題になっていたが、医療機器のカワスミNajuta胸部ステントグラフトシステムは価格引き上げとなった。ソバルディは二つの分析とも価格調整の対象となるICERが500万円を下回った。再生医療製品のジャックはQALYの算定方法がなく分析困難となった。また、二つの分析が併記されたのは医薬品ではハーボニー、ヴィキラックス、ダクルインザ、スンベプラ、オプジーボの5品目と、医療機器ではカワスミNajuta胸部ステントグラフトシステムとサピエンXTの2品目である。今後、これら7品目についてはワーキンググループと専門組織で検討し、今年11月から分析結果の取りまとめを行うこととなったが、福田氏は、今回の試行的導入において臨床の専門家の参画、分析・評価に関する事前協議、分析方法の明確化の3点が必要であることが認識されたと述べた。さらに費用対効果の分析には費用とアウトカムのデータが必要であるものの、多くの課題があり、QOL測定ツールの標準化などデータ整備が急務であることを強調した。また、日本では英国NICEなどと比較しても評価する側も企業においても人材不足であることを今後の課題とした。

PhRMA(米国研究製薬工業協会)とEFPIA(欧州製薬団体連合会)からはICERのみならず倫理的・社会的考慮要素を含め多様な要素を十分に考慮して総合評価すべきであるとの意見が出され、企業側と再分析側との意思疎通、意見交換が必要とされた。

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