特ダネ+
特ダネ情報を独自のアンテナでお届け
製薬企業の記者会見やセミナー情報、行政関連情報などを国際医薬品情報からの提供記事として配信。
提供:国際医薬品情報 編集部

facebook facebook

■行政トピックス
1.中医協費用対効果評価等合同部会 10月11日 業界、加算前下回る調整「断じて容認できない」
■学会レポート
1.重要性増す薬局薬剤師の機能-厚生労働省:森和彦審議官-
2.多職種連携「顔の見える関係が基本」-日本医師会:横倉義武会長-
■セミナー便り
1.悉皆性のあるDBは臨床疫学研究に有用-京都大学大学院:福間真悟准教授-
2.亜鉛製剤の院内調製が不要に-兵庫医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科:任智美講師-
■記者会見
1.iPS由来心筋シート「5年で実用化」-大阪大学大学院心臓血管外科学:澤芳樹教授-

■行政トピックス

1.中医協費用対効果評価等合同部会 10月11日
業界、加算前下回る調整「断じて容認できない」

中医協の費用対効果評価、薬価、保険医療材料の3つの専門部会の合同部会は10月11日、18年度からの費用対効果評価の制度化に向けて、関係業界から意見聴取を行った。

日薬連の多田正世会長(大日本住友製薬社長)は、「費用対効果評価は、あくまでも薬価基準制度の補足的な手法として限定的に用いるべき」と主張し、「(算定薬価の)加算部分の引き下げまたは引き上げへの活用にとどめるべき」と訴えた。「公定価格である薬価を1度決めた後に、違う角度から見直して大きく変わるかもしれない状態は、予見性が根本から崩れることになり、非常に困る」と述べ、現行の薬価制度の基本が大きく変わることに強い危機感を示した。

厚労省が8月23日の費用対効果評価専門部会に示した今後のスケジュールに関する資料によると、1)試行的導入の対象になった13品目(医薬品7品目)の価格調整を18年度診療報酬改定時に行う、また 2)18年度診療報酬改定時からの制度化に向けて年内をめどに骨子を取りまとめる-ことになっている。

制度化において費用対効果評価の結果は、原則として保険適用の可否の判断には用いず、価格調整に用いる位置付けとなり、通常の類似薬効比較方式または原価計算方式で価格を算定した後に、さらに費用対効果を用いて価格調整をする方向だ。

多田会長は、費用対効果評価の対象品目について「薬価算定において一定率以上の加算が適用され、かつピーク時売上高が一定額以上になると予測される品目とする」よう求めた。また、価格調整方法については「加算率の補正に限定すべきであり、加算前の価格を下回るような調整がなされることは断じて容認できない」と述べた。

業界意見に対して中医協委員からは、「加算率の補正以上に減額できるようなシステムが導入された場合は、土俵から降りることもあり得るのか」(松本純一日医常任理事)、「事務局には全体にするか加算部分にするか、具体的なメリット・デメリットも併せて速やかにシミュレーションを示してほしい」(吉森俊和協会けんぽ理事)との意見が出た。

また、業界が「加算部分の引き上げ」にも言及したのに対しては、「収載時点の加算分が足らなかったから引き上げるという概念はない」(幸野庄司健保連理事)、「価格を引き上げることはないと考える」(松本吉郎日医常任理事)と反対意見が出た。

 

■学会レポート

1.重要性増す薬局薬剤師の機能
-厚生労働省:森和彦審議官-

厚生労働省の森和彦審議官(医薬担当)は10月9日、日本薬剤師会学術大会で患者のための薬局ビジョンについて講演。健康サポート薬局の届出件数が8月31日時点で全国479軒であったことに触れ「数は多くない」と指摘。「薬局5万軒のうち何割かがきちんとやらないと、患者にならないと薬局に来ないという付き合いの様子は変えることができない。数が増えるようわたしも応援したい」と語った。

患者のための薬局ビジョンでは、「門前からかかりつけ、そして地域へ」という標語の下、かかりつけ薬局・薬剤師の機能を基本とし、その上で「健康な、患者になる前の人たちも含めたお付き合いをする健康サポート機能という方向性と、難しい病気で大変苦労している患者に寄り添っていく意味合いが強い高度薬学管理機能に寄せていくこと」(森審議官)が求められている。医師からもらった処方せんが無ければ入りづらかった調剤薬局の姿を変えるとともに、在宅患者への対応や多職種連携など地域に出ていく薬剤師の姿が目指されている。

講演では高度薬学管理機能にも触れ、「医師と比べて専門医のような方向性の話は薬剤師は少なめかなと思う。まずは基本ジェネラルに色々な診療科の色々な薬に対応しながら、実際にお付き合いしている患者の抱えている病気に専門性が出てくることは多分にある」とした上で「数が多いという意味ではがん専門薬剤師がある程度必要になってくる」と語った。抗がん剤の世界は日進月歩で「先端的な診療や研究ができるスタッフが揃っている病院中心に使われることになるが、効果があるほど、調子が良くなって患者は家に帰る。自宅で過ごせる患者が増えてくる時にそれをフォローする薬剤師は薬のことを知っていないといけない。普段の身体のコンディションが分かっているかかりつけ薬剤師なら危険な副作用の兆候に早く気づいて、早く医師に照会して手当てができる。これができるためにも薬局薬剤師にもこうしたことをしっかり視野に入れて研鑽していただくのが大事」とした。

併せてがん疼痛緩和ケアで使用されるオピオイドについても言及。「FDA長官がオピオイドの対策が私のファーストプライオリティという声明を6月に出した。こうした様子を対岸の火事だと思っていない。世界一高齢化が進んでいて、おそらく世界一がんにかかる可能性が高い民族集団で、オピオイドの使用はどうしても増えていく。それに薬剤師が対応しないといけない。残薬の山の中にオピオイドがあったら恐ろしいこと。こんなところにも薬剤師のこれからの仕事はある」と述べた。

現在厚労省で行われている高齢者医薬品適正使用検討会に関しても森審議官は「これに取り組む上で一番ふさわしいのは薬剤師だ。薬剤師がそれをきちんとやれるようになるために医師と協力してこの薬は重複しているからひとつにまとめませんかという話ができる関係をつくり上げていくことが大事」とコメント。また、平成28年度厚生労働科学特別研究事業の薬局・薬剤部の機能を活用した副作用報告の推進に関する研究は「主に病院の薬剤部の働きを想定して書いたが、薬局も重要な役割を担うと強調したい。薬局の薬剤師が、処方している先生とできれば連名で一緒になって、検査のデータから、見立て、診察、診療経過が付いた格好で副作用報告ができるとすごく有益な情報になる。そうしたことをどんどんやってもらいたい」とした。

 

■学会レポート

2.多職種連携「顔の見える関係が基本」
-日本医師会:横倉義武会長-

「2025年の地域包括ケアシステム構築に向けた連携について」と題した日医・日歯・日薬会長パネルディスカッションが10月9日、日本薬剤師会学術大会で行われ、三師会とも多職種連携においては顔の見える関係が重要だと改めて強調した。

日本医師会の横倉義武会長は「連携の基本は顔の見える関係をつくることだと、多くの地域では症例の検討をしようということで始まっている。症例の検討と共にお互いの人間関係をつくろうということで交流会をして、それぞれの地域で輪が出来ている。連携の輪をつくる上で医師会の先生方が何に気を付けたか。10年前、20年前は医師の指示の下にすべて動くのだということが言われていた。もちろん色々な起点は医師が診断をして方針を決めるということにあるわけだが、それと同時に現場で色々な対応をしてくれる他の職種の方をお互い専門職として尊敬していくことが重要だ」と話した。

これを受けて日本薬剤師会の山本信夫会長も「顔の見える関係は大変重要だ」と同意。その上で「医師、歯科医師、薬剤師の関係を考えると、薬剤師法25条の2が変わった瞬間に責任は医師や歯科医師とほぼ同等になった。上下関係というよりも、この患者のために何ができるかというその一点だけで言えば、せめて医師と肩を並べて議論したい。それが横倉先生がおっしゃった信頼できる、連携できるということになるのだろう」と述べ、薬剤師として「何でも医師に言われたからいいですよという立場ではない、片方では研修を通じて培いながら、かつそのことが自分たちの満足ではなく、患者や社会の満足として、うまく医師と歯科医師と共有できるような、そういう方向性を持った研修をすることがこれからの大きな課題だと思っている」と語った。

 

■セミナー便り

1.悉皆性のあるDBは臨床疫学研究に有用
-京都大学大学院:福間真悟准教授-

日本臨床疫学会第1回年次学術大会において、『薬品売り上げデータを活用したデータベース研究の進め方』の演題で、京都大学大学院の福間真悟准教授を講師としたランチョンセミナーが9月30日にあった。

製薬企業等で製造された医薬品は、卸業者を通して医療機関や薬局に納入されて患者に投与されることから、卸業者の医薬品納入量データを解析することで患者への使用状況を分析することが可能である。講演では高血圧治療ガイドライン改訂および糖尿病治療薬DPP4阻害薬の参入による各薬効群の使用患者数への影響について、2005年から17年までのIMSジャパン医薬品市場統計データベース[IMSbase-JPM]を用い、時系列分断デザイン(Interrupted time series analysis:ITSA)によるデータベース研究が報告された。なお[IMSbase-JPM]は納入量データであるために使用患者数は各薬剤の一日平均投与量から推定された。

高血圧治療ガイドラインは2014年に改訂され、高血圧の基準値は世界的傾向に則り130/85から140/90に緩和されることとなったが、05年から16年までの12年間の降圧薬の使用患者数を推定すると、Ca拮抗薬は12年間を通して漸増し、ARBは14年をピークに減少に転じている。ACE阻害薬は05年以降減少を続け、利尿薬とガイドラインで推奨から外れたβ遮断薬は12年間を通して少ない。降圧薬全体としては14年までは増加するがその年を境として急低下し、その後は一定となっている。

糖尿病治療薬では09年12月に登場したDPP4阻害薬が、11年から使用患者数を急速に伸ばし17年には推定800万人となり、この領域の主役になりつつある。その影響でそれまで主流だったSU薬は10年から減少しており、数は少ないがグリニド薬も同様に減少傾向にある。またSGLT2阻害薬は14年から急上昇して新しい流れになりつつある。糖尿病治療薬全体としては、09年を境としてトレンド変化があり、特にSU薬とグリニド薬にその影響が大きい。

ガイドライン改訂および新薬登場の二つの事例ではその時を境にしてそれぞれ急低下のインパクトとトレンド変化があったが、領域と時期が異なり独立した事象であり、また、使用患者数減少の原因としては患者当たりの使用量減と使用患者数減が考えられる。

今回の講演で示したデータベース研究の基になった[IMSbase-JPM]は、後発品の一部と直販品を除き、日本全国の医薬品納入量データの99%をカバーしており高い悉皆性を有するデータベースであるが、測定項目が納入量や金額などに限られるという課題がある。そのために他の外部データとの連携が必要であるが、研究デザインを工夫することで地域を考慮した生態学的研究も可能となり医薬品売上げデータの利用幅が大きく広がることとなる。福間氏は悉皆性のあるデータベースは臨床疫学研究に有用であると結んだ。

 

■セミナー便り

2.亜鉛製剤の院内調製が不要に
-兵庫医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科:任智美講師-

兵庫医科大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科で「味覚外来」を担当する任智美講師は10月4日、ノーベルファーマとメディパルホールディングス主催のプレスセミナーで味覚障害診療の最前線を語った。患者は高齢者が多いことや、低亜鉛血症が味覚障害(亜鉛欠乏性味覚障害)の原因となることなどを説明した。

同外来の統計によると、患者は加齢とともに増加し、60代以上が約半数を占める。症状は、「塩味と酸味を間違える」(錯味症)、「味がしない」(味覚脱失)、「何を食べても苦く感じる」(異味症)などがある。

味覚障害の原因別には、特発性、亜鉛欠乏性、薬剤性、感冒後、心因性、医原性、外傷性などに分けられ、特発性と亜鉛欠乏性を合わせると約3分の1を占めるという。特発性味覚障害は原因不明の味覚障害のことだが、「潜在的に亜鉛が欠乏している状態」(任氏)である。一方、原因を65歳以上と65歳未満で分けて解析すると、65歳以上では薬剤性や口腔乾燥の割合が高く、感冒後や頭部外傷後の割合は低かった。また、65歳以上では65歳未満と比べて受診時の血清亜鉛値が有意に低かった。

治療については、エビデンスを持つ唯一の治療として、亜鉛製剤を「全例と言ってもいいくらいに使用している」と述べた。亜鉛補充療法の効果は、3~6カ月は継続して判断する必要があるという。漢方薬も1つの選択肢で、亜鉛製剤と併用あるいは切り替え投与するとした。なお、従来は亜鉛製剤を院内調製していたが、ノベルジン(酢酸亜鉛水和物)に低亜鉛血症の適応が追加されたことで、「つくるのをやめた」。

こうした治療で、特発性や亜鉛欠乏性であれば、7割以上が治癒するという。薬剤性味覚障害に関しては「(当該薬剤の)亜鉛キレート作用で低亜鉛血症、イコール味覚障害になりやすい」と解説。薬剤を中止できない場合は、亜鉛補充を継続するとした。

 

■記者会見

1.iPS由来心筋シート「5年で実用化」
-大阪大学大学院心臓血管外科学:澤芳樹教授-

第一三共と、大阪大学発ベンチャーのクオリプスは10月5日に都内で記者会見を開き、iPS細胞由来心筋シートを用いた重症心不全治療を共同開発・事業化すると発表した。第一三共は今年8月に、クオリプスへの出資と全世界における同製品の販売オプション権取得を発表していた。クオリプスのチーフ・サイエンティフィック・アドバイザーを務める澤芳樹・大阪大学大学院心臓血管外科学教授は会見で、この治療の当面の位置づけについて「『薬剤・デバイス』と『心臓移植・人工心臓』との間にフィットする治療」と解説。その上で「来年、臨床研究を開始し、保険診療で普及する『実用化』までに数年から5年を目指している」とした。

第一三共の中山讓治会長兼CEOは、国内に難治性(重症)心不全患者は約5000人、中等症・重症は約7万人いるとした上で、「今回の治療は、標準治療を変革するような先進的なモダリティだ」と述べた。

重症心不全治療用の既存の細胞シート製品との違いについて澤氏は「既存品が患者自身の骨格筋芽細胞由来であるのに対して、今回のiPS細胞由来心筋シートは他家由来であり、工業製品として向いている」「骨格筋芽細胞シートはサイトカイン分泌により効果をもたらすが、iPS細胞由来心筋シートはサイトカイン分泌に加えて、心筋細胞を補充する効果が期待できる」の2点を挙げた。

事業の枠組みとしては、クオリプスが「阪大と第一三共それぞれの強みを融合する場」(第一三共の中山氏)となり、iPS細胞由来心筋シートの製造方法の研究開発、生産技術の確立、承認取得を目指す。第一三共は共同開発するとともに、全世界での販売オプション権を保有する。

中山氏は同製品の事業化について「手術が受けられずに困っている患者さんのことを考えれば、国はリーズナブルな考え方をしてくれるだろう。iPS細胞由来であり、経済性でもアドバンスがある」と述べた。

関連記事-こちらもどうぞ

TOP ↑