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■記者会見
1.COVID-19「科学の力で日常を取り戻すことができる」-PhRMA:リチャード・モーシスキー最高医務責任者-
■セミナー便り
1.膵がん治療薬オニバイド「待ち望んでいた治療」-杏林大学医学部腫瘍内科学:古瀬純司教授-
2.ソリクア、かくれ高血糖の改善に期待-横浜市立大学:寺内康夫教授-
■行政トピックス
1.医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議 6月26日 キードラッグの優先順位付けと国産化巡り意見交換

■記者会見
1.COVID-19「科学の力で日常を取り戻すことができる」-PhRMA:リチャード・モーシスキー最高医務責任者-
■セミナー便り
1.膵がん治療薬オニバイド「待ち望んでいた治療」-杏林大学医学部腫瘍内科学:古瀬純司教授-
2.ソリクア、かくれ高血糖の改善に期待-横浜市立大学:寺内康夫教授-
■行政トピックス
1.医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議 6月26日 キードラッグの優先順位付けと国産化巡り意見交換

 

■記者会見

1.COVID-19「科学の力で日常を取り戻すことができる」
-PhRMA:リチャード・モーシスキー最高医務責任者

PhRMAのリチャード・モーシスキー最高医務責任者(CMO)兼サイエンス&レギュラトリーアドボカシーエグゼクティブヴァイスプレジデントは7月1日のオンライン記者会見で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断法、薬物療法、ワクチンの開発状況について概観し、「私たちはこのような科学の力を通して日常を取り戻すことができると確信している」と見通しを示した。

WHOの国際臨床試験登録プラットフォーム(ICTRP)によると、6月19日時点で、140を超えるCOVID-19ワクチン候補が開発されている。128ワクチンは前臨床試験、13ワクチンは第1相試験/第2相試験、BCGワクチン(結核予防)が第3相試験にある。6月30日にはFDAがCOVID-19ワクチンの承認条件を発表した。

モーシスキーCMOはCOVID-19ワクチンの開発がこれまでにない速さで進んでいることを紹介しつつ、「ただ、忘れてはいけないことは、開発はリスクが高いプロセスだということだ。開発中の品目のうち成功する可能性は5~10%にとどまっているので、できるだけ多くのワクチンを開発する必要がある。つまり、ゴールに向かって数多くのシュートを打つ必要がある」とした。その上で、「現在開発されている中の幾つかはいずれ有効性と安全性を示すことができればと考えている」と期待を語った。

治療薬は395の薬物療法が世界中で1188件の臨床試験を実施している。その内訳は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する試験が659、過剰な免疫反応(サイトカインストーム)に対する試験が299、COVID-19に起因する病態(急性呼吸窮迫症候群など)が294となっている。モーシスキーCMOは「このパンデミックという危機に際して世界的なバイオ医薬品企業各社あるいは業界全体として膨大な取り組みを行っていることが理解いただければと考えている」と述べた。

コロナ克服へ、連携の重要性を指摘

会見にはPhRMA在日執行委員会のクリス・フウリガン委員長(ヤンセンファーマ社長)も登壇。「バイオ医薬品業界は一丸となってリソースを共有することによりCOVID-19を克服するという共通の目標を達成しようとしている」とし「パートナーシップを医薬品業界、政府、その他の関係者が日本において組むことによって、COVID-19を理解し、抑えこんでいかないといけない」と語った。

ワクチンに関してフウリガン委員長は「ウイルスの話を私たちが初めて聞いたのが1月であり、現時点で21年に日本にワクチンが出るかもしれないという話ができるまで進んできている。通常は新しいワクチンを上市するまでの期間は10年かかるので、大変加速的に物事が進んだプログラムだった」と述べた。その上で「ほとんどの政府は集団接種を行うことを考えているので、12カ月で5000万~1億人の人々に対する接種を行うプログラムも考えられている。国民をサポートしきちんと接種を進める活動を成功させるためには、企業、業界、規制当局、政府、医師などさまざまな医療関係者とパートナーシップを組んで取り組むことによって初めて可能となる」と連携の重要性を指摘した。

 

■セミナー便り

1.膵がん治療薬オニバイド「待ち望んでいた治療」
-杏林大学医学部腫瘍内科学:古瀬純司教授-

杏林大学医学部腫瘍内科学の古瀬純司教授は6月25日、日本セルヴィエ主催の抗がん剤オニバイド(イリノテカン リポソーム製剤)に関するメディア向けウェブセミナーで講演し、同剤について「すい臓がん患者だけでなく、家族、我々医療者も待ち望んでいた治療であり、今後、日本でも幅広く使用されていくものと思われる」と見通しを示した。その上で「期待される有効性を引き出すためには、適切な適応と実施、さらに適切な副作用管理が大事になる」と付け加えた。

オニバイドはゲムシタビンを含む化学療法後に増悪した遠隔転移を有する膵がん患者を対象とした海外第3相NAPOLI-1試験に基づき、15年に台湾および米国で初めて承認された。日本では、シャイアー・ジャパンが国内第2相試験を実施し、20年3月にがん化学療法後に増悪した治癒切除不能な膵がんの効能・効果で承認を取得し、6月に発売した。通常、ゲムシタビンベースの1次治療後の2次治療で使用される。膵がん治療薬としては日本で6年ぶりの新薬となる。

国内第2相試験ではオニバイド+フルオロウラシル(5FU)/レボホリナート(l-LV)投与群は5FU/l-LV投与群と比較し主要評価項目の独立中央判定委員会評価による無増悪生存期間(PFS)で「症例数が少ないので統計学的な有意差はないが、(カプランマイヤー曲線で)上にきているということで、日本人でも一定の有効性は十分あるということが確認された」(古瀬教授)。安全性では、オニバイド+5FU/l-LV投与群で副作用が発現した患者例数が100%であり、特に多い悪心、好中球数減少、食欲減退、白血球数減少、下痢、倦怠感は「大事な、しっかり管理しなければいけない副作用になる」と解説した。

厚労省の「平成29年(17年)全国がん登録罹患数・率報告」によると、膵がんの罹患数は4万981人。厚労省の人口動態統計によると、膵がんの死亡数(18年)は3万5390人。古瀬教授によると、罹患数、死亡数ともに依然増加しており、5年生存率は10%未満と極めて予後不良の疾患。

現在の膵がん化学療法の第一選択の治療法は、FOLFIRINOX療法(5FU/イリノテカン/オキサリプラチン+l-LV)またはゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法を使うということが推奨されている。ただ、多くの患者が治療中増悪あるいは副作用で中止せざるを得ず、膵がん患者の予後改善には有効な2次治療が必須という課題があった。

古瀬教授は、1次治療後、50~60%の患者が2次治療を受けているが、有効性が証明された2次治療はなく、1次治療で使われなかった方を2次治療で使う状況だったと説明。ゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法を1次治療で使用した場合、2次治療はFOLFIRINOX療法またはS-1だった。「ただ、FOLFIRINOX療法はかなりきつい治療なので2次治療では使いづらい。S-1は1剤の治療になるので少しパワーが弱いのかなというのが一般臨床の感触になるかもしれない」。一方、1次治療でFOLFIRINOX療法を使用した場合、2次治療はゲムシタビンもしくはゲムシタビン+ナブパクリタキセル併用療法となる。

オニバイドはゲムシタビンベースの1次治療を使用した後の2次治療だが、FOLFIRINOX療法を1次治療で使用した場合の流れについて、古瀬教授は「FOLFIRINOXで行けば、ゲムシタビンやゲムシタビン+ナブパクリタキセルで行く。その次はどうかというと、3次治療に行ける方はそんなに多くない。2次治療に行ける方は6割くらいで、さらにその半分になってくるので、3割から4割になる。その時には全くエビデンスはない。これから我々がその場合でもオニバイドを使って効くのかどうかということを確認していかなければならない。これからの課題だと思う。しかし1つの選択肢になってくるのかなと思う」と話した。

製造販売業者として「第一歩」

セミナーには日本セルヴィエのエリック・デラージュ代表取締役も登壇した。同社は1981年に設立以降、約40年間、国内製薬企業への導出を通じてセルヴィエの医薬品を販売してきたが、今後は製造販売業者として日本の患者に医療用医薬品を提供していくとし「オニバイドの新発売はその第一歩だ」と話した。デラージュ氏は日本について「近年注力しているがん領域のプレゼンスをさらに高めるために日本は非常に重要な国と位置付けている」とも語った。

同社はオニバイドの発売に向けて品質保証・安全性管理・薬事などに加え、MSLを含むメディカルアフェアーズ部門、マーケティング部門など必要な部署の体制を整備した。オニバイドのプロモーションはヤクルト本社が当面、独占的に実施するので、現時点ではMRは採用していない。ただ、コ・プロモーションのオプション権を留保していることや、現在開発中の製品の上市に向け、将来、MRを採用する可能性があるという。

オニバイドの次の製品としては、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議で開発要請がなされた急性リンパ性白血病(ALL)治療薬SHP674/S95014(一般名ペグアスパラガーゼ)がある。現在、国内第2相試験を実施中だ。

 

■セミナー便り

2.ソリクア、かくれ高血糖の改善に期待
-横浜市立大学:寺内康夫教授-

横浜市立大学大学院医学研究科分子内分泌・糖尿病内科学の寺内康夫教授は6月8日、サノフィ主催の2型糖尿病治療薬ソリクア(インスリングラルギン/リキシセナチド)のメディア向けウェブセミナーで「空腹時の血糖値は下げるような治療はできても食後の血糖値が下がらないような状況は少なからずある。ソリクアはそれに対する新しい解決策を提供することができる」と語った。

寺内教授によると、日本糖尿病学会では、合併症予防のためのHbA1cの目標値を7.0%未満、それに対応する血糖値のおおよその目安を空腹時血糖値130mg/dL未満、食後2時間血糖値180mg/dL未満と定めているが、実臨床では、治療介入して空腹時血糖を目標値まで低下させたとしても、食後の高血糖が一部残存し、HbA1cが目標値に到達していない「かくれ高血糖」の患者が一定数存在する。

経口血糖降下薬でコントロール不良な日本人患者を対象に基礎インスリン製剤を使用した試験では、空腹時血糖値130mg/dL未満でHbA1cが7%以上のかくれ高血糖の患者が35.6%だったことが報告されている。

寺内教授は1日1回の投与で空腹時血糖と食後血糖を同時に改善するソリクアについて「基礎インスリンを使うことによって空腹時の値は十分に下がる。でもこれ以上増やしても血糖値が下がりすぎてしまう。にもかかわらず食後の血糖値は高いところが残存している。このジレンマをどう解決したらいいのかということに対するアプローチになる」とした。「低血糖や体重増加のリスクを抑えながら、空腹時の血糖値も食後の血糖値も同時に改善する、そんなことを私たちができるような時代になってきたかもしれない」と話した。

ソリクアは持効型溶解インスリンアナログ製剤インスリングラルギン(一般名、製品名ランタス)とGLP-1受容体作動薬リキシセナチド(一般名、製品名リキスミア)の配合剤。インスリングラルギンが主に空腹時血糖、リキシセナチドが主に食後血糖をコントロールする。日本独自の配合比である1単位:1μgで開発され、3月にインスリン療法が適応となる2型糖尿病の効能・効果で承認を取得。6月8日発売された。

セミナーでは、経口血糖降下薬による治療で十分な血糖コントロールが得られていない日本人2型糖尿病患者(インスリン未治療例)を対象に経口血糖降下薬併用下におけるソリクアの有効性と安全性を検討した国内第3相LixiLan JP-01試験(リキシセナチドとの比較)および国内第3相LixiLan JP-02試験(インスリングラルギンとの比較)について解説した。

LixiLan JP-02試験では主要評価項目のベースラインから投与後26週時までのHbA1cの変化量において、インスリングラルギン群に対するソリクア群の優越性が示された。安全性プロファイルはインスリングラルギンおよびリキシセナチドそれぞれの既知の安全性プロファイルを反映しており、新たな安全性シグナルは確認されなかった。

寺内教授は「空腹時血糖もわずかではあるが差が認められるが、それ以上に食後2時間の血糖値が大きくソリクア群で改善していたというのが注目すべき。食後の血糖値をしっかり下げるということが基礎インスリンだけのものより結構違うのだということが重要なメッセージになると思う。その結果がHb1Ac7%未満を達成できた方、6.5%以下を達成できた方の割合の違いに反映されてきている」と語った。

ソリクアの使い方に関しては「今までだと経口血糖降下薬でコントロール不十分な時に私たちはランタスなどのような基礎インスリン製剤で治療介入する、注射薬を始めることが割と多いが、ランタスの代わりにソリクアを使う、これもまた治療の選択肢になるのではないかというのがこの試験の一番大きなメッセージと言えるのではないかと思う」とまとめた。

 

■行政トピックス

1.医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議 6月26日
キードラッグの優先順位付けと国産化巡り意見交換

厚労省医政局は6月26日、抗菌薬を含め、医療用医薬品全体としての安定確保のための方向を決める関係者会議を開いた。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、開催は3月27日の初会合以来3カ月ぶり。この間、同省は日本医学会を通じて各学会に医療上必要不可欠な医薬品(キードラッグ)の選定を要請。また、各構成員に安定確保に関するアンケートを実施。それらの結果を基に意見交換した。次回会合で同省は取りまとめに向けて、たたき台を提示する。

厚労省は、日本医学会に属する136の分科会を対象に、キードラッグをそれぞれ10品目程度選定するよう依頼。6月22日時点で36学会から418品目が寄せられ、最終的には1000品目を超える規模になるという。長島公之構成員(日医常任理事)は「極めて重要な資料だと思う。優先すべきものは何か、どんな対策が必要かということが見えてくるようにワーキンググループをつくってしっかり検討をお願いする」と述べた。

同省が5月22日~6月9日に各構成員に行ったアンケート調査結果では、「安定供給確保医薬品」について(1)供給不足により生命に直結する医薬品(国内生産への移行の検討が必要)(2)供給不足により治療に大きな影響がある医薬品(国内生産への移行が難しければ、在庫量を増やす対応等の検討が必要)(3)供給不安のある医薬品(供給が1社のみ、等)- の優先順位付けをしてはどうかとの提案があった。

また国内生産を巡っては「可能な限り国産化を目指すが、困難な場合は複数の生産拠点を海外に置く」「国内生産への移行が難しければ、在庫量を増やす対応を検討する等、優先順位に応じて対応する」「国産化したとしても、国内の複数個所への分散や、国産+海外体制との組み合わせにしなければ、災害時などに対応できない場合がある」などの課題が挙がった。

蛭田修構成員(日薬連品質委員会委員長)は、キードラッグの原薬等の国内生産に向けて、設備投資に対する国の補助や、製造コストを考慮した薬価設定の必要性を指摘した。

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