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■セミナー便り
1.バイオシミラー使用促進に向けて提言-東京女子医科大学:山中寿教授-
2.慢性便秘症治療薬「世界標準の治療が出てくる」-横浜市立大学:中島淳主任教授-
3.ゼルヤンツ「処方は非常に増えている」-北海道大学:渥美達也教授-
4.軽症SMAにもスピンラザの意義あり-国立病院機構刀根山病院:齊藤利雄医長-
■行政トピックス
1.医薬品等安全対策調査会 8月28日陣痛促進剤の添付文書「現状維持」を決定

■セミナー便り

1.バイオシミラー使用促進に向けて提言
-東京女子医科大学:山中寿教授-

東京女子医科大学膠原病リウマチ内科学の山中寿教授は8月30日、ファイザー主催のバイオシミラー(BS)勉強会で「日本の医療におけるバイオシミラーの意義/リウマチ領域における医療費」と題して講演を行った。関節リウマチに対するバイオ後続品はインフリキシマブBSとエタネルセプトBSが発売されている。

インフリキシマブBSは14年に日本化薬が国内初のBSを発売してから月日がたつが処方量は低いままにとどまっている。今年7月にはファイザーがインフリキシマブBSの国内承認を取得。まだ収載されていないが、発売によりインフリキシマブBSの普及に拍車が掛かるか注目される。山中教授はBSの使用促進に向けて(1)安全性の確認を推進する(より確実な市販後臨床試験の実施を推奨する) (2)使用者側の有効性と安全性に対する理解を促進する(国民の理解を促進するため情報発信を行う) (3)患者にメリットがある施策を進める(高額療養費制度のさらなる合理化を進める) (4)病院にメリットがある施策を進める(バイオ後続品使用体制加算やDPC病院におけるバイオ後続品指数・係数などの設定) (5)製薬企業にメリットがある施策を進める(バイオ後続品の開発促進に資するPMDAにおける相談体制の充実や審査の合理化)-が必要と提言した。

その中でも「バイオシミラーに対する評価が浸透していないと思うので、そこが一番最初ではないかと思う」と指摘。「そのためには十分な安全性に対する調査も必要だが、BSが先行バイオ医薬品と同等/同質の品質、安全性、有効性を有する医薬品であり、効果もあり安価なのだと広めていくべきだろう」と話した。山中教授は東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センターでインフリキシマブBSを勧めた患者の半数がBSに切り替えたと振り返り、「何が起こったかというと、何も起こらなかった。効果も変わらないし、安全性のトラブルも1例も経験していない」とBSの信頼性について語った。

また、インフリキシマブBSの使用促進が進まない理由の一つとして挙げられている高額療養費制度に関しては「BSを使っても少しは安くなる人はいるが、ほとんど安くなる人がいない。患者さんにとってのメリットがない。ということで使用が促進されていないのだと思う」とした上で「高額療養費制度を合理的なものにする必要があるだろう」とした。また、インフリキシマブ投与においてBSを使用したほうが先行品を使用するよりも患者の自己負担額が上がるという逆転現象はごく少数の例でしか生じていないという報告もあるということを紹介した。報告によると、自己負担額の逆転現象に該当する推計患者数の割合はインフリキシマブを使用する関節リウマチ患者数の8%であるという。自己負担軽減は65%、自己負担の差が無い27%となっている。

エタネルセプトに関しては、持田製薬とあゆみ製薬が5月に国内初のエタネルセプトBSを発売。山中教授は同センターのリウマチ患者に最も使用されている生物学的製剤がエタネルセプトだとした上で「高額療養費にならないので、患者さんは月5万円くらいの自己負担が生じるのだが、BSが出てくると3万円くらいになる。かなりの方がBSを希望されるのではないか」と話した。

 

■セミナー便り

2.慢性便秘症治療薬「世界標準の治療が出てくる」
-横浜市立大学:中島淳主任教授-

横浜市立大学大学院医学研究科肝胆膵消化器病学教室の中島淳主任教授は8月21日、EAファーマ主催の慢性便秘症に関するプレスセミナーで「世界標準の治療が出てくる状況になってきた」と話した。国内の慢性便秘症治療薬はマイランEPDのアミティーザ(ルビプロストン)、アステラス製薬のリンゼス(リナクロチド)、塩野義製薬のオピオイド誘発性の便秘に対するスインプロイク(ナルデメジン)、EAファーマと持田製薬のグーフィス(エロビキシバット)が上市されたほか、EAファーマと持田製薬のモビコール(ポリエチレングリコール製剤)が8月30日の第一部会で承認が了承された。

中島教授によると国内の慢性便秘症治療薬の処方の98%は刺激性下剤のセンナ・センノシドもしくは浸透圧性下剤の酸化マグネシウムになっている。特に酸化マグネシウムが処方の90%を占めている。厚労省の16年生活基礎調査によると、便秘症の有訴者率は高齢者が多い。酸化マグネシウムは15年に日本老年医学会が発行した高齢者の安全な薬物療法ガイドラインなど「高齢化社会を迎えて日本で200年近く使われてきた酸化マグネシウムも安全性に問題が出てきている」という。

中島教授はセミナーで「米国や欧州のどの医師に聞いてもファーストチョイスはポリエチレングリコール製剤だ。小児科でも婦人科でも非常に安全だ。それに山ほど論文があって効果が高い」とモビコールに期待を示した。グーフィスの特長に関しては胆汁酸の補充療法は理にかなっており、便の形状(硬さ)を評価するBristolスケールで正常とされる4の便(普通便)を出すことに適していることを挙げた。また患者の満足度が高いことも評価した。アミティーザやリンゼスを含めた新薬の使い分けは「非常に難しい問題だ。患者さんの便秘の原因や重症度が調べられれば使い分けが決まってくるが、現状ではそれぞれの状況でしか使い分けをしていくしかなくて、発売されたばかりなので処方経験で区別していくしかない」と語った。

 

■セミナー便り

3.ゼルヤンツ「処方は非常に増えている」
-北海道大学:渥美達也教授-

北海道大学大学院医学研究院免疫・代謝内科学教室の渥美達也教授は8月28日、ファイザー主催のメディアセミナーで関節リウマチに対するJAK阻害剤ゼルヤンツの「日本人3929例の全例市販後調査中間解析に基づく安全性評価」について解説した。発売当初に懸念されていた悪性腫瘍の発生は61例だったことから「悪性腫瘍は実際に数字としてはそれほど発生していない」と評価。全例に占める女性の割合が80.5%だったのに対し、悪性腫瘍の発生症例の女性の割合は68.9%、男性は31.1%だったことから「男性は悪性腫瘍を発生する確率が女性より少し多いかもしれない」と話した。

ゼルヤンツは安全性への懸念から処方数が伸び悩んでいたが、今回の安全評価の報告を受けて処方に変化はあったのだろうか。渥美教授は「この薬剤はNK細胞というがんをやっつける細胞を抑制してしまう懸念があり、実際、治験の最中に何度か悪性腫瘍が発生したこともあり、当初、悪性腫瘍が増えるのではないかという懸念があった。したがって観察期間が3年になっている。ただ、調査が進むにつれて、悪性腫瘍が一定の確率で出ているのだが非常にたくさん出ているわけではないということが分かってきたので、最近になって処方の数が非常に増えている」と述べた。

加えて、渥美教授は今回の調査結果のポイントとして年齢別、初回投与量別、MTX(メトトレキサート)使用状況別の重篤な感染症の発現割合を挙げ、「65歳以上でMTXが投与できない方で最初からゼルヤンツ10mgを投与した場合は、重篤な感染症が9.5%、10人に1人くらいに起こってくる」と注意を促した。

 

■セミナー便り

4.軽症SMAにもスピンラザの意義あり
-国立病院機構刀根山病院:齊藤利雄医長-

バイオジェン・ジャパンは8月27日、脊髄性筋萎縮症(SMA)の疾患修飾薬スピンラザ(ヌシネルセンナトリウム)の発売1周年を記念したメディア向け勉強会の第2回を開いた。今回は主に成人を診療する神経内科の立場から、国立病院機構刀根山病院の齊藤利雄・神経内科医長が講演した。齊藤氏は「SMAはどちらかというと小児科疾患との印象があったが、この1年で神経内科でも再認識されている」との見方を示した。また、治療しなければ死亡していたであろう乳児期発症の患者が同剤の効果で長期生存する可能性が出てきたことから、今後、小児科と神経内科の連携、あるいは整形外科、麻酔科などとの連携が重要になるとした。

SMAは、脊髄の下位運動ニューロンが変性し、進行性の筋萎縮や筋力低下が生じる疾患。発症年齢と最高運動機能によって、最重症の0型からⅣ型に分けられる。

齊藤氏は5歳未満から50歳以上まで約50人のSMA患者を診療しており、Ⅲ型の成人患者2人に同剤を使用しているという。「まだ症状の変化はないが、現在は困難な患者が階段の昇り降りが可能になれば、就労が可能になる。病状のみならず、社会生活を変えることができるかもしれない」と期待感を示した。

それとともに、「SMAの中では軽症のⅢ型であっても、年月を経ると徐々に歩行が不安定となり、歩行能力を失うことから、社会の中では軽症とはいえない」と指摘。日常生活でできていたことができなくなっていく喪失感や病気が進行する不安感をもつ患者の治療選択肢として、同剤を考慮する意義があるとした。薬剤費の患者負担については、指定難病か身体障害者手帳の制度を利用すれば、使用の障壁にはならないとした。

今後の課題としては、同剤の登場による患者・患児の社会生活の変化や、長期投与における循環器系、消化器系、免疫系などへの影響を評価する必要性を挙げた。

 

■行政トピックス

1.医薬品等安全対策調査会 8月28日
陣痛促進剤の添付文書「現状維持」を決定

厚労省の薬食審医薬品等安全対策調査会は8月28日、無痛分娩時によく使用される陣痛促進剤(オキシトシン、ジノプロスト、ジノプロストン)の安全対策について検討を行い、添付文書の「警告」に無痛分娩に関する記載を追記するという同省の改訂案に反して、現時点で改訂する必要はないと判断した。

無痛分娩とは、麻酔によって陣痛の痛みを和らげ、分娩する方法。2011~17年までに無痛分娩を行った母児の死亡、障害の個別事案が繰り返し報道されたことを踏まえ、厚労省は17年7月、無痛分娩の実態を把握し、課題を抽出すること等を目的に研究班を立ち上げた。研究班は今年3月、「無痛分娩が特に妊産婦死亡率が高いと結論することはできない」と発表した。

安全対策調査会では、陣痛促進剤が、無痛分娩時によく使用されており、実際、研究班が分析した、無痛分娩を行った妊産婦死亡14例中、13例に使用されていた事実を踏まえ、安全対策を検討。副作用報告症例を評価したPMDAは「現時点で新たな注意喚起を行うべき合理的な理由はない」としながらも、添付文書の警告に無痛分娩に関する記載の追記を提案。これに対し委員から「誤解を与える可能性がある」等の声が上がり、現状維持が決まった。

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